【4926】診断が双極性障害から ASD に変更され友人が動揺しています

Q: 私は20代女性です。友人(29歳女性)についてのご質問になります。友人とは18歳の時に大学で知り合いました。
友人は過去に双極性障害と診断されましたが、最近になって主治医の先生が変わり、双極性障害ではなくASD(自閉スペクトラム症)であると診断されたそうです。
友人としてサポートしていくためにも病気や障害について知っておきたいのですが、本当に双極性障害ではないのか?と少し疑問に思っている部分もありますので、教えていただけると幸いです。

友人から聞いた話です。
・小、中、高とも不登校の時期があった。いじめられたわけではないが、なぜか学校に行けなくなった
・炭酸リチウムを継続的に処方されている(他にも服薬)

次に、大学で出会ってからの友人の経歴です。
・小説や映画の考察に熱中していた。登場人物の心理の考察が巧みで、文章力も高い
・講義やゼミには休まず出席
・知り合いは多いが、遊びの誘いには乗ったり乗らなかったり気まぐれ
・公務員志望だったが面接で全落ち
・大学4年の9月頃に遅めの民間就活を開始、周りが驚くほどエネルギッシュな様子で1ヶ月間ほぼ休みなく説明会や面接をハシゴし内定を得る
・4月に入社した企業で人間関係で悩み、ある日突然起き上がれなくなって1ヶ月程度休職するが、復帰できず数ヶ月で退職
・実家に戻り、1年ほど療養。住んでいる場所が離れたので直接会って聞いたわけではないですが、会社を辞めてしまったことに非常に落ち込み、自傷行為やオーバードーズをしたり、不要な服を大量に買い込んだり、不特定多数の異性と肉体関係持っていたようです(普段の友人はかなり奥手です。この時は自分を蔑ろにすると気が晴れるので繰り返していたそうです)
・家族が精神科を受診させ、過去の不登校歴なども話し、双極性障害2型と診断される
・病気を伏せて別の企業に転職するが、1ヶ月過ぎたあたりから休みがちになり、半年ほどで退職(仕事や人間関係が嫌なわけではないが体が重くて起き上がれなくなるそうです)
・その後も就職→短期間で退職→数ヶ月休むことを繰り返す
・数ヶ月前、主治医が代わり、双極性障害ではなくASDではないかと言われる

最後に、私から見た友人の印象です。

・話し上手で聞き上手。他人の感情を思いやる言葉が多く、一般的にASDと言われる人とはかなり違うように見える
・ただし、グサっと来ることや返答に困ることを平然と言うことがある(皮肉屋なんだと解釈していました)
・深く考えすぎる性格で、些細な言葉や冗談を深刻に捉えて長期間気にしていることがある(最初の会社を人間関係を理由に辞めた時も、明確に嫌な人がいたわけではないが、上司や同僚の何気ない言葉を反芻し続けているうちに苦しくなったそうです)
・猪突猛進なところがあり、一度やり始めると徹底的です。ゼミで難しい課題が出ると0時就寝4時起床で資料を読み漁っていたようです
・極端な完璧主義で、課題を9割完成させているのに「完璧なクオリティではない」という理由で提出しなかったことが何回かあります
・知能、特に学習能力と記憶力はとても高いと思います。一度注意されたことは二度と繰り返しません。コミュニケーション能力も、トライアンドエラーを繰り返して身につけたのかもしれない、とも思います

そして、診断名がASDに変わってからの友人ですが、何年も自分自身を定義していた診断名がなくなり、最初はとても動揺していました。

しかし、これをきっかけに人間の心理や精神に興味が湧いた、本格的に心理学を学びたいと言って、今は大量に書籍を買い込み、大学に入り直すべく猛勉強を始めています。実家を離れて一人暮らしも再開しました。(思い立ったその日に物件の内覧に行き、1件目でいきなり決めたらしいです)

これも病気からの解放感や本来の猪突猛進な性格によるものといえばそんな気もするし、躁状態といえば躁状態な気もします。

双極性障害ではなくASDという診断は正しいのでしょうか?どちらの診断名にしろ、友人として今後も交流を続けていく上でどのようなサポートができるでしょうか。

 

林: 双極性障害とASDの、どちらの可能性もありそうです。このメールの情報のみからはそこまでしか言えません。但し、たとえ詳細な情報があったとしても、どちらであるか確定できないケースはかなりあります。「確定できない」というより、診断する医師の考え方によって、どちらの診断もありうると言ったほうが正確かもしれません。双極2型障害とASDについてはそういうことは少なくありません。双極2型障害にしてもASDにしても、疑いなく確実に診断できるケースももちろんありますが、診断がつくかつかないか曖昧なケース、つまり健常との境界な曖昧なケースがかなりあるものです。特にASDについてはそうで、しばしば医師の説明の中には「ASDの特性がある」という表現が出てくるのですが、この「特性」とは実に曖昧な表現で、性格の範囲なのか障害のレベルなのかははっきりしないのが常です。

双極性障害ではなくASDという診断は正しいのでしょうか?

このご質問については、ひとつは、

・数ヶ月前、主治医が代わり、双極性障害ではなくASDではないかと言われる

その診断経緯をできれば確認することが必要だと思います。これまでの双極性障害という診断を覆すからには相当に慎重な診察が必要なはずですが、仮に短時間の診察で診断が変更されたのであれば、その医師はASDを過剰診断する傾向がある(すなわち、ASDの傾向が少しでもあればASDと診断してしまう)と言えますので、双極性障害という診断の方が正しい可能性が高いと言えます。逆に十分に慎重な診察を経て診断変更されたのであれば、この回答の冒頭の通り、「双極性障害とASDの、どちらの可能性もありそうです。」ということになります。このメールに記されている質問者の印象の内容からもそのように言うことができると思います。

どちらの診断名にしろ、友人として今後も交流を続けていく上でどのようなサポートができるでしょうか。

診断名にはあまりこだわらない交流が適切だと思います。

(2025.2.5.)

05. 2月 2025 by Hayashi
カテゴリー: 発達障害, 精神科Q&A, 躁うつ病 タグ: |