【4626】うつ状態という診断は正しかったのでしょうか

Q: 24歳女性です。うつ状態という当時の診断に疑問があるため、メールいたしました。

5年ほど前から2年前くらいまで、理由もなく漠然と何かが怖くなったり、憂鬱になったりして泣いたり希死念慮に襲われたりしていました。
死にはしないだろうと思いながらやっていたので、自殺未遂というよりは自傷行為になると思いますが、スマホの充電コードで自分の首を絞めたり、ビニール袋で頭を覆って窒息しようとしたりしていました。
大学の課題も手に付かなかったため、半年休学して半年間復学しましたが、復学の負担が大きかったのか、症状が悪化し、更に一年休学しました。
症状が特に酷い時は全く何の力も湧かず、声を出すことも出来ず、一日中寝たきりという日が続き、母に風呂で頭や体を洗ってもらったり、食事を口に運んでもらったりしていました。

このような症状が出ていたのは、恐らく友人を自殺で亡くしたこと、ADHDの症状により計画的な課題遂行が困難で大学生活に支障が出ていたことが原因であったのだと思います。
また、祖父やその他親族にうつ病で入院した経験のある者や自殺した者が複数いるため、遺伝的なものもあるのだと思います。
婦人科で処方されたジエノゲストもかなり効果があったことから、PMDDでもあったのだと思います。

その後また復学しましたが、治療の効果もあり、寛解したと言っても差し支えないレベルにはなったのではないかと感じています。ストレスがかかると一時的に症状は表れるものの数日以内には回復するような感じで、今のところ一年半休学せずに通うことが出来ています。

治療についてです。初めはサインバルタを処方されましたが、目眩や吐き気などの副作用が強く、レクサプロに変わりました。しかしあまり効果が無かったことからオランザピンに変更になりました。オランザピンは効果が実感できたのですが、副作用で体重が15キロほど増えたため、クエチアピンに変更され、今に至るまで2、3年くらい飲み続けています。なぜ処方されたのかはあまり覚えていませんが、イライラしやすいか何かでバルプロ酸ナトリウムも処方されています。

長くなりましたが、本題の質問に入りたいと思います。
初めの復学時と二回目の復学時に大学に合理的配慮の申請をするため診断書を書いていただいたのですが、診断書にはうつ状態とありました。私はうつ病ではなかったということでしょうか。
また、クエチアピンやバルプロ酸ナトリウムが処方され、それらが効いているということから双極性障害の可能性がある気がするのですが、そうではないのでしょうか。
ネットで数万円の買い物をして後悔したり、本来は人との会話は避けたいタイプなに映画の内容に興奮して劇場内で見知らぬ人に声をかけてしまったり、10時間睡眠の生活をしていたのに3〜5時間で目が覚める日が続いたりということがあったので、双極性障害であればこれらは躁病エピソードであったように思います。ただ、ADHDの衝動性である可能性もあるように思います。
先生の見解をお答えいただけると幸いです。よろしくお願いします。

 

林: 「うつ状態」は、文字通り、「うつ」の「状態」を指す用語です。
したがって、ご質問の冒頭の一文、

5年ほど前から2年前くらいまで、理由もなく漠然と何かが怖くなったり、憂鬱になったりして泣いたり希死念慮に襲われたりしていました。

この時点で、質問者がうつ状態であったことは明白です。したがって、「うつ状態という診断は正しかったのでしょうか」というご質問への答えは明白なイエスです。ご質問の他の部分は読むまでもなく明白なイエスです。

しかしながら質問者は、「うつ状態」と「うつ病」と「双極性障害」を別のものであると考えて、ご自分はそのどれであるのか、と質問しておられるのだと思います。そのような用語法も全くの間違いとまでは言えませんが、やはり間違いは間違いです。
うつ病でもうつ状態が見られますし、双極性障害でもうつ状態が見られます。

「うつ状態という診断は正しかったのでしょうか」は棚上げにして、この【4626】の質問者の診断についてお答えしますと、最も考えられるのは双極性障害です。
そう言える理由は、第一に、かなり確実なうつ病の症状があること。この時点で、考えられる有力な診断名はうつ病と双極性障害になります。
そして第二に、

興奮して劇場内で見知らぬ人に声をかけてしまったり、10時間睡眠の生活をしていたのに3〜5時間で目が覚める日が続いたりということがあった

というエピソードがあること。このエピソードについては、持続期間の記載があればもっと確実なことが言えると思いますが、その記載がありませんので躁病エピソードについては「可能性あり」にとどまります。質問者が指摘しておられるADHD傾向の現れの可能性は、これも否定はできないものの、その可能性は低いでしょう。

そして第三に、

クエチアピンやバルプロ酸ナトリウムが処方され、それらが効いているということから双極性障害の可能性がある気がする

このことも加わって(薬への反応性のみでは何とも言えませんが、他の情報に加われば)、双極性障害の可能性が最も高いということになります。

(2023.2.5.)

05. 2月 2023 by Hayashi
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