AI回答【4985】マンションの上の階の騒音・考

精神科Q&A【4985】のQに対する回答を、AI(2025/09/15現在無料で公開されているAIの一つ)に求めてみた。
【4985】のQは次の通りである:

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【4985】マンションの上の階の騒音
Q: 30代女性です。 
ここ1ヶ月ほど、住んでいるマンションの上の階から聞こえるドスドスという足音に悩まされています。 
同居している夫も聞こえると言っているので、音がしているのは事実です。 
最近ではドスドスという音が聞こえるたびに動悸がして呼吸が荒くなってしまうようになり、怒りを感じています。 
また、花火の音や、自分の夫の足音、テレビから聞こえる重低音も「上の階からの音では?」とまず思ってしまい、時に怒りを感じて棒状のもので天井を強く突いたりしてしまいます。 
管理会社は「騒音は当事者間で解決してください」というスタンスですし、音を出しているのが上階の部屋かどうかも確証が無いため具体的な行動を取れずに我慢している状況です。 
数年前、おそらく別の住人が上階に住んでいる時にも同じことがあり、その時は我慢できず、「スリッパを履くかカーペットを敷いてください」という文書をポストに投函しましたが、夫が平和主義者のため良い顔をしないと思います。 

話があちこち飛んでしまいましたが、上階の足音で動悸がするのは病的でしょうか? 
抗不安剤などは効果がありますか? 
元々、自分が音に過敏なところはあります。 
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この問いに対し、そのAIは次のように回答した:

30代の女性ですね。上の階からの足音でつらい思いをされているとのこと、心中お察しします。
まず、足音によって動悸や息切れが起こり、強い怒りを感じるようになったり、他の音にも過敏に反応したりするのは、決して「病気」とは言い切れませんが、心身に大きなストレスがかかっている状態であると考えられます。
ご自身の体験を話してくださりありがとうございます。同じように騒音に悩まされる方は多く、決して特別なことではありません。騒音ストレスが限界に達すると、身体は心拍数や血圧を上げて警戒態勢に入り、動悸や息切れといった症状として現れることがあります。また、怒りや不安が強くなり、集中力の低下や睡眠障害につながることもあります。このような状態が続くと、日常生活にも支障をきたしかねません。

ご相談内容への回答
1. 動悸は病的なものか
先述の通り、騒音ストレスによって動悸や息切れが起こることは珍しくなく、病的なものとは断定できません。しかし、この状態が続いて心身に不調をきたしているのは事実です。
不安や怒り、過敏な反応が強くなっているのは、ご自身が騒音に対して非常にストレスを感じているというサインです。このサインを無視せずに、専門家へ相談することを検討してみてください。
2. 抗不安薬は効果があるか
抗不安薬は、不安や緊張を和らげる効果があるため、症状を軽減するのに役立つ可能性があります。しかし、根本的な解決にはなりません。また、医師の診断なしに服用することはできません。
3. 今後どうすれば良いか
専門家への相談
ご自身の心身の不調を改善するためにも、一度心療内科や精神科を受診されることをお勧めします。騒音ストレスによる症状であることを伝えれば、適切な診断や治療法を提案してもらえます。
医師は、現在の症状や悩みを丁寧に聞き取り、必要に応じて薬物療法やカウンセリングなどの治療を検討してくれます。特に、動悸や息切れといった身体症状が出ている場合は、専門家のサポートを得ることで、症状が改善される可能性があります。

ご自身の気持ちと向き合う
騒音問題でつらい思いをしている自分を責める必要はありません。まずはご自身の心身の状態を一番に考え、無理をしないことが大切です。
旦那様が平和主義とのことですが、ご自身がこれだけつらい思いをしていることを、今一度話し合ってみてはいかがでしょうか。味方になってくれる人がいることは、つらい状況を乗り越える上で大きな力になります。

騒音問題は、解決が難しく、ご自身の力だけで何とかしようとすると、さらにストレスが溜まってしまうことがあります。ご自身の心を守るためにも、ぜひ専門家の助けを借りることを検討してみてください。
この件について、他に何か知りたいことはありますか?

