【3944】幻聴に恋をしてしまいました

Q: 20代女性です。
具体的な時期はわからないですが、8~9年幻聴が聴こえます。
10代のころの同級生男子の声で、私のことを、かわいい・好きだ・つきあって、など、ほかにもあるのですが好意を伝えてきます。

思い返せば私の今までの人生で、その同級生らとすごした3年間はとても楽しいものでした。毎日が充実していました。
しかしそれ以降の生活は非常につまらなく、昔の友人らとは疎遠になり、職場の人間関係にもなじめずバイトを転々としています。
そのため私は頻繁に「あの3年間に戻りたい」と切望するようになっていました。もちろんそんなことはできません、思えばこのような感情が原因ではないかと私は思います。

話を戻しますが、長い間その幻聴は無視してきました。
それで日常生活は問題なく送れていましたし、奇行・自傷もありません。
しかしあるきっかけがあり、もう耐えられなくなって、うかつにも幻聴との対話を試みてしまいました。
最初は「私の深層心理からくる幻ならば消えてくれ」と懇願していたのですが、幻聴は幻ではないと主張し、話がこじれた結果、私は、「幻ではないならばなぜ会いにきてくれないの?私ずっとあなたが好きだったのに」と言ってしまいました。
自分でも気づいてなかったのですが、私は、同級生のふりをした幻聴のことを好きになっていたのです。今まで私のことをかわいいと言ってくれる人などいなかった、むしろ容姿を貶められることが多かったので、心の拠り所にしていたようです。我ながら非常に気持ちが悪いです。
この対話以降急激に体調が悪くなり、集中力の低下と食欲不振がみられるので、ついに精神科を受診しました。
今は薬で治療中です。

私の希望としてはこの統合失調症を治療し、人間関係の改善・容姿の改善をして、いつまでも過去にとらわれず、前向きに出会いを求め、温かい家庭を持ちたいのですが、それは可能ですか?
幻聴が聴こえなくなれば(聴こえなくしたいです)、それは心の拠り所の喪失にあたってしまうので、なんだかそれはそれでより悪い方向へ進みそうな気がします。

 

林: この【3944】の幻聴は、始まり方が不明で、また、そのころの他の症状の有無も不明ですので、統合失調症の症状か否かの判定は難しいです。

私の希望としてはこの統合失調症を治療し、

と書かれており、ここでいきなり統合失調症という病名が出てきていますが、これは、医師から統合失調症と診断されて治療を受けているのか、それとも、医師から診断名は言われていないけれども、幻聴があるから統合失調症であろうと質問者が推定しているのかが不明です。
そして、

私の希望としてはこの統合失調症を治療し、人間関係の改善・容姿の改善をして、いつまでも過去にとらわれず、前向きに出会いを求め、温かい家庭を持ちたいのですが、それは可能ですか?

については、一般論としてはもちろん可能です。けれども繰り返しますが、この【3944】については不明な点が多いです。

統合失調症の幻聴は被害妄想的な内容が圧倒的に多いですが、ケースによっては、病気の経過につれて、本人にとって快い内容に変わることがあります。この場合、症状が好転したという見方と、全く逆に、幻聴が存在するという病的な状態に安住してしまったのだから症状は悪化したという見方があります。
この【3944】については、先にお書きした通り、幻聴の始まり方が不明ですので、最初は被害妄想的であったのか、それとも最初から快い内容であったのかが不明です。最初から快い内容であったとすると、統合失調症としてはかなり非典型的で、統合失調症という診断は疑わしいです。イマジナリーコンパニオン(Imaginary Companion; IC) に類縁のものである可能性も考慮する必要があるでしょう。ICについては【3037】頭の中に友達がいます【3530】肉体関係もあるICが消えたらと思うととても不安です などをご参照ください。

(2019.12.5.)

05. 12月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 解離性障害