【4749】アコースティックギターの幻聴らしきもの

Q: 30代男です。貴サイトいつも興味深く拝見しています。

今年1月からマンションに新規入居した①隣人の騒音(夜中12時から朝5時ごろにかけて単発的に話し声や笑い声がすることが週2,3日)に悩まされており、何度も管理会社や警察に相談して、何度も相手に注意してもらい.ようやく9月ごろに騒音が止みました。(この時の騒音は警察が確認済みです)

しかしその騒音が止んだのとおおよそ同じ時期に②週に2,3日、アコースティックギター(アコギ)の音がマンションのどこからか、夜9時あるいは夜中3時あたりから30分くらい聞こえてくるようになりました。

最初はこのくらいならまあ耐えられるかと思い、また何度も管理会社に相談してることもあり、また苦情を入れるとクレーマー認定されてしまうことも恐れて、とりあえず様子見をしていました。

またどうもそのアコースティックギターの音は絶妙に反響しており、前回の騒音と違いどの方向から鳴っているのか特定できず、ベランダや外からは聞こえないこともあり騒音源の部屋番号を特定できずにいました。

ですがここ最近になって③週2,3日、夜中9時から数分ないし1時間くらいアコースティックギターの音が聞こえるような聞こえないような奇妙な感覚に襲われるようになりました。

前回のようにはっきりと聞こえるような感じではなく、耳をすませば聞こえているような…という音量です。なんとも名状しがたいですが、明らかに実在する音ではないが、なんとなく聞こえてくる音といったかんじです。そのような感覚が、続いているようないないような…といった感覚です。

②、③の”騒音”は音量は違いますが、音の内容は同じです。アコースティックギターのコード(和音)を軽くかき鳴らす音と、弦をつま弾くような単音が一小節分ループして単調に続くようなものです。要は演奏というよりギター初心者が軽く弦をかき鳴らしたり弦を弾くような感じの音が続く感じです。

まとめると①の騒音は第三者の観測ありの、確実な騒音、②の騒音は第三者の観測なしの、私が実在すると思ってる騒音、③第三者の観測なしの、私がほぼ幻聴だと確信してる騒音です。

また私は10代中盤から20代前半のころギター(エレキ、アコースティックギター両方)をそれなりに弾いており、現在では弾いていません。(実はミュージシャン志望だったのですが進路の変更やら音楽の趣味の変化やら挫折やらですっぱり辞めてしまいました。)

そして10代中盤から後半のころ、自分の好きな曲を脳内で流す、というか意図的、自発的に幻聴として外界に曲を流し、それを耳で聞き取る、というような能力がありました。(たしか外界が無音かつ夜中にのみできる能力だった気がします。今はできません。)

また私の妹がおそらく統合失調症にかかっていたこともあり(発症していた時にはすでに私とは別の場所に住んでいましたので、両親づてに当時の妹の様子を聞くと「盗聴器が仕掛けられいるから窓を閉めなきゃ」など貴サイトに載っている統合失調症の方たちと似たような様子だったそうす。正式な病名は告げられていません。現在は寛解してます。)私もなんらかの精神疾患に目覚めたのかと戦々恐々としています。

ネットで調べると音楽幻聴というものがあり、私もそれの軽度な状態になっているのでは…?は思っています。

遺伝的に幻聴が聞こえやすい体質であり、思春期のころにその性質が能力として使えたが、いつの間にか消失。しかし大人になり騒音被害により音に対して敏感になり、それがトリガーなり今度は軽度の幻聴として表出するようになった、と素人ながら考察しています。

結局これは幻聴なのでしょうか、また私の上記の考察は的外れなものでしょうか、また私は今精神科を受診すべきでしょうか。また今行く必要がないならば、この幻聴がどの程度悪化したら精神科に行くべきでしょうか。

林: 音楽幻聴(文字通り「音楽が聞こえる」という幻聴。ただし音楽だけが聞こえる場合を指します)は精神医学では昔から知られている症状です。高齢者に多く、難聴を伴っている場合が多いです。原因は不明の場合が大部分ですが、何らかの脳病変やてんかんなどによることもあります。したがって音楽幻聴がある場合には、まずは脳MRIや脳波の検査が必要であるといえます。その結果なんらかの所見があれば治療の必要性が発生しうることになりますが、多くは検査をしても所見はなく、そうなりますと原因は不明としか言えないことになります。が、原因不明の音楽幻聴が、なんらかの精神疾患の前駆症状である可能性は低いです。

ただこの【4749】の質問者の場合は、妹さんが統合失調症であるという遺伝因子がありますので、慎重に考える必要があるでしょう。統合失調症の幻聴は、はっきりと「聞こえる」という体験のこともありますが、聞こえるか聞こえないかはっきりしない、しかし確かに感じられる、という体験であることも多いものです。その意味では、

なんとも名状しがたいですが、明らかに実在する音ではないが、なんとなく聞こえてくる音といったかんじです。そのような感覚が、続いているようないないような…といった感覚です。

これは統合失調症の幻聴体験に近いという解釈も成り立ちます。けれども統合失調症の場合は、そのはっきりしない感覚は、「音」ではなく「意味」であるのが典型的です。つまりなんらかの意味があるメッセージを感じる、それが言葉として聞こえているのか聞こえていないのか自分にもよくわからない、という体験です。そしてその「意味」は、自分にとってネガティブなもの、たとえば悪口や陰口であることが最も多いです。
そうしますと【4749】の質問者の音楽幻聴は、統合失調症らしくないということになります。

遺伝的に幻聴が聞こえやすい体質であり、思春期のころにその性質が能力として使えたが、いつの間にか消失。しかし大人になり騒音被害により音に対して敏感になり、それがトリガーなり今度は軽度の幻聴として表出するようになった、と素人ながら考察しています。

その推定は正しいかもしれません。しかし正しいと証明することはできませんので、「正しいかもしれません」にとどまります。

言えるのはここまでです。すなわち、
・音楽幻聴がある場合には、脳MRIや脳波検査が必要
・しかしその検査結果は所見なしのことが多く、その場合は原因不明だが、精神疾患の前駆症状である可能性は低い。
・ただし【4749】の質問者では、統合失調症の遺伝因子があると考えられるので、慎重に考えることが必要。
・もっとも、【4749】の質問者の幻聴は、統合失調症らしくないので、今の段階で統合失調症を心配する必要はない。

以上です。今後、症状に変化がありましたらお知らせください。

(2023.11.5.)

05. 11月 2023 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症