【4814】双極性障害か気分変調症か

Q: 30代女性です。
15歳のときに初めの鬱状態があり、その後15年以上、断続的な鬱状態に悩まされております。
具体的には、死にたいと思ったり自分は無能で無価値な人間であると思ったりします。
入浴や食事などは出来ますし、朝は起き上がりづらいですが仕事を休職するような事はありませんでしたので、鬱状態の程度としては軽い方なのかと思います。

数週間から数ヶ月ほど抑うつ状態が続きますが、いつの間にか普通の状態に戻ります。
(普通の状態といっても、もともと悲観的な性格なので元気ではないのですが)
そして、初春ごろになるとソワソワ感やイライラ、不安がでてきて、頭が覚醒しながらもボーッとしているような、なんだか不快な状態になります。また、この時期に中途覚醒が始まり夜中3時ごろ目が覚める日が続きます。
イライラ感が強まると、外でも店のドアに蹴りを入れたり、通行人に体当たりしたり、奇声を上げたり、常軌を逸した行動をしてしまうこともあります。

性格なのか病気なのか分からないまま受診もせず放置してきてしまったのですが、林先生のQ&Aを拝見していると、自分はもしかして双極性障害ではないかと感じ始めました。
抑うつがずっと続くのではなく平常な状態の期間もあること、また易刺激性が躁状態に関連するケースがあると拝読したことから、そのように思いました。

しかし、私には躁状態がありません。
しいて挙げるなら、普段インドア派なのに一人旅(国内)に出たり、10万から20万程度の買い物をしてしまうことはありますが、主観的にも躁状態とは感じていませんし、客観的にみても躁状態というレベルではないと思います。

躁状態が無いとすれば双極性障害とは言えないと思いますので、その場合気分変調症ということになるのでしょうか。
また、妊娠を希望しているのですが妊娠に影響の無い、または少ない薬物療法はあるのでしょうか。

 

林: 質問者には、周期的なうつ状態が見られることまではかなりはっきりしていると言っていいと思います。そしてその周期が季節に関連していることも認められます。すると診断としては、「季節性の気分障害」とまではまず言えます。次の問題は、それはうつ病なのか、双極性障害なのか、ということになります。端的には、躁状態があれば躁うつ病、躁状態がなければうつ病、です。

躁状態が無いとすれば双極性障害とは言えないと思います

その通りですが、ここで重要なのは、躁状態があっても、主観的にはそれを躁状態とは認識していないケースは非常によくあるということです。
この【4814】の質問者は、主観的には

主観的にも躁状態とは感じていません

と言っておられます。主観的な状態がどうであるかは本人だけが言えることですから、「主観的には躁状態ではない」ことはこの時点で確実です。
さらに質問者は

客観的にみても躁状態というレベルではないと思います。

と言っておられますが、これには根拠がありません。客観的な状態がどうであるかは、本人に言えることではないからです。本人がいくら、「客観的には〇〇ではない/ 〇〇である」と言ったとしても、それは客観的な所見として認める理由にはなりません。そして双極性障害では、前述の通り、躁状態については、本人は躁状態と感じていないことはよくあるものです。

しいて挙げるなら、普段インドア派なのに一人旅(国内)に出たり、10万から20万程度の買い物をしてしまうことはあります

それは躁状態の可能性が高いです。もちろん、普段インドア派の人が一人旅に出るとか、10万から20万の買い物をすることがあるというだけで、躁状態とは言えません。しかし、この【4814】のケースの全体像からみれば、これらは躁状態の可能性が高いといえます。このとき、躁状態の診断基準を満たすかどうかは別の話です。また、このような経過をとっている場合、将来のどこかの時点で激しい躁状態がくる可能性も十分にあります。

したがってこの【4814】のケースは、双極性障害の可能性が高いと言えます。
すると次なる問題は、薬物療法を開始すべきかということになりますが、質問者が懸念されているとおり、妊娠への影響を考慮する必要があります。

妊娠に影響の無い、または少ない薬物療法はあるのでしょうか。

影響がゼロであると確定的に言える薬物というものは存在しません。そのような薬物が存在しないことは論理的に明白です。
しかし、影響が少ない薬物は存在します。
では、「影響が少ないが、ゼロとまでは言えない薬物を、妊娠中に飲むべきか」という問いが次に発生しますが、薬物療法というものは常に、そのメリットとデメリットのバランスをもとに考えるものです。妊娠中の薬物療法は、端的には、「薬を飲ないことによって妊娠そのものの継続が困難になるような症状が出る可能性が、薬を飲むことによる妊娠への悪影響より高ければ飲む」ということになりますので、この観点からご自身でお決めください。ただこのとき、「自分は薬など飲まなくても大丈夫」という根拠のない信念によって薬を飲まないというい選択をし、結果として妊娠の継続が難しいレベルの精神症状が妊娠中に出てしまうことが、うつ病、双極性障害、統合失調症の場合にはしばしばあります。この意味でこの【4814】の質問者には、躁状態か否かの判断をご自分だけではせず、医師を含めた周囲の人によく相談することをお勧めします。

(2024.4.5.)

05. 4月 2024 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A, 薬の副作用, 躁うつ病 タグ: , |