【4466】嫉妬妄想を持つ義父を受診させたい
Q: 私は30代女性です。同居している59歳の夫の父についての質問です。 夫の父(59歳)、夫の母(56歳)、夫の祖母(80歳代)、私たち夫婦と息子、夫の妹(20歳代)の7人家族です。 夫の父(義父)の、夫の母(義母)に対する嫉妬妄想に悩んでいます。 義母の浮気を信じており、「浮気を認めろ、認めて謝れば許してやる」と言い続け、詰め寄るのだそうです。半年前、妄想が原因で夫婦げんかになり、義父に殴られ嫌気がさした義母は、農薬を飲んで自殺未遂しました(殴られたのはその時が初めてだったそうです)。幸い命には別状ありませんでしたが、義父が医療機関を信用していないため、受診もせず自宅療養で済ませた状態です。
義父の妄想は以前からのようで、20歳代で結婚した後「家に盗聴器が仕掛けられている」と言い、近所の派出所に相談したこともあるそうです。私の夫の祖母、父の実母がスピーカーみたいな人で、井戸端会議や噂話が大好きなのですが、祖母が近所の人と話したことから「誰にも言ったことがないのに周り中が知っている。盗聴器だ」と考えたらしいのです。 今まで2、3度、妄想が盛り上がった時期があるそうですが、精神科の受診・治療の経験はありません。 住んでいる地区は専業農家が多く、親類も近くに住んでいます。若くして跡取りとなった義父は、「地区の人たちから辛い目に遭わされた」と主張します。「同じ地区に住んでいるのに、自分に対して考えられないようなひどい仕打ちをする」とこぼすのですが、具体的なことは話したがりません。ただし、その被害妄想を家の外で口にすることはありません。区長や仕事関係の役を推薦されるなど、近所の人からも信頼されています。「人柄も穏やかだし、いい人だね」と褒められるのを聞きこそすれ、けなす人はいません。地区の集まりがあると、近所の人たちと酒を飲みながら談笑したりもするのですが、「薬を入れられて、一口飲んだだけでひどく酔った」と、近所の人を警戒するよう話すこともあります。
半年前の義母の自殺未遂の後、更に父の妄想に拍車がかかるようになりました。 義母の浮気相手と妄想している相手は一人、具体的にいるのですが、それが義母の実家の近所の人らしく、義母は一人で実家の老父母の介護にも行けずにいます。 2人とも専業農家なので、朝から晩まで常に一緒にいます。義父にとっては「悪い奴らが、妻を悪い方へ引き込もうとしている。守らないと」という思いなのですが、日用品の買い物や義父本人の受診にも、常に二人で行動しており、義母の携帯電話も取り上げています。義父は、体はとても健康です。年1回の健康診断でも問題なし、前立腺肥大のため、頻尿が続くと受診・服薬するほかは、内科的にも受診歴・治療歴はありません。 診察待合に義母が待っていて、隣に女性が座っていても「何か性的な嫌がらせをされたんじゃないか」と勘繰ります。義母が女性の友人たちと食事に出かけるのも「食事途中に、薬を飲まされ意識のなくなった間に性的なことを何かされている」と訴え、一人での外出も制限しています。 義母も、浮気については何年も前から疑われ、そのたびに根気強く否定してきたそうです。ただ、妄想を否定しても効果はなく、もう10年以上この状態が続いているようです。相談できる人もなく、義母の悩みは深いです。自殺未遂騒動があるまで、同居の家族にも妄想のことは秘密にしていました。 最近の義父は、「相手と義母が行動を慎むよう仕向けるために」と自宅に監視カメラを取り付けました。浮気を疑う相手に直接攻撃的な態度を取ったりすることはありません。「近所にうろついているようだ。会ったら文句言ってやる」と話しますが、直接自分から出向いてやろうという気はないようです。 受診を勧めたいのですが、義父は、妄想を否定する相手を「悪い奴らの手先」と断じ心を開こうとしないので、どう話をするべきか困っています。 今のところ、嫁の私を一応は信頼してくれています。 受診する際、どう説得するのがよいか(義父本人の妄想を、はっきり妄想と伝えて受診したほうがよいのか、義母の受診に付き添う形をとり、だまして受診させるべきか)迷っています。 病識がないため、妄想だと伝えた場合、受診そのものが難しくなるようにも思います。ですが、だました場合、入院や服薬治療がスムーズにいくのか心配です。 どのように家族がサポートするのがよいか、お教え下さい。
林: 嫉妬妄想以外にも精神病的症状があり、それも20歳頃から見られたようですので、統合失調症または妄想性障害である可能性がかなり高いです。精神科で治療を受ければ改善が期待できます。けれども受診そのものが相当に困難なことは確かです。
義父本人の妄想を、はっきり妄想と伝えて受診したほうがよいのか、
その方法は100%失敗します。
義母の受診に付き添う形をとり、だまして受診させるべきか
そんなことをしても不信が高まるだけです。
ではどうするか ということですが、この状態ですと、本人の意思に反して入院でもしていただく以外に方法はなさそうです。それに踏み切るか、問題を先送りにするかのどちらかでしょう。この現実を認識されたうえで、どうするかご決断ください。
(2022.3.5.)