【4928】突然父から謝罪しろと言われた
Q: 私は20代女性です。50代半ばの父のことで林先生のご意見を伺わせてください。
私と父は長年不仲でしたが、突然「話し合いがしたい」と呼び出され、会うなりこれまでの私の行いを謝罪しろと強く迫られました。
その時の父の様子が異様だったため、何かの病気や障害なのではないかと考えています。
まず、父の主張は以下の二つです。
①思春期だった頃の私の態度に深く傷ついた
②私が今よい暮らしを送れているのは自分のお陰なのに、感謝しないのは非常識だ
父はこれらをまくしたて、いかに私が異常者で、いかに父が傷ついたかを一方的に主張しました。
しかし、父の主張は私の認識と全く異なっています。
まず①については、確かに思春期のころ父を避けていましたが、それは父が延々と自慢話をするか、私に対して否定的な発言をするかのどちらかで、やめてほしいと伝えると常識がない、頭がおかしい等と言って非難され、関わるのが苦痛だったためです。
また、②についても父からのサポートは全くなく、むしろ私の目標や努力をバカにしていましたし、金銭的にも母や親戚の援助が大きいと考えています。
反論としてこれらを伝えたところ、父は突如両手をテーブルに叩きつけて背中を伸ばし「全く、記憶に、ございませんっ!」と芝居がかった口調で言い切りました。してやったりというような、勝ち誇った笑みを浮かべていました。
そして、それ以降私が何か発言しようとするたび「お前の、言うことは、完っ全に、意味不明です!」と大声で遮られました。
父は最初は怒り狂っていましたが、途中からは非常に興奮し、勝利を確信しているような様子で、1時間以上執拗に私の落ち度を責め続けました。
特に①に関しては10年以上前にも関わらず、つい先週起きたことのような鮮度で怒っているように見えました。
そして最後、父に自分のどこが悪かったのか言ってみろと言われ、「当時10代前半の私と、当時40代のあなたを比べた時、私が100%悪いということですか」 と皮肉を込めて言うと、父は目を見開き、一言一言力を込めて、「はい、その通りです」と言い切りました。
自分でも情けないことに、生まれて初めて過呼吸を起こしました。
先生に判断していただくにあたってこれまでの父の人物像も重要かと思いますが、先述の通りあまり関わらないようにしていたため、申し訳ないことにあまり多く記載することは出来ません。
ただ「コミュニケーションに問題はあったが、ここまでおかしくはなかった」 というのは確実に言えることです。過去に父と衝突した時も、一方的に責められてはいましたが、今回のような勝ち誇ったような態度や芝居がかった言い回しをすることは一度もありませんでした。
私の知る範囲で、父の特徴を箇条書きで記載します。
・相手の立場や考えを想像するのが苦手、相手が嫌がっていても自分のことを一方的に話し続ける
・興味関心の範囲が非常に狭く、一般常識の必要性を認識していない
・衝動的に高価な買い物や、周りへの影響が大きい決断をする
・近所の人や店員など、関係の薄い相手に対しては極端に腰が低い
・職を転々としており、友人も非常に少ない
また、祖父母や母から聞いた情報は以下の通りです。
・そこそこ勉強はしていたのに非常に学力が低かった(通常の手段では入学できる高校が無かったそうです。一方で、家族に対しては自分は誰よりも博学だという態度を取ります)
・幼少期から友達が少ない
・30代か40代の頃、数年間うつになっていたことがある
父のこの態度は何らかの病気によるものなのでしょうか。
それとも、元々何かの障害があるのでしょうか。
それらは、医療機関にかかることで改善させることは出来るのでしょうか。
長くなって恐縮ですが、林先生の意見を伺えますと幸いです。
林: お父様はおそらく自閉スペクトラム症(発達障害の一種)であると思われます。「父の特徴」として記されている内容などはその特徴にかなりよく一致していますし、今回の「10年以上前にも関わらず、つい先週起きたことのような鮮度で怒っているように見えました」というエピソードは、自閉スペクトラム症に見られることがあるタイムスリップ現象であると考えることができます。
但し、「コミュニケーションに問題はあったが、ここまでおかしくはなかった」ということですので、元々の自閉スペクトラム症に、何か他の病気が加わったことも考えられます。他の病気とは、たとえば認知症の始まりです。
元々何かの障害があるのでしょうか。
自閉スペクトラム症があることは確かでしょう。
父のこの態度は何らかの病気によるものなのでしょうか。
自閉スペクトラム症だけかもしれませんが、上記の通り、別の病気がそこに加わった可能性もあります。
それらは、医療機関にかかることで改善させることは出来るのでしょうか。
根本的な治療は困難ですが、ある程度までは改善可能だと思います。けれども、受診していただくこと自体が容易でないと予想されます。
(2025.2.5.)