【4203】統合失調症と診断されていますが、境界性パーソナリティ障害ではないでしょうか?

Q: 20代後半の女性です。10年前に統合失調症と診断され、その後7年程かけて症状が落ち着き、現在一般企業に勤めております。
症状が落ち着き…というのはあくまで主観的なものだったのですが、2年前に独断で通院を辞めてしまいました。
今では通院は続けるべきだったと感じております。
と言いますのは、1年くらい前、周囲に疎まれていると言う被害妄想のような症状と不眠、無気力、不衛生、体重の激しい増減といった事象があらわれたからです。
そこで職場近くの心療内科にかかり、これまでのエピソードを話すうち、「あなたは統合失調症ではなく境界性パーソナリティ障害ではないか?」と告げられました。
曰く、以下のようなエピソードが境界例によく見られるものなのだそうです。

・水商売、売春、行きずりのセックスを繰り返すなどの性的逸脱行為。
・ODによる自傷、家族や恋人への自殺仄めかし。自殺未遂による2度の入院。
・家族や恋人が少しでも冷たい(と取れるような)態度を取ると取り乱し、それをアピールするか自傷する。
→アピールというのは、不機嫌な表情をつくりメールやLINEで「私がいなくなればいいんでしょ?邪魔になったんでしょ?申し訳ないので今から死にますね。今までご迷惑おかけしました。」ですとか
「~という言葉に傷ついた。もう二度と連絡しないしあなたの人生に関わらないから嫌いにならないで存在を忘れて」など、関心を惹こうとする内容のメッセージを送りつける行為を指しました。
実際に一切の連絡を断つ行為も含みます。
相手に去られる前に自分から去りたい、または迷惑をかけて申し訳なかった、なにか失敗した、なのでもう死にたいという気持ちからです。
・情動のコントロールの精度が年齢にそぐわない。
→上記のような異様なメッセージを送ることや、想定外の事態に出会すと固まってしまうか怒るか、泣き出します。
(なお仕事中はこれらのエピソードは発生したことはないです。証明しようもできませんが、先日昇格しましたし営業成績で表彰もされたので少なくとも業務上、相応しくない態度でいることは少ないといえるのではと…)

話は戻りますが、上記のことを話すと医師に「統合失調症というよりも境界性パーソナリティ障害であるように思う。境界性パーソナリティ障害の患者においても、症状が強まっているときには被害妄想や幻聴、記憶の抜け落ちなど、統合失調症と見紛うような状態に陥るものだ」と言われました。私としては、診断名にそこまでこだわりたい気持ちはなく、ただもう少し安定して、今よりも心穏やかに人に迷惑をかけすぎないで生きていければ問題ないのですが…
そして境界性パーソナリティ障害の書籍などを数冊読むと、たしかに当てはまりすぎるほどではあるのですが…
どうも自分は統合失調症だとばかり思って生きてきましたので、これまで治療に費やした数年が無意味だったのだろうかとモヤモヤした気持ちもあります。
統合失調症として発症し、その後パーソナリティ障害になる、ということはあり得るのでしょうか?
お目通しありがとうございました。よろしくお願いします。

 

林: このメールで質問者が列記しておられる内容は、確かに境界性パーソナティ障害の特徴に一致しています。しかしながら、過去に統合失調症と診断されたからには当時は統合失調症の特徴に一致する症状があったはずですが、それについての記載が一切ありません。したがって、質問者の診断について何かをお答えすることは不可能です。パーソナリティ障害の特徴というものは、境界性パーソナリティ障害に限らず、誰にでもある程度まではあることですので、「パーソナリティ障害の特徴に一致する」ことは、たとえその一致が文言上は強い一致であっても、直ちにパーソナリティ障害という診断を導くことはできません。この【4203】のケースに過去において確実に統合失調症の症状があったのであれば、「診断は統合失調症。性格傾向として境界性パーソナリティ障害の特徴を持っている」というのが診断についての正しい記述になります。

(2021.1.5.)

05. 1月 2021 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 境界性人格障害, 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: |