【3990】まるで憑依のように、意味不明な言葉をたくさん言うなどしてしまう

Q: 33歳女性です。20歳くらいから統合失調症と診断されて通院しています。
5年前から、外国語の様な意味不明な言葉をたくさん言ってしまい止まらない症状や、口が歪んだり、般若の様な形相になる症状が続いています。このような症状はそれ以前にはありませんでした。
他にも手が爪を立てるような形になったり、怪獣が吠えるような息の吐き方をしたり、まるで別の何かが憑依しているようでその症状が出ている時は凄く苦痛です。

幻覚、幻聴の症状は普段はないです。
入院の直前にはありました。今まで2度入院しましたが、どちらも直前に幻聴がありました。

意味不明の言葉が出てから入院した時は入院中はそのような症状が出ず、退院後また現れるようになりました。
この症状は一体何なのでしょうか?

また17歳の頃に初めて精神科にかかったのですが、その当時は強迫性障害と診断され、統合失調症とは診断されませんでした。 17歳の頃にイマジナリーフレンドを作り、比較的最近まで話しかけるなどの行為をしていましたが今はしていません。
その作ってしまった別の存在と今起きている症状は関連しているでしょうか?
それとも統合失調症が悪化しているということなのでしょうか?

 

林:
外国語の様な意味不明な言葉をたくさん言ってしまい止まらない症状や、口が歪んだり、般若の様な形相になる症状が続いています。

これは統合失調症の悪化でしょう。大きくまとめれば自我障害という症状の現れです。本来は(健常であれば)自分でコントロールできるのが当然である精神機能、具体的には、意志、感情、運動などが、自分のコントロールから離れてしまうという症状です。この症状は、ケースによって様々な主観的体験になります。「なんとなく自分が自分でないような感じ」すなわち離人も軽い自我障害として現れますし、「あやつられている」というさせられ体験、「(悪魔などが)自分にのりうつった」という憑依体験、さらには「幻聴の命令にしたがって行動してしまう」という症状も自我障害の現れとみることができます。林の奥幻聴か独語か の解説は、ほぼそのままこの【3990】のケースの 「外国語の様な意味不明な言葉をたくさん言ってしまい止まらない」 という体験にあてはまります。

他にも手が爪を立てるような形になったり、怪獣が吠えるような息の吐き方をしたり、まるで別の何かが憑依しているようで

これらも同様に説明できる、自我障害の現れです。

自我障害は統合失調症の基本障害ともいうべき症状です。

17歳の頃にイマジナリーフレンドを作り、・・・ その作ってしまった別の存在と今起きている症状は関連しているでしょうか?

関連はないでしょう。

それとも統合失調症が悪化しているということなのでしょうか?

そう考えるのが妥当です。

なお、

口が歪んだり、般若の様な形相になる症状が続いています。

顔についてのこの症状は、これだけですと抗精神病薬の副作用としてのジストニアの可能性を考える必要がありますが(というより、純粋にこれだけの症状が出たのあれば、そう考えるほうが普通です)、この【3990】のケースの他の症状とあわせれば、副作用よりは上記説明の症状の可能性の方がはるかに高いです。

(2020.2.5.)

05. 2月 2020 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症