【4003】ヤクザの嫌がらせだったのか、それとも症状だったのか
Q: 統合失調症で通院中の33歳男性です。5年程前の出来事についての質問です。思い出すのも忌まわしい事なのですが当時家業(文具店)を手伝っていたところ商品の問い合わせの電話を受けました。何気なく電話にでるとぶっきらぼうに「***(商品名)有るか」と高圧的に問われたので手伝い始めたばかりの僕は客商売にもかかわらず喧嘩口調(脅かす感じ)で応対してしまいました。後から聞いた話によりますとそれはヤクザだったとの事です(近所に事務所がある)
そんなこともあって店番にも出なかったのですが店の脇にある表玄関を出てすぐ近くの自販機で缶ジュースを買って家に帰ろうとしたところ背後から聞いた事のないキツイ口調で「調子にのんなよおまえ」と攻撃されて、こめかみにバシっと衝撃を受けました。振り返るとそれらしい人物が携帯電話で話すフリをしながら8メートル程となりの衣類店に入って行くところでした。パッと見ただけですが状況的に向かい側の道路に車を駐車しておいて道路を横切って衣類店に入って行くところだったのでしょう。事実はどうであれ(車で待ち構えていたのか、偶然出くわしたのか)例のヤクザが携帯電話を使って仕返しをしたように僕は思うのです(携帯電話の相手に怒鳴ったというかたちで)(僕に向かって罵ったことははっきりわかる)それからまもなく幻聴が出ておかしくなって入院しました。そして退院後、そのヤクザが傷害事件をおこして逮捕された事を知りました。
最近になってこちらのサイトを拝見させていただいて今まで知らなかった事を知るようになって少し疑問をもつようになりました。もしかしたら統合失調症になったきっかけと思っていた僕の体験した出来事は統合失調症の初発症状だったのかもということです。聞いた実物と僕の見たヤクザの背丈は似ていますが電話で話しただけで直接の面識がないので一致しているというだけです。ただそれ以後の幻聴や幻覚は病気の症状なんだとなんとなく分かるのですがこの事に関しては事実が把握できません。あれはヤクザの強烈なイヤガラセだったのでしょうか。僕が見たのは一体なんなのだったでしょうか。
林: もちろん事実に勝るものはありませんから、質問者が体験した「嫌がらせ」が客観的な事実であったか否かが回答のためには最も重要です。「最も重要」というより、回答のためにはそれがすべてと言うべきでしょう。
しかしもはや客観的には事実か否かを確認する手段がないとすれば、「わからない」が唯一の答えになります。
ただしこの件を離れた一般論とすれば、精神疾患の発症については、発症のきっかけや原因と思っていたことが(本人がそのように思っていたり、周囲がそのように思っていたことが)、すでに発症後の初期症状だったということはとてもよくあることです。
たとえば、「いじめがきっかけで・・・」というのはよく聞く話ですが、その一部(「一部」が「ごく一部」か「大部分」かは別として)は、いじめと感じたこと自体が統合失調症の被害妄想であったというのは否定し難い事実です。
その観点からすると、この【4003】の、
もしかしたら統合失調症になったきっかけと思っていた僕の体験した出来事は統合失調症の初発症状だったのかもということです。
という質問者の推定は、十分に可能性があるものです。
聞いた実物と僕の見たヤクザの背丈は似ていますが電話で話しただけで直接の面識がないので一致しているというだけです。
このことも被害妄想であったという判断に傾けますが、さらには、最初の電話のヤクザ(と思われる人物。仮にその時点で質問者が統合失調症を発症していたとすれば、そもそもこの電話の内容が、質問者の認識とは違っていたかもしれません)が、質問者を見てそれが前の電話の相手だと知ることができるかというのも疑問です。
また、
例のヤクザが携帯電話を使って仕返しをしたように僕は思うのです(携帯電話の相手に怒鳴ったというかたちで)(僕に向かって罵ったことははっきりわかる)
このように、「自分に向けられたことがはっきりわかる」と、客観的な根拠なく確信するのは、統合失調症にしばしば見られる症状でもあります。
さらに言えば、
そして退院後、そのヤクザが傷害事件をおこして逮捕された事を知りました。
その逮捕された人物が質問者とかかわった人物であるとなぜわかったかも疑問です。
以上の通り、事実が不明であるとはいえ、
もしかしたら統合失調症になったきっかけと思っていた僕の体験した出来事は統合失調症の初発症状だったのかもということです。
その可能性は十分にあると思います。
(2020.3.5.)