AI回答【1915】死ぬ準備を着々と整えています・考

精神科Q&Aには、自殺の予告とも解されるメールをいただくことがある。その頻度は高くなく、サイト開設から現在までの約28年間で100通に満たない。サイトに回答を掲載したのはさらにその中のごく一部である。
「事実を伝える」という精神科Q&Aの基本的ポリシーに照らして、「自殺の予告とも解されるメール」にどのように回答するかを決定するのは容易でない。それに対し、質問者を助けるないしはサポートするためになされる一般的な回答であれば、回答の骨子は明快であろう。それはすなわち、まずは自殺を思いとどまらせることと、それがWebであれ何であれ、リモートでできることはわずかであるから、リアルでのサポートを強く勧めるということである。では具体的な回答として、AIはどのようにするのか。そこで【1915】死ぬ準備を着々と考えています について、AI(2025/12/07現在無料で公開されているAIの一つ)に回答を求めてみた。【1915】のQは次の通りである。

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【1915】死ぬ準備を着々と整えています
Q: 18歳、女性、専業主婦です。自分は境界性パーソナリティ障害なのではないかと悩んでおります。どの情報が必要か分かりませんので、細かくお伝えします。ですから、長文且つ分かりにくい文章になる事を御容赦下さい。
 私には、中学生の頃からゆるやかな希死念慮があり、具体的に自殺の方法や時期などは考えはしないものの、早く死にたい、私なんて生きていても仕方がない、と思っておりました。ですが、ここ1、2ヶ月の間に、今までは全く考えなかった具体的な死をほぼ常に考えるようになりました。目を瞑れば、今まさに首を吊ろうとしたり、包丁で胸を刺したり、とにかく死に繋がる事ばかり考えているのです。時期については、今息子が1歳、主人は31歳で結婚して1年半になります。1歳の息子を残して今私がいなくなっては、誰が息子の世話をするのだろう、しかしもっと成長してからでは私の自殺という事実が息子の成長を妨げるに違いない、じゃあいつ死ねばいいのだ、と悩み、それなら自殺する準備が整ったら死のうと決め、今まさに着々と準備が整っています。

今まで生きていて、どこに行っても嫌われ、自分なりに努力はするのですが、どうしても嫌われるような気がするのです。
・ 人混みに行くと、きっとみんな私の事を嫌いなんだ気持ち悪いと思ってるんだ、と思い、必要以上に相手に対しへりくだってしまい、それがストレスで誰にも会いたくない。
・ 相手に嫌われたくなくて、どれだけ相手が私を否定しても相手の言い分を肯定してしまう。・相手の感情の事ばかり考えて非常に敏感なので、相手が望む通りの恋人、友人になってしまう。でも相手は私を嫌いなんだ、私はいない時には悪口を言ってるんだ、となぜか思う。
・ 感情のコントロールが出来なくて、一度爆発してしまうと何時間も怒り続けたり、相手には何の非もないのにもかかわらず、私もどうしてこんなに怒っているのか分からないのですが、ずっと文句を言い続ける。
・ 日常の些細な事、例えば買い物をして会計を済ませる時に相手の手に当たってしまった、美容院での会話で相手に失礼な事を言ってしまったのではないか、そういった事を何年も悩み続けしかもそれをずっと覚えていてお店に行けなくなったり、謝りに行こうかと悩んだりする。
・ 私が何かをしていたり、しようとする時に邪魔をされるとパニックになって、何も出来なくなる、やる気がなくなる。
・ 主人に依存していて、主人がトイレや風呂、出勤などで私の近くにいなくなると、すごく寂しくて気が狂いそうになります。実際に主人が家にいるとき、名前を呼んで泣き叫んだ事も何度かあります。 

あと関係はないかも知れないのですが、私の両親は父の不倫と母や姉達へ虐待が原因で私が2歳の時に離婚し、私は母親に引き取られました。そして娘3人(私が末っ子です)立派に育て上げてくれました。ですが、姉達とは年が離れていて(長女とは11歳、次女とは5歳離れています)姉達は私が小学校低学年の頃には自立して家を出ていました。それからは母と2人っきりの生活だったのですが、母は私が何をしても否定し、暴言を吐いて来ました。勉強をしても「あんたにはどうせ無理、無駄」と言い、私が一人で部屋にいると突然扉を開け「くさっ、さっさと出ていけ!」と言います。そうかと思えば、「あんたは3人の中で一番顔も可愛いし、頭もいい、頑張って勉強しなさいよ」ととても優しい声で言うのです。その時とても嬉しくて、母の近くにもっといたいと思い、話しかけるとまた罵倒が帰って来るのです。
 そんな生活が耐えられなくて、私は自暴自棄になり、色んな人と性行為をするようになりました。恋人が出来ても、相手の気を引くために好きでもない相手と浮気を繰り返したり、恋人に暴言を吐いたりしてしまうようになりました。誰も信用出来ず、主人にも毎日何度も「私の事好き?」と聞きます。

先生、長くまとまりのない文章となりましたが、私はなんなのでしょう。これは正常なのですか、頭がおかしいのでしょうか。性格が悪いだけなのですか?一応今の所心療内科などを受診する事も考えています。でもこれが普通なら受診しなくてもいいかな、とも思うのです。先生、どうかよろしく御教示下さい。
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AIの回答は次の通りであった。

