【4576】10 代でクロザピンを使うことが不安です
Q: 14歳の娘の母(50歳)です。
娘は一年前に統合失調症を発症し幻聴、幻覚、妄想が酷くなり3ヶ月入院し、先月に退院しました。投薬はアリピプラゾール23㍉、ロナセンテープ80㍉、オランザピン㍉です。オランザピンが退院当初5㍉でしたが症状がやはり激しいため10㍉ に増やしました。その頃から一週間程ですが激しい興奮の出現が減りました。このまま自宅でなんとか療養できるかと思いましたが、トイレに5分10分に一度行き排尿障害の為、オランザピンの副作用だろうと減薬。7.5㍉にしましたが(他の2種はそのまま)興奮が頻繁になり激しく手が付けられず結局退院後ひと月ちょっとで3日前に再入院しました。
その際、主治医から話があったのがクロザピンです。この入院でクロザピンを使うと打診がありその前に他の選択がないのか?効果が期待できる以外14歳の早期で使うメリットは?定期的な血液検査で副作用が出た場合出てから改善出来るのか?とても不安です。
また醜形恐怖症ではないか?と思う症状がありますが主治医は統合失調症の症状と言いま
す。支離滅裂な思考、妄想、幻聴…統合失調症は否定できません。私の母、姉も統合失調症で家族歴からも否定できません。私が醜形恐怖症ではと思う理由はかなり前から「目が潰れた」「目が足りない」「皮膚が厚い」「足が太い」「整形したい」「口角が下がる」「鼻がブタ」「顔が気持ち悪い」「ブス」「目が小さいのに鼻がデカい」鏡を嫌がるのに顔が移る窓や柱を見つけては眺める。幻聴も容姿に関わる内容があり興奮が激しく「こんな顔で生きろと言うの? ブス!整形したい!」と自分の頭や顔を自分で強く殴ります。実際は目も大きく全く見にくくありません。醜形恐怖症はうつ病の薬でないと効果がないとみた事があり薬が合っているのか?今の状態でクロザピンの使用は適切なのか?とても不安です。先生どうかご意見を聞かせて下さい!病院から顔についての発言で興奮し手を拘束させて貰ったと連絡ありました。一年前まで普通の友達も多い中学生でした。教えて下さい。どうかお願いします。
林: まず診断については、醜形恐怖症ではありません。統合失調症であることは確実です。質問者が醜形恐怖症ではないかとお考えになる根拠として挙げておられる症状は、症状だけを見れば醜形恐怖症とみることができますが、統合失調症の一症状ととしてこのような症状が出ることはしばしばあり、統合失調症の症状が現れた時点で醜形恐怖症の診断は否定されます。
そして、13歳で発症されてかなり重篤な症状になっているということは、今後非常に悪い経過をたどる可能性がかなり高いという現実を認識される必要があります。楽観できる要素はほとんどありません。統合失調症ではなく他の病気ではないか、というのは、このような場合にご家族が藁にもすがる思いでたどりつく考えの一つですが、それは文字通り藁にすぎず、すがっても無駄です。
これからの治療をどうするかは、こうしたことを認識したうえで検討する必要があります。つまり、いかなる治療法にもリスクはありますから、そのリスクと、その治療をしなかった場合のリスクのどちらが大きいかと考えなければなりません。するとこのケースは、クロザピンによる治療が正しい選択であることはほとんど自明です。クロザピンについては副作用の説明を受けて心配されているのはよく理解できるところですが、そもそもクロザピンの副作用を危惧してここまで慎重に処方を制限するのは日本特有といってもいいもので(他の薬についても類似のことが言えます)、そのような過剰な安全志向によって適切な治療がなされていないという事態は、クロザピン以外にもいくつもあります。
この【4576】のケースはクロザピンの治療を開始すべきです。
(2022.11.5.)