【4002】警察の力を借りて入院させた息子は、すぐに落ち着きました

Q: 20歳になる息子についてご相談します。私は50代の母親です。息子は2浪の末、滑り止めと本人が思っていた大学にやっと一つ受かり、入学後、一人で暮らし始めました。去年の夏頃から、「五郎丸歩が僕に会いに来た(本人もラグビー部に所属していました)けど、絶対に内緒にしておいて」とか、「知った人にあった」という回数がぐうぜんにしてもあまりにも多くなりました。 成績も高校の途中から下がる一方で、二浪の頃には惨憺たる模試の成績が続き「何かの間違いだ」「うそだ」「塾の講師や高校の教師のせいだ」というようになりました。 ついに「お前(母親である私のこと)、みんなに僕のことをチクってるだろう!みんな僕のこと知っているじゃないか!」と私に暴力をふるいました。最後の入試の5ヶ月前のことです。心配のあまり精神科の受診を勧めましたが、火に油を注ぐ状態で。やむなく私だけ相談に行きセレネースの水薬を、一週間のませました。 それでかどうか、しばらくは落ち着いていましたが、一人ごとや空笑い、私への暴言はつづきました。父親には自然に接していましたし、睡眠も食欲も問題はなかったので受験期の不安定さかなと思う時もあったのですが。 大学生活が始まったらだんだん落ち着いて来るかなと思いましたが、どうも授業に出ている様子もなく、かといって家に引きこもっている訳でもなくふらふらしていたようです。夜通し一人でカラオケにいったりし始めていたようです。 入学の1ヶ月後、「凶悪犯の○○、指名手配中のあいつを今日見たから警察に通報する!」と本人から電話がはいりました。実際に通報したようです。 又息子が入っているアパートのオーナーから息子の部屋から夜中に怒鳴り声がしたり、壁をたたく音がしたり、ステレオが大きく響くと言って、傍の住人から苦情が来ている、一度様子を見に来てくれないかと連絡が入りました。おなじころ長男からも「弟の様子はただごとではない。話がつながらない。急に激高する。あんなヤツではなかったはずだ。心配だ」という電話がはいりました。
そこで息子の下宿を尋ねてみると、散らかし放題。新しい部屋だったはずなのに壁にへこみができていました。多めに置いておいたお金もほぼ使い切っており、私が行かなければどうしたのだろうと思いました。息子は部屋で私が片付けるのを見ていましたが、何がきっけかなのか急に怒りだし、かつてない激しさで私に暴力をふるい出しました。おまえのせいだ!俺の何が悪いというのだ!とだんだんエスカレートします。私は絶対に一緒に帰って病院につれて行こうと思っていましたがそれも出来るような状態ではありませんでした。「今すぐ殴るのをやめないと警察に通報するよ」といっても勢いがやまないのでしかも私を殴りながらもとても苦しそうで、息子を何とか助けたいと警察を呼びました。いったん警察がきてチェーンを切って中にはいると落ち着いて接したようです(私は離れたところにいました)パトカーにもおとなしく乗り込みました。警察の人の中には「警察を呼ぶほどのことなかったんじゃないですか?興奮もしてないし、きちんと対応できていますよ」といわれました。

でもその後、措置入院と決まりました。統合失調症と診断されました。  今入院して3週間がたちます。あのまま放置しておくよりは、絶対によかったあの時の判断は間違ってなかったとは思うのです。  面会に行くとただ私に謝り「お母さんは元気なの?」と気遣います父親には早く退院して勉強したいと言っています。正直不憫でなりません。  保護室にいますが、出入りは自由になりました。静かに穏やかにしているようで「この子がこんなところにおるのは明らかに誤診だ」と私におっしゃる患者さんもいます。  でもちょっとゆっくり話をしてみると「お母さんがこんなところに閉じこめたの?」「僕はいつもあとちょっとのところで人に足をひっぱられるな」「退院請求をしているからひょっとしたら近々でられるかもしれない。そうなったら僕も絶対に殴らないけど、お母さんも二度と通報しないでね」などと言います。恨んでいるという感じではありませんが、私が警察と組んでここに入れている(ある意味事実ですが)と思っているようです。病気だからではなく母親を殴ったから入院していると思っています。両親の面会は喜んでいて、父親に「顔を見るとほっとするよ」と言うそうです。 いわゆる病識がでてくるのでしょうか。このままでは妄想が確信になってしまわないかと懸念します。いずれは故郷の病院に転院を考えていますが、私たちがしばらくサポートしてお薬の管理をした方がいいでしょうか。今の主治医は「本人が自覚して飲み続けるようにしたい」とおっしゃっています。 又、私もこの診断名には納得していますが先生からみても息子は統合失調症とお考えになりますか?

 

林: 典型的な統合失調症です。このように、入院をきっかけに嘘のように落ち着くことは時にあることです。それは必ずしも症状が著しく軽快したからとは限りません。まだまだ慎重な経過観察が必要です。

私たちがしばらくサポートしてお薬の管理をした方がいいでしょうか。

その通りです。 今回、警察の手を介しての入院となってしまったのは残念なことですが、とにかくは入院できて治療が開始できたのはとてもよかったと思います。

あのまま放置しておくよりは、絶対によかったあの時の判断は間違ってなかったとは思うのです。

その通りです。入院しなければもっと悲惨なことになっていたでしょう。そして退院後も、薬を飲まなければまた同じ状態になることはほぼ確実です。今回の経験を生かして、適切な治療を続けてください。

(2020.3.5.)

05. 3月 2020 by Hayashi
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