【4907】私は本当に双極性障害なのでしょうか

Q: 私は18歳の頃から精神科に通院しており、適応障害やうつ病などいくつか病名を言われてきました。エビリファイや漢方などを服薬していましたが効果はなく、3年前に転院した現在のかかりつけでは双極性障害との診断を受けました。服薬しているものは後述しておりますがいまのところ、自分がうつ状態ではない期間は何事も悩みがなく過ごせています。

しかし、私は双極性障害ではなく自分の甘えであって病気では無いのではないか?と思うのです。

その理由は2点あります。

1つ目は躁状態と呼ばれるものがないと感じていることです。服薬開始前は会議など人が集まる場でやたらと発言したがり、大きな口を叩いたり自分は仕事が出来ると公言したり、車の通る大通りで道をたち塞いでみたり、金遣いが荒く、また行動には移していませんが性的衝動が高まり不特定多数と関係を持とうとしかけました。こんな感じなのが通常の自分だと感じていました。

それが躁状態なのであれば、確かに服薬前は躁状態があったのでしょう。しかし、自分が思い返す限り中学の頃からそのような時期とうつ状態の期間を繰り返していて、躁状態と思われる期間は後から後悔するような物言いを人前でしたりやたらと目立ちたがりになったりしていました。今は服薬を続けているからかそのようなものを感じないのです。常に普通もしくは多少どんよりした気持ちで、そうでない期間はうつ状態のようなものになるだけで躁状態がないなら双極性障害ではないのではと考えてしまいます。天気が悪い日などはソワソワしたり誰かと話したくて仕方ない衝動性や目立ちたがりのようなのが出そうになりますが抑えられています。では服薬をやめればいいのではというのとうつ状態については思うところがあるので、そこは後述いたします。

2つ目は期間の問題です。双極性障害はよく数ヶ月単位でうつ状態と躁状態を繰り返すと言われていますが私のうつ状態は続いても数週間や10日単位なのです。しかも、何も無くてそうなる時も無くはないですが外的要因など原因が明らかになっていて落ち込むことが多くこれは双極性障害によるうつ状態ではないのではと感じております。ラピットサイクラーというのもあるとは知っていますが割合が少ないと聞いていて、それに自分が当てはまるのか疑問を抱いています。昨年で言うと、服薬していた影響もあるかとは思いますが特に外的要因がなく落ちていた時期が5月・8月・9月で大体2週間ほど 何にも気力がなくなり涙が止まらず食欲がなく吐いたり、起き上がれないなどの症状です。それ以外の期間は外的要因もあったからかそのことでうつ状態になることもありましたが双極性障害からきたうつ状態ではないと認識しています。

このような思いが昨年あり、元々炭酸リチウム2錠・セルトラリン2錠・ミルタザピン2錠飲んでいたのを自己判断で炭酸リチウムをやめ、セルトラリンとミルタザピンを辞めたところイライラと他人への攻撃性が高まってしまい現在は上記の量を服薬しています。

あの時のようにイライラから他者への攻撃性が高まって集中力もなく仕事にならないような日々を過ごしたくないので服薬を続けていますが、本当は私がうつ状態と訴えている症状は大したことがなくていわば若者世代のよく使う「病んだ」といった軽いものを私が医者に重く伝えてそれを真に受けて医者が双極性障害と診断しているからなのではと感じてしまうのです。

実際、服薬の影響もあるかもしれませんが今の私には病識がないのです。なんで精神科に通っているのか分からないし辛くもなんともないのに、ただうつ状態(と自分では思っている)時期に差し掛かると辛くて辛くて仕方ないのでどうにか日々の服薬を続けるために定期受診しているという認識なのです。

ただの自分の甘えなのに、それを自身が可哀想ぶって医者に深刻に伝えているからこのようなことになっているのであれば申し訳ない気持ちでいっぱいなのです。

私は本当に双極性障害なのでしょうか?転院前は本当に双極性障害だったのが現在は治ったからこのように感じるのでしょうか?だとしたら何時まで服薬を続ければ良いのでしょうか?それともただの甘えで精神疾患では無いのか、あったとしても気分変調症なのか 先生のご意見を教えていただけると幸いです。

