【4873】仕事の効率を上げる目的で薬を飲んでよいでしょうか
Q: 50代女性、文系専門職(いわゆる士業)の自営業をしております。私は心理学や精神医療に昔から興味があり、このサイトもときどき拝見しております。 今回はこのようなことを質問してもよいのかな、という内容で大変恐縮です。
質問は、仕事の効率を上げるために精神科の薬(ADHDの薬)を飲んでよいのか、という点です。
私は現在ADHDと診断され、ストラテラを飲んでいます。
きっかけは皮膚科の医師からADHDではないかと言われたことです。
2年前から通っている皮膚科で、塗り薬とともにツムラの「温清飲」という漢方薬を処方していただいたところ、気分が変化し、仕事の効率がぐんとあがりました。
私は興味のあることは集中できるが、あまりやりたくないことは先延ばしにしてしまい、取り掛かる際にはかなりのエネルギーを使うという悪癖がありました。
また仕事で忙しいときにくだらない質問をされるとイラっとしてしまう(態度には出していないつもりですが)ことがありました。
ところが温清飲を飲んだところ、気分が落ち着き、やらなくてはならないと思うとその意思のとおりに体が動きますし、イラっとすることも減ったので驚きました。
そのため仕事の効率が上がり、先延ばし後の自己嫌悪もなくなり、私にとっては素晴らしい効果でした。
しかし、その効果は1か月程度で消失してしまいました。
そこで皮膚科の先生に、このような効果があったことと、同様の効果が得られる薬がないのかと尋ねたところ、ADHDかもしれないので、心療内科に行ってみては、と勧められました。
そこで、近所の発達障害を見てくれるという心療内科を受診致しました。
初日に、3、4枚質問票に記入をし、5分程度の面談の後「たぶんADHDでしょうね」と言われて、インチュニブ1mg(その後2mg)を処方されました。面談時には主に受診の経緯(皮膚科での経緯)をお話ししたのみで、成育歴、家族状況、生活状況などはなにも聞かれませんでした。
正直、ADHDの診断には時間がかかると聞いていたのでちょっと面喰いました。
もっともADHDと診断されれば、薬が処方してもらえるので診断には不満はありませんでした。
インチュニブを飲んだ効果としては、落ち着きがでて話し方が変わりました。
それまではつい人の話をさえぎってしまうことがあったのですが、相手が話し終わってから落ち着いて回答するという話し方に変わり驚きました。薬の効果に「おお!」と少し感動しました。
しかし、先延ばし癖は思ったほどは改善されず、また日中非常に眠くなってしまい、仕事の効率という点からはトータルでマイナスではないかと感じました。
そこで、日中の眠気を消すために、インチュニブに加えてコンサータ18mgを処方してもらいました。
コンサータを飲むと眠気はなくなり元気になるのですが、かえって興味のあるものに集中しすぎてしまい、先延ばし癖の改善という目的は達せられませんでした。
また元気になりすぎというか、いつまでも仕事ができていしまい、効果が18時間以上続いてしまい夜眠れず、翌日はぐったりしてしまいました。
そこで、常用するには不適切な薬だと思い、コンサータは眠くなりそうな長時間の会議などのときだけに頓服で使うことに致しました。
そしてインチュニブに代えて、ストラテラ20mgを処方してもらいました。服薬開始から3週間たった現在は30mgを処方されています。
飲むと頭がすっきりするような気がし、先延ばし癖も温清飲を飲んだ時ほどではないにしろ、改善しました。
もっともすっきりしたのはインチュニブをやめたからかもしれません。
不眠気味になりましたがコンサータ程ではなく、睡眠薬(ルネスタ1mg)を飲めばぐっすり眠れます。
前置きが長くなりましたが、質問は、仮にADHDでなくても仕事の効率を上げる目的で薬を飲み続けて良いのでしょうかということです。またはADHDであってもどの程度グレー、または困り感の強さがあれば薬を飲んで良いのでしょうか。
あまりあっさりとADHDと診断されてしまったので、本当にそうなのか疑問があるのですが、ADHDではなくても先延ばし癖が改善されて助かるので、できれば飲み続けたいと思うのです。
薬がないと仕事ができないというほどの困り感はないのですが、大分楽にはなります。50代で昔はどの体力はなくなってきたところ、薬を飲むと多くの仕事がこなせるので助かります。
不眠気味になるという副作用はありますが(もっともしばらく服用すれば副作用は緩和されるのではないかと期待しています)、その他服用によるデメリットはなく、楽になるというベネフィットが上回っていると思われるので、飲んでも良いのではないかと思うのです。
一方では仕事の効率化などということを目的として薬を飲んで良いものか?何か見落としているリスクなどはないか、との懸念があります。
なお、インチュニブを飲み出した後ではありますが、本当にADHDであるかの疑問から、お願いしてWAISテストを実施してもらいました。言語理解134、知覚統合112、作動記憶112、処理速度111でした。
テストはペーパーのみでカウンセリングなどはありませんでした。結果もペーパーでもらいました。私の性格のコメントが書いてあり、当たっているところもあれば、当たっていないところもありました。
医師によるとテストで診断するものではないが、言語理解が他より20以上高いのでADHDでしょうということでした。しかし言語理解が高いのは、正確な言葉づかいを要求される仕事柄のせいではないかという気がします。
林:
質問は、仕事の効率を上げるために精神科の薬(ADHDの薬)を飲んでよいのか、という点です。
まずご自身で次のことについてお考えください。
(1) 性格を改善するために薬を飲んでよいのか
(2) 運動能力を改善するために薬を飲んでよいのか (あるいは薬でなくても、たとえば手術など、医療を用いてよいのか)
(3) 頭をよくするために薬を飲んでよいのか(あるいは薬でなくても、たとえば手術など、医療を用いてよいのか。以下も同様で、「薬を飲んでよいのか」とあわせて「たとえば手術など、医療を用いてよいのか」)
(4) 外見を(たとえば容姿を)改善するために薬を飲んでよいのか
(5) 「生きやすく」なるために薬を飲んでよいのか
(6) 記憶力を改善するために薬を飲んでよいのか
(7) 記憶力の低下を予防するために薬を飲んでよいのか
(8) 老化(身体的・精神的)を防止するために薬を飲んでよいのか
(9) 忘れものをしないために薬を飲んでよいのか
(10) 特定の能力を高めるために薬を飲んでよいのか
(11) 気持ちよくなるために薬を飲んでよいのか
(12) 極端に偏った考え方を改善するために薬を飲んでよいのか
(13) 妄想をなくすために薬を飲んでよいのか
(14) 幻覚をなくすために薬を飲んでよいのか
(15) 暗い気分を改善するために薬を飲んでよいのか
(16) 不安感を下げるために薬を飲んでよいのか
(17) 血圧を下げるために薬を飲んでよいのか
(18) 精神の病気を治すために薬を飲んでよいのか
(19) 身体の病気を治すために薬を飲んでよいのか
(20) 病気とは何か
以上についてお考えになったうえで、
仕事の効率を上げるために精神科の薬(ADHDの薬)を飲んでよいのか
についてのご自身の答えをお決めください。
なお
【3868】コンサータによって自己の連続性を失いつつある
もご参照ください。
(2024.9.5.)