【4844】私の症状は環境を変えれば変わっていくのでしょうか?(【4426】のその後)

Q: 【4426】人の話が理解しづらくなりました の質問者の20代男性です。その節はご回答いただきありがとうございました。
私は回答いただいたあとまもなく近くの精神科を受診し、リスペリドン0.5mgの処方がはじまりました。しかし、わたしの被害妄想はなくなることなく、毎晩ドアをたたいてくる、車に発信機がついている、外出時に隠れながら親がどこかへ電話している、などの幻覚を頻繁に感じていました。
また、これらとは少し違う症状で、会話能力や文章理解の能力が低下していきました。頭で理解している言葉と発する言葉に齟齬を感じ、内心パニック状態になってコミュニケーションが図れない、ということが度々起こっていました。
それらの症状は周囲の人たちに隠すことはできず、ほどなくして仕事は退職することにしました。そしてここから、被害妄想が顕著に表れていきました。
「25にもなって仕事しないなんてどうかしている」「親がかわいそう」「できそこない」といった内容で、毎日気が滅入るほどきこえました。ときには、ひどい頭痛と吐き気が誘発され1日中トイレにこもるほどでした。
それらの焦りから、先月から軽作業の仕事をフルタイムで始めました。仕事中には幻聴や幻視の頻度が下がるように感じます。しかし家に帰ると相変わらずで、現状にうんざりしています。
私は両親と別離することで、環境がかわり、両親のことを考えなくなれば症状が少しでもよくなるのではと考えています。一方で、もし私の精神症状が悪化すれば生活は破綻してしまうのではないかという不安もあります。
上記のことをふまえ、私のこれからのライフプランはどのように立てることが重要になるのでしょうか。

 

林: まずは精神科受診され治療を始められたとのこと、それは改善への大きな一歩で、とてもよかったと思います。
けれどもその後の経過をみますと、ほとんど改善していないようです。これは明らかにリスペリドン 0.5 mgという量が少なすぎることが原因です。通常はリスペリドンの最小量は1日1mgで、とはいえ初診の時点では副作用のことも考えて慎重に0.5mgから開始するという方針はありえますが、それはあくまで初診の段階であればありうるということであって、この【4844】のケースのように、改善が見られないのであれば、増量するのが精神科の治療としては標準的、と言いますか、常識です。
つまり、【4844】のケースが治療を始めたのにもかかわらずまだ改善が見られないのは、不適切な薬物療法に原因がある、端的に言えば薬が少なすぎるからです。
したがいまして、

私は両親と別離することで、環境がかわり、両親のことを考えなくなれば症状が少しでもよくなるのではと考えています。

そのお考えは、間違いとまでは言えませんが、それよりも薬を適切な量まで増やすことのほうが先決です。

一方で、もし私の精神症状が悪化すれば生活は破綻してしまうのではないかという不安もあります。

そのためには薬を適切な量まで増やすことが必要です。

上記のことをふまえ、私のこれからのライフプランはどのように立てることが重要になるのでしょうか。

まずは薬を適切な量まで増やすことが第一です。

もっとはっきり申し上げれば、現在あなたが受けている治療はほとんど治療とは言えないレベルです(ただし、このメールの文章のみからですと、リスペリドン0.5mgを開始してからの期間が不明ですので、もし開始して1週間程度であれば、これから増量することが計画されていると考えられますので、「治療とは言えないレベル」とは言えません。しかし、前回の【4426】から今回までの期間に基づき、今回の【4844】では、リスペリドン0.5mgという処方がかなりの期間継続されていると推定して回答しています)。適切な薬物療法を受ければ、あなたの症状は著明に改善し、症状の消失も期待できます。

(2024.6.5.)

05. 6月 2024 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症