【4704】小学校に軽トラックが侵入した事件(2023年7月)の犯人について
Q: 20代女性です。2023年7月6日に宮城県の小学校に軽トラックが侵入して小学生をはねた事件の犯人は、事件の前に自分から警察に行き、「自分の様子がおかしい」「危害を加えられている」などと訴えたと報道されています。するとこの犯人は小学生から危害を加えられているという妄想を持っていたのでしょうか。そして妄想を持つ人が、自分の様子がおかしいと自覚して警察に行くということがあり得るのでしょうか。
林: 被害妄想を持ちつつ、同時に、それは妄想なのではないか、自分の精神状態に何か異変が起きているのではないか、という自覚を持つことは、統合失調症として特に例外的なことではありません。関連したケースとして、
【4687】周りの人の行動が自分に対する攻撃のように思います
【4572】隣人にうるさいと言われ嫌われている。これは自分の妄想ですか?
【4514】被害妄想している自分を客観視できているのですが、そんな私でも精神科にかかってよいのでしょうか
【4492】世界がおかしいです。自分もおかしいです。怖いです。
【2027】みんな私を見て悪口を言い、笑っています。本当としか思えないのですが、単なる被害妄想か幻聴ですか?
などをご参照ください。
この宮城県の小学校の事件の容疑者が警察に相談に行ったときはこれらのケースと同様ないしは近い状態であったと考えられます。その時点で直ちに精神科での適切な治療が開始されれば、あの事件は防止できた可能性が高いです。
この容疑者のように、統合失調症の初期の方が警察に相談に行くというケースの実数は不明ですが、相当な数に及んでいると思われます。その際の警察の対応は、精神科の受診を勧めるということもありますが、「勧める」を超えるものは困難であるというのが現実です。あるいは【4655】知人から悪質な嫌がらせを受けております のように、「警察にご相談しましたら、(犯罪性も含んでいるので) あまりその知人とは関わらない様に、原則的に無視する様にと言われました。」というのもかなり一般的であるようです。
(2023.8.5.)