【4370】もう一人の自分の言葉として会話するとすらすら話せる

Q: 私は30歳の女性です。私は自分がうつ病もしくは人格障害があるのではないかと悩んでいます。というのも、私は過去にリストカットをしたり、風邪薬を多量に飲んだりした事があります。死にたいという気持ちが強かった21歳の頃の話です。遺書を書いて死のうとして親に見つかった事もあります。その頃は当時一緒にいた彼に対してのみ暴力や暴言もあり、ガムテープを部屋の壁にめちゃめちゃに貼り付けたり、物を投げつけたりしていました。ある日彼に病院に連れて行かれたのですが、病院の玄関先で「私はおかしくなんかない」と泣きじゃくり抵抗したため、結局受診はしませんでした。それでも時が経つと共に(彼と別れてからでしょうか)そんな行動もしなくなり、ただいつも何をしていてもおもしろくない、人がおしゃべりして笑っていても何がそんなにおもしろいのかわからないという事意外は特別な症状もなく過ごしてきました。その頃は何か悩みがあっても勝手に頭がボーっとしてきて、何を悩んでいたのかもわからなくなるという不思議な状態が数年続き、その間は悩む事もできないので、ただ、すっきりしない気持ちをひきずっていました。

でも最近になって、突然気持ちが焦りだし、自分の行動が止めれなかったり、自分の血管に注射針をさして流れ出る自分の血をぼんやりみていたりするのです。頻回ではなく、ごくごくたまにですが・・・。女の人とは表面上だけでしか付き合えず、女の人と二人になるのは耐え難く苦痛なのです。ですから、今も友達といえば、異性の友達ばかりで、女友達は自分から距離をおいてしまうため全くいません。

ただ、私には小学1年生の頃から、サコと言う女友達がいます。もう一人の自分です。彼女は私をリコと呼び、私は彼女をサコと呼び、いつも独り言のようにサコと対話しています。自分でしゃべっている自覚はありますが、会話を止める事はできず、自分がしゃべり疲れたりすると自然に会話をしなくなります。サコは私を励ましてくれたり、怒ったりします。小学校の頃はもっとたくさんのもう一人の自分がいましたが、今は主にサコで、たまに、ヒロシという男性とも対話する事があります。自分が独り言をしゃべっているという自覚はあるので、人に聞かれない所で対話しています。私が悩んでいる時にサコがでてくる事が多いです。サコに相談をもちかけると、自分一人では思いつかなかった様な考えで問題を解決してくれたり、私よりもずっと冷静で、悩んでいる私をいい方向に導いてくれるのです。こうやってメールをしていたら、サコがでてきたがっています。あーやっぱり今しゃべっちゃいました。サコも自分自身なんだという自覚はあるのに、自分一人で悩んでいる時には考えもつかなかった事をサコの言葉として会話するとすらすらといい答えがでるのは何故なのでしょうか。今も時々呼吸が苦しくなったり胸が重く立っていられなかったりして、こんな気持ちを楽にして欲しいと思う事があります。昔から比べてひどくはないので気持ちの持ちようで治せるものならと思っていますが、これも病気なのでしょうか。今、職場で全くそんなそぶりのない私は、たくさんの仕事を任されてこなしています。人に教える事が好きで、指導する役をする事が多いですが、雑談は苦手でいつも人と線を引いている感じです。もっと明るくなりたいと思っています。こんな私は病気でしょうか? 治療とかは必要なのでしょうか。教えて下さい。

 

林: サコはイマジナリーコンパニオン(Imagenary Companion: IC。イマジナリーフレンドと呼ぶ場合もあります)です。

サコも自分自身なんだという自覚はあるのに、自分一人で悩んでいる時には考えもつかなかった事をサコの言葉として会話するとすらすらといい答えがでる

この体験は、解離性同一性障害に移行しかかっている状態であるとみることができます。このように、ICが交代人格に移行する(それは解離性同一性障害への移行ということと同義です)というパータンは時おり見られます。

こんな私は病気でしょうか? 治療とかは必要なのでしょうか。

治療は必要です。ICや解離性同一性障害そのものを病的として解消を目指すというより、それらが生まれた背景としての精神状態(このメールの前半に書かれているような状態を指しています)の治療が必要です。

(2021.9.5.)

05. 9月 2021 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 解離性障害