林の【4985】の回答と比較してみると、まず言えることは、AIの回答は、口調・内容ともに、非常に丁寧だということである。
AIの回答内容について具体的にみていくことにする:

30代の女性ですね。上の階からの足音でつらい思いをされているとのこと、心中お察しします。

最初に質問者をねぎらう。人間関係をスムースに進めるための基本が守られている。

まず、足音によって動悸や息切れが起こり、強い怒りを感じるようになったり、他の音にも過敏に反応したりするのは、決して「病気」とは言い切れませんが、心身に大きなストレスがかかっている状態であると考えられます。

状態の総論的なまとめが適切になされている。異論が発生する余地がないまとめ方である。

ご自身の体験を話してくださりありがとうございます。同じように騒音に悩まされる方は多く、決して特別なことではありません。騒音ストレスが限界に達すると、身体は心拍数や血圧を上げて警戒態勢に入り、動悸や息切れといった症状として現れることがあります。また、怒りや不安が強くなり、集中力の低下や睡眠障害につながることもあります。このような状態が続くと、日常生活にも支障をきたしかねません。

医学的に正確な説明とともに、質問者の状態を心配し、また、このような事態は決して特別なことではないと、質問者に過度な不安を与えないよう気遣っている。実に模範的な書き出しであると言える。

ご相談内容への回答
1. 動悸は病的なものか
先述の通り、騒音ストレスによって動悸や息切れが起こることは珍しくなく、病的なものとは断定できません。しかし、この状態が続いて心身に不調をきたしているのは事実です。
不安や怒り、過敏な反応が強くなっているのは、ご自身が騒音に対して非常にストレスを感じているというサインです。このサインを無視せずに、専門家へ相談することを検討してみてください。

的確な回答である。但し「専門家へ相談することを検討してみてください」は、常に的確な回答とも言えるものなので、「的確だが回答としての意義はあまり大きくない」と言えるかもしれない。

2. 抗不安薬は効果があるか
抗不安薬は、不安や緊張を和らげる効果があるため、症状を軽減するのに役立つ可能性があります。しかし、根本的な解決にはなりません。また、医師の診断なしに服用することはできません。

医学的に正しい回答である。

3. 今後どうすれば良いか
専門家への相談
ご自身の心身の不調を改善するためにも、一度心療内科や精神科を受診されることをお勧めします。騒音ストレスによる症状であることを伝えれば、適切な診断や治療法を提案してもらえます。

これも的確な回答であるが、前述の通り、専門家への相談は、常に的確な回答とも言えるものなので、「的確だが回答としての意義はあまり大きくない」と言えるかもしれない。
それはそうと、最初に「専門家に相談」と総論的に答え、次に「心療内科や精神科を受診」と、より具体的に答えていることは、深い気遣いの表れであると見ることも可能であろう。

医師は、現在の症状や悩みを丁寧に聞き取り、必要に応じて薬物療法やカウンセリングなどの治療を検討してくれます。特に、動悸や息切れといった身体症状が出ている場合は、専門家のサポートを得ることで、症状が改善される可能性があります。

受診した場合に期待できることを的確に示し、質問者に明るい希望を持たせている。

ご自身の気持ちと向き合う
騒音問題でつらい思いをしている自分を責める必要はありません。まずはご自身の心身の状態を一番に考え、無理をしないことが大切です。

いわゆる「本人によりそう」対応である。このような言葉をかけられた本人は力づけられるであろう。他方、このような対応は「いかなる時でも正しい対応」であるから、実質的な意義については何とも言えない。

旦那様が平和主義とのことですが、ご自身がこれだけつらい思いをしていることを、今一度話し合ってみてはいかがでしょうか。味方になってくれる人がいることは、つらい状況を乗り越える上で大きな力になります。

「夫が平和主義」は、質問文の文脈では、質問者にとって、騒音に対して夫が適切な対応をしてくれないというネガティブなニュアンスで記されていたものであるが、AIはそのネガティブをむしろポジティブに転ずることで、質問者に希望を持たせている。

騒音問題は、解決が難しく、ご自身の力だけで何とかしようとすると、さらにストレスが溜まってしまうことがあります。ご自身の心を守るためにも、ぜひ専門家の助けを借りることを検討してみてください。
この件について、他に何か知りたいことはありますか?

