【4306】酷い生活をしている友人が初期のうつ病と診断された

Q: 旧友(高校時の友達。現在50代)が4年前に会社で追い込まれ自主退職をしました。それから4年間、親の遺産で食いつなぎ現在に至ります。その4年間、来年で5年目ですが一度も面接も履歴書も送らず、口ではヤバイヤバイと繰り返すだけ。3年前から、精神科へ一度診察へ行けと言っていましたが、のらりくらりを躱して行かず。社会復帰に向けて私の会社の手伝いをさせるようになったのですが、あまりにも酷いので半強制で診察へ。酷いとは、買い物ができない、人の会話を理解できない、新しい人や新しい場所が苦手、一つの指示をするのが限界、単純作業でも通常の人の3−5倍の時間が掛かる、人と話しても寝てしまう、ストーブは点けた後に火柱が上がっていても気が付かず、灯油を入れてもキャップは開いたまま、水道は出たまま、電気は点いたまま。。。などボケ老人と思えるほど毎日が酷い感じです。いろいろとネットで調べると、理解できない、集中力がないのはアスペルガーと書いてありました。しかし、精神科の先生の診断は初期のうつ病だそうです。来週、再検査と言ってます。ここまでくると生活にも支障が有るような気もしますし、就職は完全に無理かなと。長くなりましたが、そのような人を健常者として迎い入れましたが、診察が病人となった場合、どの様に接すればよろしいのでしょうか? もちろん、火事にされても困りますし、大怪我や大事件を起こされても困ります。 独身で家族や親は居ませんが、自宅療養がいいのでしょうか。自分でもなぜみんなと同じことができないのか不思議なようです。 ついつい、普通の人同様に叱ってしまいます。どうしても仕事なので、ミスのリカバリーに多くの時間と人が必要なので。うつ病やアスペルガーの人向けの仕事や事故や事件を回避する仕事など、どのように付き合えばよろしいでしょうか?

 
林: 50代男性が約5年間にわたり無為な生活を続けており、しかも

買い物ができない、人の会話を理解できない、新しい人や新しい場所が苦手、一つの指示をするのが限界、単純作業でも通常の人の3−5倍の時間が掛かる、人と話しても寝てしまう、ストーブは点けた後に火柱が上がっていても気が付かず、灯油を入れてもキャップは開いたまま、水道は出たまま、電気は点いたまま。。。など

という状態は、初診で告げられた初期のうつ病も考えられなくはないですが、他の病気、たとえば初期の認知症や、何らかの身体疾患に伴う精神症状の可能性も十分に考えられます。
こういう状態になる前のこの方の状態が記されていないので不明ですが、いま挙げた「可能性」は、50歳頃まで会社に特に問題なく勤務していたと仮定しての回答です。「会社で追い込まれて自主退職」と記されていますが、その具体的な経緯も診断のためには重要な情報です。このような場合、「会社で追い込まれた」ことが現在の状態の原因であると考えられがちですが、実際には会社に勤務している段階ですでに何らかの精神的問題があって(それは退職の少し前からかもしれませんし、何年も前からかもしれません)その結果として退職することになったのであって、したがって「会社で追い込まれた」のは原因ではなく結果であるというのもしばしばあることです。

なお、

いろいろとネットで調べると、

病気についてネットで調べることは不適切ですので勧められません。

理解できない、集中力がないのはアスペルガーと書いてありました。

それはそのサイトがいい加減であったか、質問者の読み方が雑であったかのどちらかでしょう。アスペルガーで「理解できない、集中できない」ことがありうるのは事実ですが、「理解できない、集中できない」ことをもって、アスペルガーの可能性を疑うのは飛躍が過ぎており、誤りといっていいレベルです。

来週、再検査と言ってます。

検査の結果を待つのが現段階で適切な姿勢です。

うつ病やアスペルガーの人向けの仕事や事故や事件を回避する仕事など、どのように付き合えばよろしいでしょうか?

それを考えるのは時期尚早です。そもそもこの方がうつ病かどうかわかりません。アスペルガーの可能性を考えるに至っては根拠があまりに薄弱です。

(2021.5.5.)

05. 5月 2021 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A