【4013】職場の悪口は幻聴でしょうか

Q: 40代女性です。
職場で、女性管理職やチームリーダーに聞こえよがしに悪口を言われることが2年近く続き、食欲もなくなり、休みがちになりました。
しかし、悪口を言われているのは幻聴の場合もあると知り、この悪口は本当のものなのか幻聴なのか、悩んでいます。
このままでは苦しく、なんとか状況を改善したいので、判断する方法がありましたら、教えてください。

そもそも職場で複数の方から日常的に聞こえよがしに悪口を言われる、というのが、ふつうありえないことだと思えるので、頭で否定してきたのですが、あながち否定できない経緯もあります。

今の組織の大半は、元部長に集められた人間です。人選の方針は「自分と同じ性格の人」か「おとなしくて几帳面そうな人」を選ぶ、と元部長はおっしゃっていました。私は後者と思われたそうです。彼女は、その後栄転しました。
その後、元部長のお気に入りだった社員(前者の性格タイプ)を中心に、毎日のように誰かの悪口を大声で言うことが増えました。言われた社員には、休みがちとなり、転勤・休職となった方がいます。が、このころの悪口の大半は当人のいない時に限定されていました。
また、悪口を言うグループのうち2名から別々に、「私を敵に回すと怖いのよ」と、過去にうつになり退職された社員の話を聞かされたこともあります。思わずその人がどうなったのか心配になって聞いてみたのですが、得意そうに悪い奴をやっつけたような言い方をするので、驚きました。
あるとき、当時の上司に「彼女達に、大声で悪口を言わず、直接おだやかに話していただけるよう働きかけられないか」と相談したところ、そのまま伝えられてしまい、面と向かって「ふつうは、直接悪口言えないのが人間らしさじゃない」と言われました。

そのころから、彼女達が大声で誰かの悪口を言う中で、わたしに関するものが増えてきたように思えてきました。最初の固有名詞がわかる部分は小声で聞き取れず、だんだん大声になり、そこで内容から明らかに私とわかるという状況です。
しかし、いくら興奮していても、会話の内容の大半が当人に聞き取れる場所で、日常的に悪口を繰り返すわけはないだろうと思ってしまいます。当初は、いちばん地位の高い方のみが言うだけでしたが、徐々に、ひとりまたひとりと悪口を言う人間が増えてきましたが、これも、常識的に考えて普通はありえない気がします。
悪口の内容は、私の仕事の進める方向など、直接指摘していただいたほうが希望を反映できて助かる内容が主です。また、質問をしたことを裏読みして怒っていることもあり、仮説に仮説を重ねて「あの人はこう考えている」といったものもあります。言葉は感情的でとても酷い内容ですが、話題的にはささいなことで、直接確認や苦情をおっしゃっても私が傷つくような重大な事柄はなく、というより直接言われたほうが迅速に解決できて両者の得になることばかりなので、やはり聞こえよがしに言うことはありえない、と思ってしまいます。しかし、以前「質問してはいけない」などの不思議なルールを綿々と告げられたことがあるので、彼女達にとっては確認・苦情もいけないことで、よいやり方が悪口を聞かせることなのかもしれないとも思います。

客観的に見て、私が経験不足なので、いろいろ文句を言いたいことがあって当然ですし、ご迷惑をかけている点は申し訳ないと思っています。
上昇志向の強い彼女達の喜ぶように振る舞えばいいだけなのに、今ひとつ具体的にどうすればいいかわからないのも、ふがいないと思います。
でも、毎日のように興奮して、数十分も私の悪口らしいことを大声でまくし立てているのを聞くと、胃がきゅっと痛くなります。それに質問を封じられてしまったので、改善への道を考えつけず、この後もこのままなのかと思うと暗い気持ちになります。
できるだけ平常どおりの態度を、と思いますが、自分でもだんだん表情がこわばってきたのがわかります。
また、周囲の社員の態度もぎこちなくなくなり、今までのような協力をしていただけなくなり、何だか大きな壁ができてきた感じがします。

友人に相談したところ、(そっくりな性格ではあっても)複数の人間が、毎日のように聞こえよがしに悪口を言い続ける、ということは絶対ありえないと言われました。
やはり、この悪口は幻聴なのでしょうか。
それとも、私に関連していると思うことが被害妄想なのでしょうか。
もうひとりで我慢できないので、誰かに相談したいのですが、やはり医療機関で診断していただくべきでしょうか。

 

林: これは幻聴です。質問者がご自分で冷静に分析しておられる通り、複数の点から考えて「あり得ない」というレベルの悪口であることがそう判断できる大きな理由です。ただし、「普通はあり得ない」というだけでは、逆に言えば「稀にはあり得る」ということになりますので、この質問者の職場では例外的にこのような悪口が言われているという可能性が論理的には残ることになります。しかし、質問者が体験している「悪口」が、「悪口」と感知されている過程、すなわち、

彼女達が大声で誰かの悪口を言う中で、わたしに関するものが増えてきたように思えてきました。最初の固有名詞がわかる部分は小声で聞き取れず、だんだん大声になり、そこで内容から明らかに私とわかる

このようなパターンは、統合失調症の方に幻聴という症状が体験されるパターンに一致しています。このことを合わせれば、質問者が体験している「悪口」は幻聴であると結論できます。

なお質問者は、

ふつうありえないことだと思えるので、頭で否定してきたのですが、あながち否定できない経緯もあります。

のように、これもまた冷静に状況を分析されています。その分析も論理的に正しいと言えますが、そもそも完璧な人間など存在しない以上、他人から悪口を言われる可能性というものは誰にもありますから、「あながち否定できない経緯もある」ことは、この悪口が事実であると判断する根拠にはなりません。理論的には根拠になり得るとしても、その悪口が幻聴であるという上記の判断を覆すものには到底なりません。

やはり、この悪口は幻聴なのでしょうか。
それとも、私に関連していると思うことが被害妄想なのでしょうか。

この二つの文章に関しては、「それとも」で結ぶことはできません。「それとも」という接続詞は、第一の文と第二の文のどちらかが正しいのかを問うものですが、この二つの文章は両方が正しいです。周囲の人の言葉を「自分に関連している」「自分に対する悪意あるメッセージである」と感知するのが統合失調症の症状として典型的な体験で、それは被害妄想と呼ぶこともできますし、幻聴と呼ぶこともできます。 (幻聴という言葉の厳密な定義としては、「実際にはない声が聞こえる」ですので、「他人が実際に話している内容を自分に関連づけて被害的に解釈する」は幻聴ではなく関係念慮または妄想知覚ということになります。しかしこれは厳密な用語法としてはそうであるというにすぎず、実際にはその二つは区別し難いことが多いものです)

以上の通り、質問者は統合失調症の初期または前駆期にあると言えますので、

誰かに相談したいのですが、やはり医療機関で診断していただくべきでしょうか。

そのようにすることをお勧めします。
現時点では質問者には病識がある程度ありますが、このまま治療を受けないと病識が失われていって受診しようという意図が失われ、さらに悪化の一途をたどることも予想されます。早めに精神科を受診してください。

(2020.4.5.)

05. 4月 2020 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症 タグ: , , |