結びは質問者の思いに十分よりそうとともに、「専門家の助けを借りる」ことをあらためて勧めている。

林の【4985】の回答の全文は次の通りである。AIの回答との顕著な違いは冒頭に現れている。すなわち林は、質問者が苦悩しているところの「上の階から聞こえるドスドスという足音」が、事実か否かの確認がまず必要であることを強調している。この点は回答全体を通して繰り返し述べられている。

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林:
ここ1ヶ月ほど、住んでいるマンションの上の階から聞こえるドスドスという足音に悩まされています。 

このような場合、第一に確認すべきことは、その「上の階から聞こえるドスドスという足音」が事実かどうかということです。こうした「音」は、統合失調症やその周辺の精神障害の典型的な幻聴として現れるものですので、こうした「音」に悩まされているというケースでは、それが幻聴である可能性が十分にあります。
但しその一方で、もちろん事実そうした「音」がしているという可能性もあります。

これを判断するにあたって、

同居している夫も聞こえると言っているので、音がしているのは事実です。 

本人からのこのような説明から、「音」が事実であると直ちに判断することはできません。この種の幻聴があるケースでは非常に多くの場合、本人は、その「音」が事実であるという「証拠」があると主張するからです。「同居している夫も聞こえると言っている」は、そうした「証拠」の典型的なものです。本人からこのような説明があった場合に、詳しくお聞きすると、本人がその「音」にとても苦しんでいると何回も訴えるので、ご家族は、完全に否定することはせず、実際は聞こえていないのに「たまには少し聞こえるね」と本人に答えていることがわかることがしばしばあります。あるいは、実際にわずかには聞こえていることもあるでしょう。上の階に人がいれば、全く音がしないことはあり得ないからです。
したがってこの【4985】のケースでも、大前提として、その「音」が事実かどうかを確認することが必要で、その確認なしには適切な対応法を選択することはできないということになります。

時に怒りを感じて棒状のもので天井を強く突いたりしてしまいます。 

これは上の階からの幻聴を体験する人に見られる典型的な行為です。(但しもちろんだからと言って幻聴であると断言することはできません。「上の階からの幻聴を体験する人に見られる典型的な行為です」というのは一般的な事実の指摘です)

数年前、おそらく別の住人が上階に住んでいる時にも同じことがあり、

これについても、もちろんそれが事実であった可能性もありますが、質問者に幻聴が断続的に続いているという可能性もあるでしょう。

上階の足音で動悸がするのは病的でしょうか? 

いま質問者に起きていることは、「上階の足音で動悸がする」という可能性と、「上階の足音」が実際には存在しない幻聴である可能性の両方があると思います。

抗不安剤などは効果がありますか? 

薬による対処法をご自分で選択する前に、精神科を受診して状況を正確に医師に報告することをお勧めします。その際にはご家族にも同行していただき、ご家族からみて、その「音」が事実かどうか、事実だとしたらどの程度の音なのか、などについてを医師に報告していただいてください。本人の主観的体験とご家族からみた客観的事実を照合したうえで初めて、医師は正しい判断と方針を立てることができるでしょう。
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林は結論としては受診を勧めている。結論だけを見れば、AIと林の回答は同じである。
では質問者本人にとってどちらの回答が望ましいか。「受診することが質問者にとって最善」であるとすれば、受診する気になれる回答の方が望ましいということになろう。この観点からすれば、AIの回答の方がはるかに優れている。なぜなら林の回答は質問者が苦悩している「階上からの音」が事実ではない可能性を強調しており、質問者から「林は私の苦しみがわかっていない」と憤慨されることが十分に考えられるからである。それに対しAIは質問者の苦悩を十分に受け止め共感したうえで受診を勧めているから、質問者はこの人の(人ではないが)アドバイスならその通りにしてみようという気になる可能性が相対的に高い。
したがってこの【4985】の回答は、質問者へのアドバイスとしては林よりAIの方が優れていると言えよう。
但し、精神科Q&Aは質問者本人のための回答ではない。精神科Q&Aのページの冒頭にこう記してある通りである:

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読者からの質問にお答えします。すべて事実を回答します。
したがって、これは医療相談ではありません。このコーナーに質問される方は、必ずこちら(2010.12.5.更新)をお読みください。

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(2025.9.15.)

15. 9月 2025 by Hayashi
カテゴリー: コラム, 統合失調症 タグ: , |