 

林: あなたは双極性障害だと思います。
質問者がご自身の双極性障害の診断に疑問を持っておられる理由は二つあり、一つは、「躁状態がない」という点で、これについては次のように書かれています。

服薬開始前は会議など人が集まる場でやたらと発言したがり、大きな口を叩いたり自分は仕事が出来ると公言したり、車の通る大通りで道をたち塞いでみたり、金遣いが荒く、また行動には移していませんが性的衝動が高まり不特定多数と関係を持とうとしかけました。こんな感じなのが通常の自分だと感じていました。

これは、双極性障害の方がご自身の躁状態について持つ誤解として非常によくある平凡なものです。つまり、客観的には躁状態であるのに、本人としてはそれが普通だと思っているというものです。この誤解のために双極性障害の治療を受けようとせず、そうしているうちに激しい躁状態になってしまうのは双極性障害の方ではよくあることです。

関連して質問者は次のようにも言っておられます。

しかし、自分が思い返す限り中学の頃からそのような時期とうつ状態の期間を繰り返していて、躁状態と思われる期間は後から後悔するような物言いを人前でしたりやたらと目立ちたがりになったりしていました。

この文章を「しかし」で始められているということは、中学の頃からの上の経過は双極性障害を否定する根拠になると考えておられるのだと思いますが、これはむしろ双極性障害の診断を確定する根拠になる経過です。仮に中学の頃からの「そのような時期」が、普通の人にでもあるくらいの程度の気分の波であったとしても、双極性障害では、当初はそのような時期を繰り返していて、あるときにはっきりした躁状態やうつ状態が見られるようになるというのが一つの典型的な経過です。

二つめの理由として挙げておられる経過については、典型的な双極性障害ではご指摘の通り、躁状態にしてもうつ状態にしてももっと期間が長いものですが、そこまで典型的ではない双極性障害の方もたくさんいらっしゃいます。公式の診断基準上は、最低2週間の期間持続することが必要条件になっていますが、それは実際の臨床とは別の話です。また、典型的な期間とそうでない期間が混合しているというパターンもよくあります。

それに、質問者の気分の波には薬がよく効いていることが読み取れます。それも双極性障害の診断を間接的に支持する根拠になります。

あの時のようにイライラから他者への攻撃性が高まって集中力もなく仕事にならないような日々を過ごしたくないので服薬を続けていますが、本当は私がうつ状態と訴えている症状は大したことがなくていわば若者世代のよく使う「病んだ」といった軽いものを私が医者に重く伝えてそれを真に受けて医者が双極性障害と診断しているからなのではと感じてしまうのです。

違います。あなたの病状は決して「大したことがなく」というレベルではありません。病気です。

実際、服薬の影響もあるかもしれませんが今の私には病識がないのです。なんで精神科に通っているのか分からないし辛くもなんともないのに、ただうつ状態(と自分では思っている)時期に差し掛かると辛くて辛くて仕方ないのでどうにか日々の服薬を続けるために定期受診しているという認識なのです。

それも病識の範囲内です。

ただの自分の甘えなのに、それを自身が可哀想ぶって医者に深刻に伝えているからこのようなことになっているのであれば申し訳ない気持ちでいっぱいなのです。

違います。甘えではありません。病気です。

私は本当に双極性障害なのでしょうか?転院前は本当に双極性障害だったのが現在は治ったからこのように感じるのでしょうか?

あなたは双極性障害です。治療が成功し、症状がおさまっているというのが今の状態です。

だとしたら何時まで服薬を続ければ良いのでしょうか?

これまでの経過からみますと、薬をやめれば再発する可能性がきわめて高く、一生服薬したほうがいいでしょう。

それともただの甘えで精神疾患では無いのか、あったとしても気分変調症なのか

あなたは双極性障害です。

(2024.12.5.)

05. 12月 2024 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 躁うつ病 タグ: |