【4985】マンションの上の階の騒音

Q: 30代女性です。
ここ1ヶ月ほど、住んでいるマンションの上の階から聞こえるドスドスという足音に悩まされています。
同居している夫も聞こえると言っているので、音がしているのは事実です。
最近ではドスドスという音が聞こえるたびに動悸がして呼吸が荒くなってしまうようになり、怒りを感じています。
また、花火の音や、自分の夫の足音、テレビから聞こえる重低音も「上の階からの音では?」とまず思ってしまい、時に怒りを感じて棒状のもので天井を強く突いたりしてしまいます。
管理会社は「騒音は当事者間で解決してください」というスタンスですし、音を出しているのが上階の部屋かどうかも確証が無いため具体的な行動を取れずに我慢している状況です。
数年前、おそらく別の住人が上階に住んでいる時にも同じことがあり、その時は我慢できず、「スリッパを履くかカーペットを敷いてください」という文書をポストに投函しましたが、夫が平和主義者のため良い顔をしないと思います。

話があちこち飛んでしまいましたが、上階の足音で動悸がするのは病的でしょうか?
抗不安剤などは効果がありますか?
元々、自分が音に過敏なところはあります。

 

林:
ここ1ヶ月ほど、住んでいるマンションの上の階から聞こえるドスドスという足音に悩まされています。 

このような場合、第一に確認すべきことは、その「上の階から聞こえるドスドスという足音」が事実かどうかということです。こうした「音」は、統合失調症やその周辺の精神障害の典型的な幻聴として現れるものですので、こうした「音」に悩まされているというケースでは、それが幻聴である可能性が十分にあります。
但しその一方で、もちろん事実そうした「音」がしているという可能性もあります。

これを判断するにあたって、

同居している夫も聞こえると言っているので、音がしているのは事実です。 

本人からのこのような説明から、「音」が事実であると直ちに判断することはできません。この種の幻聴があるケースでは非常に多くの場合、本人は、その「音」が事実であるという「証拠」があると主張するからです。「同居している夫も聞こえると言っている」は、そうした「証拠」の典型的なものです。本人からこのような説明があった場合に、詳しくお聞きすると、本人がその「音」にとても苦しんでいると何回も訴えるので、ご家族は、完全に否定することはせず、実際は聞こえていないのに「たまには少し聞こえるね」と本人に答えていることがわかることがしばしばあります。あるいは、実際にわずかには聞こえていることもあるでしょう。上の階に人がいれば、全く音がしないことはあり得ないからです。
したがってこの【4985】のケースでも、大前提として、その「音」が事実かどうかを確認することが必要で、その確認なしには適切な対応法を選択することはできないということになります。

時に怒りを感じて棒状のもので天井を強く突いたりしてしまいます。 

これは上の階からの幻聴を体験する人に見られる典型的な行為です。(但しもちろんだからと言って幻聴であると断言することはできません。「上の階からの幻聴を体験する人に見られる典型的な行為です」というのは一般的な事実の指摘です)

数年前、おそらく別の住人が上階に住んでいる時にも同じことがあり、

これについても、もちろんそれが事実であった可能性もありますが、質問者に幻聴が断続的に続いているという可能性もあるでしょう。

上階の足音で動悸がするのは病的でしょうか? 

いま質問者に起きていることは、「上階の足音で動悸がする」という可能性と、「上階の足音」が実際には存在しない幻聴である可能性の両方があると思います。

抗不安剤などは効果がありますか? 

薬による対処法をご自分で選択する前に、精神科を受診して状況を正確に医師に報告することをお勧めします。その際にはご家族にも同行していただき、ご家族からみて、その「音」が事実かどうか、事実だとしたらどの程度の音なのか、などについてを医師に報告していただいてください。本人の主観的体験とご家族からみた客観的事実を照合したうえで初めて、医師は正しい判断と方針を立てることができるでしょう。

(2025.9.5.)

05. 9月 2025 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: |