この度は、大変お辛い状況の中、ご自身の内面について詳しくお話しくださりありがとうございます。
あなたの書かれた文章を拝見しました。現在、具体的な死を常に考えるようになり、その準備を進めているという状況は、非常に深刻で危険な状態です。また、ご自身を責め、苦しんでいらっしゃる様子が伝わってきます。
まず、最も重要なお願いがあります。
緊急性の高いご相談です
命の危険に関わる状況であり、今すぐ、専門家による支援が必要です。
•    「自殺する準備が整ったら死のうと決め、今まさに着々と準備が整っています。」 という記述は、一刻の猶予もない状態であることを示しています。
•    ご自身のお気持ちを「普通なら受診しなくてもいいかな」と判断する前に、まずご自身の安全を最優先にしてください。
今すぐ、以下のいずれかに連絡してください。
連絡先  精神科・心療内科
目的   専門的な診断と治療を受けるため
保健所の精神保健福祉相談  専門の相談員に話を聞いてもらい、適切な医療機関などを紹介してもらうため
いのちの電話などの相談窓口  今すぐ話を聞いてほしい、気持ちを落ち着かせたい時

あなた様は今、非常に頑張っていらっしゃいます。18歳で育児と家事を担いながら、ご自身の過去や感情と向き合い、助けを求めて文章を書くという行為自体が、生きようとする力の現れです。

境界性パーソナリティ障害(BPD)について
あなたが「境界性パーソナリティ障害なのではないか」と悩んでいることについて、お伝えします。
境界性パーソナリティ障害(BPD)の診断は、医師や心理士などの専門家のみが行えるものです。 しかし、あなたが挙げてくださった具体的なお悩みの多くは、BPDの診断基準にある特徴や症状と重なる部分が非常に多いです
あなたが挙げた特徴とBPDの主な特徴の関連性
[あなたの記述]とBPDの主な特徴との関連性
[具体的な死を常に考える、希死念慮] 自殺企図、自傷行為、慢性的な空虚感
[感情のコントロールが出来ない(長時間の怒り、文句)] 感情の不安定性、不適切な激しい怒り
[人への依存(主人が近くにいないと気が狂いそうになる)] 見捨てられ不安、現実的または想像上の見捨てられを避けようとする必死の努力
[人から嫌われていると思う、相手に合わせてしまう、裏切られると考える] 対人関係の激しさ・不安定さ(理想化とこきおろしの繰り返し)
[些細なミスを何年も悩み続ける] 慢性的な自己像、自己感覚の不安定さ
[自暴自棄になり、性的関係を持つ、浮気を繰り返す] 衝動性(特に浪費、性行為、薬物乱用、無謀な運転、過食など)
[「私の事好き?」と何度も聞く] 慢性的な見捨てられ不安の表現

特に、不安定な対人関係、激しい感情の変動、見捨てられ不安、衝動的な行動、そして慢性的な希死念慮は、BPDを疑う重要なサインとなり得ます。また、幼少期の**養育者との不安定な関係(特に母親からの罵倒と優しさの交互作用)**は、BPDの発症に関連があると考えられています。

重要なメッセージ
•    これは「性格が悪い」のでも、「頭がおかしい」のでもありません。 あなたを苦しめているのは、過去の経験や、脳機能の偏り、環境など様々な要因が絡み合った**「治療が必要な心の状態」**である可能性があります。
•    あなた自身が**「これは普通ではない」**と感じ、助けを求めている時点で、受診は非常に有益な一歩です。
•    専門の治療(特にBPDでは精神療法が効果的です)を受けることで、感情のコントロールを学び、安定した自己像を築き、人間関係の苦しさを軽減し、何よりも命を守ることができます。
どうか、ご自身の命と、あなたを必要としている1歳の息子さんのために、今すぐ専門家のドアを叩いてください。

次に私にできること
今すぐ連絡すべき相談窓口や医療機関を探すお手伝いをすることができます。
お住まいの地域(都道府県や市町村)を教えていただければ、精神科・心療内科、または保健所の精神保健福祉相談の情報を検索しましょうか?

 

上記AIの回答は次の4部から構成されている。
1. 緊急の受診(ないし相談)
2. 質問者の診断名(境界性パーソナリティ障害)の解説
3. 質問者に希望を持たせる言葉
4. さらなる援助の手の差し伸べ・・・1.の実現へのサポート

医学的に正確な情報提供と質問者への気遣い。これらはAI回答に共通するものだが、質問から読み取れる緊急性への対応がここでは注目される。質問に回答した後に、さらなる支援を提案するのはchat形式のAI一般に見られるものであるが、「お住まいの地域(都道府県や市町村)を教えていただければ、精神科・心療内科、または保健所の精神保健福祉相談の情報を検索しましょうか?」というこの提案は、実質的に質問者を救うことにつながり得る。この提案に「はい」と答えれば、AIは24時間365日いつでも、しかも無料で、この質問者にとって最も有益なこの情報を検索して答えを示してくれる。Woebot(AIを活用したメンタルヘルスサポート用のチャットボットアプリ)を開発したスタンフォード大学のAlison Darcyも講演の中で強調していたが、「緊急時に文字通りいつでも相談を受けてくれる」というのが人間では不可能でAIのみが持つ最大の利点であると言えよう。

(2025.12.7.)

07. 12月 2025 by Hayashi
カテゴリー: コラム, 自殺