【2457】事実無根のことで夫の私を激しく責めたりする妻は解離性同一性障害でしょうか

Q: 28歳、男です。同い年の私の妻に関してご意見を聞かせて頂きたくメールを差し上げました。

正式な診断書を見せてもらったことはありませんが、私は妻から「自分は解離性同一性障害がある。」と言われてきました。また実際に色々な人格と遭遇しました。妻本人からは、自称ですが、抑鬱、過食、不安神経症、パニック障害、強迫観念などがある、とも聞いていました。

いま思えば向こう見ずなことでしたが、私は妻の力になりたく思い続け、交際を継続し、結婚に踏み切りました。
交際している時は定期的に薬を服用することもなかったようで、別の人格が出てくることに加えて妻自身も他人に対して当たりが強すぎる所があり、他人に多くを求めすぎる傾向がありました。他人との摩擦が多すぎたのです。また、物事が思い通りにいかなかったり、何かショックを受けたりするとすぐに死をほのめかしたり、実際にオーバードーズをしたり、電車に飛び込もうという素振りを見せたりもしていました。
他にも、妻の母親がすでに亡くなっていることや、小さいころから妻は父親に身体的、性的に虐待されてきたとか、実家では愛を与えられずに育った、というようなことも聞きました。

ですがあるとき突然、子供の頃に眠ってしまった自分自身、と名乗る人格に遭遇しました。名前こそ妻のものでしたが今までと一人称も違うし、私はまだやや懐疑的でした。ですが、その人格は妻自身を含めたどの人格よりも、素直で社会性がありました。他人とそこまで摩擦を起こすことなく生活できたのです。
他にも「●●も〇〇も△△も□□も(←人格の名前)みんな今は自分の中で眠っているんだよ。」というような手紙ももらいました。
やがて結婚して定期的に薬を服用させると、ほぼ常にその状態になりました。私は「この人格が妻の生まれ持った性格なのかもしれない。」と思っていました。
ただ妻の得意な分野の話になると、素直な人格の様ではなく饒舌で自分の能力を誇るような話し方にはなりました。
その時期私たちは、私の実家で両親と妹と同居していたのですが、私の両親も妹も妻の病気を知った上で適度に配慮をしながらも家族として受けいれてくれていました。妻も、私抜きで私の両親と遊びに行ったりと、本当の親以上に懐いていたように見えました。妻は「家族団らんとか家族の絆とか食卓で笑い合うこととか初めてだ。毎日が新鮮だよ。」という内容の手紙もくれました。
その後しばらくはそこまで問題もなく円満に生活を送っていましたが、妻は早く子供が欲しかったようで私に強く子供を求めてきました。私は正直まだ危険だと思っていましたし、そう妻に伝えましたがそのあまりの落ち込み様に見るに見かねて、避妊をしないことにしてしまいました。
そして妊娠が発覚した後、今までずっと定期的に服用させ続けた薬を中断して一週間くらいすると、やはり妻はまた他人に対して当たりが厳しくなりました。特に私に対しての上から目線、弱点の指摘、私が妻の思い通りにならないときの怒りが目立ちました。
やがて妻は「夫に強姦された。モラハラを受けた。精神的な痛めつけをうけた。」と言って妻の実家へ帰ってしまいました。もちろん誓って私はそんなことをしていません。
他にも、私の給料の上限を全く無視して、妻の妹に借金をしてまでモノを買い込んだりしました。不必要なものを買った、とまでは言いませんが、明らかに私の給料の上限は無視しています。妻が妻の妹に借金をしていたことも私は知りませんでした。
「私は夫として、親としてあなたに義務を果たして欲しいだけです。お金が足りないなら借金ではなく、何故転職を考えないのですか?そもそもお金がないのなら子供を作るべきではないんじゃないですか?子供が不憫です。」
とは、妻からのメールです。一人称も話し方も変わってしまいました。
後で素直な人格の時のことを聞くと「好かれようとして無理して演技をしていた。」と言われました。

妻の実家は、証拠もないのに妻を盲目的に信じて私に対して強く批判を繰り返しました。
妻の父親は、妻と妻の妹と共に私の実家に怒鳴り込んできて「ウチの娘に何してくれる。アイツを殺してやろうかと思った。」と言っていたそうです。私自身も「お前の実家で喚き散らしてお前が帰れなくしてやるから覚悟しとけ。」と電話で言われました。
その一方で妻の病に関しては全くと言っていい程無関心なのです。常々「俺はアイツの病気に関しては何も知らねぇ。」「俺が看病してるわけじゃねぇ。」と言っていました。
実際にオーバードーズをしたり、閉鎖病棟に入ったりしているにも関わらず無関心なのです。
妻の妹は多少なり病識はあるものの通院を進めたりすることはせず、回復や改善して欲しいというような意志は見られません。
妻自身も「母親になったことで病気は治った。私は正常です。」と言い張り、今後一切病院に行くつもりはないそうです。誰に言われたかわかりませんが「病院に行く必要はないと診断されました。」とかも言っていました。
私の両親に関しても「あなたたち(父と母)に私の何がわかるんですか?私のことを知っているのは私の家族です。」と言っていました。
メールの文章も未だに少し支離滅裂で意味がよくわからない部分も多々あります。

最後まで力になりたかったのですが、妻との離婚は残念ながら止むを得ないと思っています。ですが子供に関してはそうはいかないと思っています。私は子供を何とかして引き取り、私が育てたいと強く思っています。

長くなりましたが、お聞きしたいのは次の二つです。
(1)妻の病名は何でしょうか。
(2)妻の実家のような家庭で心身共に健全に赤ちゃんを育てていくのは、私にはとても危険に思えます。妻と妻の家庭についての先生のお考えも聞かせて頂ければ幸いです。

林先生のご意見をお聞かせ頂ければとても嬉しく思います。
どうぞ宜しくお願い致します。

 
林: 奥様は境界性パーソナリティ障害か解離性同一性障害、もしくはその両方でしょう。
ここに書かれている奥様の状態は、全体として、境界性パーソナリティ障害として典型的といえます。

抑鬱、過食、不安神経症、パニック障害、強迫観念などがある、とも聞いていました。

というふうに自称するのも、境界性パーソナリティ障害では稀ではありません。確かに表面的にはこれらに一致する症状が見られることがあるからです。
一方、解離性同一性障害の特徴も確かにあります。境界性パーソナリティ障害では、解離の症状を伴うことがしばしばありますから、奥様がこのどちらの診断名にあたるかを追求することにはあまり意味がないでしょう。「境界性パーソナリティ障害の特徴を持っている。解離性同一性障害の症状もある」が、最も的確な言い方になると思います。これがご質問

(1)妻の病名は何でしょうか。

の答えになります。

(2)妻の実家のような家庭で心身共に健全に赤ちゃんを育てていくのは、私にはとても危険に思えます。

私もそう思います。

(2013.10.5.)

05. 10月 2013 by Hayashi
カテゴリー: 境界性人格障害, 精神科Q&A