【3805】職場に新採用した男性に妄想があるとわかった

Q: 私は50代男性です。
最近、知人の紹介で採用した50代の男性を経理担当としました。
彼は以前は会計士事務所で勤務していたようですが、何故退職したのかは不明です。彼のことを仮でA君と呼びます。
A君の仕事はテキパキとしますし、間違いが非常に少なく良好。 但し、人と接するのが少し苦手なようでした。初めての人と接すると、 少しドモリがでたり、ほんの少し手が震えたりしているのを見た事があります。また歩いている姿勢がいつも前かがみで視線はいつも下です。

最初に問題が起きたのは入社して2年位した時でした。携帯電話を流行りのスマートフォンに買い替えしたと大変喜んでおりました。が、数日後のこと。スマートフォンが一人で動く。勝手にデータ更新した。 夫婦でのやりとり(LINE)が覗かれている。誰かが自分のスマートフォンを遠隔で操作して夫婦の会話を聞かれた。妻のスマートフォンの中からカード情報情報も抜き取られた可能性がある。と私に訴えてきました。

あり得ない事を気にしないように説得しようとしたら、A君の頭の中には既に犯人が浮かんでいるようで、同じ職場にいる営業担当のHだと、それに加担して事務員M子も共犯者だと完全に言い切りました。
また付け加えて、A君のオフィス机の周辺には盗聴器もしくは盗撮器が仕掛けられていると断言し、会社はこのような不祥事を許してはいけない。
私たち夫婦が受けた精神的苦痛、スマートフォンを断念して売却した損失をどうしてくれるのですか?と私に詰め寄ってきたのです。

事実、何も証拠が見つからなかったら良いと思い、本当に盗聴器等を探す業者にオフィス内全部調べさせました。が何も出てきませんでした。
A君の机の上のパソコンや電話から本人以外の他人の指紋すら出てきませんでした。私からすると「ほらね!無いだろ」だったのです。

それから数日間、A君は大人しく仕事をしていましたが、今度は机上のパソコン(会社所有)が勝手に動く、自分が作った資料のデータが消えていると言い出しました。またもHとM子の仕業だと完全にキレて、M子が座っている場所へ猛烈に走り寄り、大声で「俺のパソコンを勝手にいじるな、お前らがやっている事を俺が分かってないと思ってんのか?」と恫喝しました。

この事件の後、社内の雰囲気が相当悪いのです。M子はA君を訴えると言ってきます。私は無理矢理にA君をクリニックへ行かせましたが、診断書には「妄想症候群」と書いてありました。

貴重な戦力では有りますが、このA君を解雇すべきか。残して心のケアに務めるべきか大変悩んでおります。

長くなりましたが、宜しかったら良きアドバイスを頂戴できますでしょうか?
宜しくお願い申し上げます。

 

林: Aさんの妄想は統合失調症や妄想性障害にかなり典型的なものです。診断書の「妄想症候群」は、妄想を有する何らかの精神疾患という程度の意味と思われ、公式に診断名をつけるとすれば統合失調症か妄想性障害でしょう。精神科での薬物療法が必須です。

貴重な戦力では有りますが、このA君を解雇すべきか。残して心のケアに務めるべきか大変悩んでおります。

その悩みをお持ちになるのは早すぎます。まずは治療を受けていただき、どこまで回復するかを見定めてから次のことを考えるべきです。
もっとも、これまでの症状からみて、仕事を普通に続けながら治療を受けるのは難しいと思います。ご本人にとっても周囲にとってもそれは過大な精神的負担になるでしょう。いったんは仕事を休んで治療に専念していただくのがいいでしょう。

(2019.3.5.)

05. 3月 2019 by Hayashi
カテゴリー: 妄想性障害, 精神科Q&A, 統合失調症