【4880】友人の状態にもっと早く気付けなかったのか

Q: 私は高校生の女子です。同期の友人についてです。
何度も考えては「まず気付かない、気付いても出来ることは無いに等しい、後悔しても無駄」という結論に至り、また考えてはこの結論に、というサイクルを繰り返しているので、いい加減断ち切りたいと思って相談させていただきます。
また、自分で書いておいてなんですが、
・一連の流れで私に非がある/無い
・友人は特定の病気である
というバイアスがかかっているかもしれません。稚拙な文で申し訳ないです。

数ヶ月前の出来事でした。
私は前々から体調を崩しがちで、時々保健室に行って休むことが多く、その日は朝からだるかったので、登校してすぐに保健室に行きました。

すると、私が座っていた椅子の後方にあるベッドに友人(件の友人であり、以下Aと呼びます)が座っており、ぼーっとしていました。
私が「体調悪いん?」とAに話しかけると、「んーまぁうん」といった感じで不明瞭な回答が返ってきました。普段Aは論理的で明瞭な会話をする人だったので、「本当に体調悪いんだな」と私はこの時点で思っていました。

すると、間を置いてからAはものすごく饒舌に不思議なことを言い始めました。
あまりに意味がわからなかったので、私は咄嗟にスマホにメモを取りましたが、今見返しても全く分からないので印象的だった発言を取り上げます。

(i)哲学者/数学者/教師/数学/スパコン/スマホ/神/宗教/教授/etc.を「信じない」(何度も発言)
(ii)「「見る必要が無いから」メガネを捨てた」
(iii)スマホやテレビ、本が「遅い」
(iv)「1時間が100年に感じる」(等、時間感覚の乱れ)
(v)「この学校始まって以来の天才」「こんな高校生他にはいない」

vに関しては、私の知っているAならば(同期が知るAならば)考えられない、主語の大きい誇大な発言だと感じます。私が知らないだけの可能性も存在しますが、ほとんどないと思います。
終始喋り続けており、脈絡が全くなかったのが衝撃的だったので、正しくメモ出来ていないかもしれませんが、大体このような様子でした。

また、私と話した後にAは先生とも話し、先生が後ほど話した内容をプライバシーに違反しない程度で簡単に教えてくださいました。大まかに私と話したものと同様の内容でしたが、Aはある程度の病識があるのか、「自分はおかしいと思う」と発言し、先生が精神科の受診を遠回しに勧めると「自分もそうした方がいいと思う」と同意していたそうです。本人が親御さんのお迎えを要請したため、午前中には帰宅したとも仰っていました。Aはこの日の前週に一度も登校しておらず、この日の後も登校せず夏休みに入りました。

以前からAは奇妙な行動をとっていました。
地元の娯楽施設に行くために数時間迷った挙句たどり着けなかったり、1年でありえない冊数の本を読んだり、近隣の施設に忘れたスマホを取りに行くのが面倒だからと数ヶ月放置したり、その他色々です。もちろんこれはAの元来の性格由来の可能性も大いにあることは理解しています。

また、当たり前ですが個人情報なので、先生方もAの状態を公表しません。先生方の立場は私も理解しているので、悩むだけ無駄だと分かってはいるのですが、冒頭に述べたような堂々巡りをしてしまうので困っています。

私は前々から精神医学に興味を持っており、林先生の「家の中にストーカーがいます」等の著作も小学生の頃から愛読しています。その結果として、これまでの私の記述の中で特定の病気を示唆するような単語・描写が入っているかもしれません。主観的な文で申し訳ないです。

慰め・励まし等は不要なので(林先生はそのようなことをされないと承知していますが)、私は何が出来たのか、出来ないとしたらAが復帰した際にどうすればいいか、Aはなぜこうなったのか、教えてくだされば幸いです。

 

林: 質問者の洞察力・観察力、そして真実を見ようとする慎重な姿勢が強く感じられるメールであると思います。それはたとえばこの一文に現れています:

これまでの私の記述の中で特定の病気を示唆するような単語・描写が入っているかもしれません。

質問者はおそらく、この友人の方が統合失調症を発症したのではないかと推測しておられるのだと思います。そのように推測したうえで、しかしそれはご自身の知識に基づくバイアスかもしれないと考え、推測している病名を明示することを避けておられることがメール全体から感じられます。

質問者のこの慎重な姿勢を見習うとすれば、私もここで特定の病名を示すことは避けるべきであると言えるでしょう。この【4880】に限らず、精神科Q&Aのどのケースについても、文字情報のみから病名がわかるはずがないからです。

しかしそこまで厳格な姿勢を取れば、回答は一切なにもできないということになりますので、精神科Q&Aは、質問メールに書かれている内容がすべて事実であると仮定したうえで、その内容から推定できることを回答しています。したがって、私の回答の文章がいかに断定的な記述であっても、それは仮定に基づく推定にすぎません。

以上をご確認のうえで、回答をお読みください:

この友人の方は統合失調症を発症されているのだと思います。保健室で質問者が観察されたこの友人の方の言動は、発症してまもない統合失調症の方の言動に一致しています。
このような言動は、統合失調症以外でも、たとえば脳炎などの急性期でもあり得ます。しかしこのケースでは、それ以前から(「以前」の具体的期間の記載がありませんが、数週間から、長くても数ヶ月であると推定することにします)奇妙な行動が見られており、それらも統合失調症の発症に見られるものに一致しており、他方、脳炎などはもっと短期間に急激に悪化するものですので、統合失調症以外の病気は考えにくいです。

何度も考えては「まず気付かない、気付いても出来ることは無いに等しい、後悔しても無駄」という結論に至り、

については、

まず気付かない

普通はまず気付かないと言えるかもしれません。しかし統合失調症についてのある程度の知識を持っていれば、気付くことはそう難しいことではありません。

気付いても出来ることは無いに等しい

高校の同級生である質問者の立場では、「無いに等しい」とまでは言えないまでも、有効なことは無いに等しいかもしれません。

後悔しても

後悔するのではなく、この経験を将来にどう生かせるかをお考えになるべきでしょう。

(2024.10.5.)

05. 10月 2024 by Hayashi
カテゴリー: サイトの方針, 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: , , |