【4043】本の内容を先読みする男の声

Q: 30代男性です。統合失調症と診断され通院中です。この病気に典型的な幻聴と被害妄想が以前ありましたが、今はかなりよくなったと思ってます。ひとつ、主治医に話していない不思議な体験があります。本を読んでいると、男の声で、自分が追っかけた文字の内容を音読するんです。たとえば10行目を読んでたとすると、11行目を先読みするんです。それが聞こえたとき自分はまず、男がなんか言ってる~と思うんですけど、読み進めていくと、あれ今きいたの本の内容だ!って気づくんです。これって、僕が読んでる本のページをどこかから盗撮してるとしか考えられないですよね?  そうしてそれを音読して小型のマイクで僕に読み聞かせているってことで、でもカメラもマイクも探したけど見つかりません。超小型なのか、それとも僕の脳に埋め込まれているんでしょうか。それもすごいなと思うのですが、でもどうしてわざわざ僕に読み聞かせるのかが不思議です。ハイテクだということを見せつけようとしてるんでしょうか?

 

林: これは読書反響と呼ばれる、統合失調症に特徴的な、ただし比較的まれな症状です。カメラもマイクも存在しません。ましてやあなたの脳に埋め込まれているわけでもありません。

男の声で、自分が追っかけた文字の内容を音読するんです。

その「男の声」は、あなたが呼んだ内容が、外界から来ていると感じられるようになったものです。(統合失調症の幻聴とはすべて、もともとは本人から発したものが外界からの声として感じられるようになったものにほかなりません)。但しそこには時間の逆転があります。(1)自分が読み、(2)後にそれが声になって聞こえているに違いないのですが、本人の主観としては(1)と(2)の順序が逆転し、声が聞こえ、後に自分が読むという形の体験になっています。これは人間が文字を読む時の脳内の認知過程を反映しているもので、読字とは、
第一に文字の知覚、
第二にその知覚した文字の意味の把握
という二段階から成っているところ、読書反響では、第一段階で脳内に生まれた過程が直ちに外部に定位され、しかる後に第二段階が自覚されるため、主観としては自分が読むより先に声が読むと体験されていると考えられます。

なお、読書反響とほぼ同じメカニズムで、しかしこの時間の逆転が起きていないのが【4044】読んだ文章などが頭の中で声になって響く という症状です。

(2020.5.5)

05. 5月 2020 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症