【2456】統合失調症の急性期はおさまったが、魂が抜けたようになってしまった

Q: 40代半ばの主人の症状について質問です。4ヶ月前ごろから幻聴が聞こえる(おもにメロディーや文言)といいだし、それから1ヶ月たつと頭に受信機がインプラントされていて、誰かにコントロールされているというようなことを言い始めました。電波を浴びせられて体がしびれるとか、職場の人に陥れられそうになっているなどと、妄想がひどくなりました。症状としては統合失調症の幻聴・被害妄想に思え、あれこれあったのち、ようやく病院にいき、入院しました。医者は年齢からいっても「統合失調症」とはいえないし、あまりに急に悪化していることを考えると一過性の分裂症のようなこといい、はっきりとした病名は与えられませんでした。ただ、入院後、しばらくはリスパダール、その後のどか乾くといったせいかインヴェガ錠3mgに薬が変わりました。飲み始めたら数日で、幻聴は消えました。相変わらず、「鍵はかけたか?」「火の元は確認したか」などど、心配性な部分はあるにせよ、妄想も落ち着いてきたので、3週間で退院できました。しばらくしてから職場にいけるようにもなったのですが、その後の症状が問題です。 いまも薬はずっとインヴェガ錠3mgだけなのですが、眠れない、体が熱い、便秘などからはじまり、とにかく一番困るのは「集中できない」ということらしいです。何かを読んでいても、字をおっているにすぎず、なにも頭にはいってこないそうです。職場でもごまかしているだけで、実質的には仕事になっていないそうです。家でも帰宅後、ずっとソファで寝ているだけで、なにもする気力がおきないそうです。休日もどこにもいかず、家でぼーっとしているにすぎません。 せっかく早くに退院して職場にも復帰できたにもかかわらず、症状としては今度は「自律神経失調症」のような感じに見受けられ、よくなったとはとても言える状況ではありません。 主治医はとりあえずはもうしばらく様子をみるといっているらしいですが、このまま放っておいて改善されるとはとても思えません。
 お伺いしたいのは、病名こそ「統合失調症」ではありませんが、症状も対処に使った薬も統合失調症の急性期に使う薬です。ですので、主人の病気を「統合失調症」と考えると、現在の状況は陰性期の症状ととらえて、このまま様子をみるべきなのでしょうか? 本人は薬の副作用の気がするので、できれば薬は止めたいようなこともいいます。ただ、それは再発のリスクも高いと聞いているので、絶対にやめたほうがいいといいきかせて、本人もそれは納得しています。薬を変えて多少は改善されるのであれば、それは選択肢にはなるとはおもうのですが、薬の副作用ではないということであれば、意味はないと思います。躁状態になる薬をつかうこともあるようですが、高血圧の薬も併用していたり、もともと肝臓・腎臓にのう胞があったりと、体が強くない分、これ以上いろいろな薬を飲みたくないという気持ちも強いようです。 あまり薬を増やさず、魂の抜けてしまったような主人を、なんとかもとにもどしてあげる方法はありますでしょうか?ご意見を伺いたく、どうぞよろしくお願いいたします。

 
林: まず、病名は統合失調症に間違いないでしょう。

医者は年齢からいっても「統合失調症」とはいえないし、あまりに急に悪化していることを考えると一過性の分裂症のようなこといい、はっきりとした病名は与えられませんでした。

とのことですが、不可解な説明です。統合失調症が若い年齢で発病することが多いこと自体は事実ですが、だからといって中年以後に発病しないというわけではありません。発症年齢は統合失調症の診断を否定する根拠にはなりません。そしてこの【2456】の症状は、統合失調症としてかなり典型的ですから、「中年発症の統合失調症」の典型例ということになります。(メールに書かれているもの以外には体の病気はないこと、これまで飲んでいるのは高血圧の薬だけであることを前提としています)

そしてご質問のポイントですが、

現在の状況は陰性期の症状ととらえて、このまま様子をみるべきなのでしょうか?

上記、「陰性期」という用語が適切かどうかはともかく、今の状態は陰性症状が目立っていると言っていいでしょう。但し同時に薬の副作用が重なっている可能性もあります。これは統合失調症の急性期がおさまった後にしばしば起こることで、統合失調症そのものの症状と、薬の副作用のどちらが大きいのか、厳密には判断する方法はありません。したがって、

薬を変えて多少は改善されるのであれば、それは選択肢にはなるとはおもう

という質問者のお考えはもっともですし、

本人は薬の副作用の気がするので、できれば薬は止めたいようなこともいいます。

というご本人の気持ちももっともですし、
さらに、

(薬をかえても、今の症状が) 薬の副作用ではないということであれば、意味はないと思います。

という質問者の見解ももっともです。

これでは答えになりませんが、ここまではあくまで「厳密には」または「理論的には」そうだということです。つまり、先にお書きしたように、統合失調症そのものの症状と、薬の副作用のどちらが大きいのか、厳密には判断する方法はないということです。

実際には、統合失調症の症状の可能性のほうが相当に高いです。
そう判断できる理由は、今の状態としてメールに記されている内容は、「意欲が出ない」「集中できない」と要約することができ、このように要約してしまうと、症状か服用か全く区別がつきませんが、このメールには「意欲が出ない」「集中できない」の具体的内容が記載されおり、その内容を見ると、副作用の可能性は低く、症状の可能性が相当に高いという結論を導くことができます。現在の薬の量がインヴェガ錠3mgと少量であることも、副作用の可能性が低いという判断に傾ける事実です。
統合失調症の急性期がおさまった後に、この【2356】のような状態が表面化することは少なからずあります。そしてこのとき、これは薬の副作用に違いないとご本人やご家族が決めつけて薬をやめたり減らしたりして、統合失調症が再び悪化することは非常によくあることです。

したがって結論としては、質問者がおっしゃっているように、

それ(薬をやめること)は再発のリスクも高いと聞いているので、絶対にやめたほうがいいといいきかせて、

は、正しい対応といえます。
ただ質問者が一つだけ間違っていることがあります。これです。

このまま放っておいて改善されるとはとても思えません。

その判断には根拠がありません。根拠がないことは冷静にお考えになれば明らかだと思います。

なお、薬の副作用の可能性は低いといってもゼロではない以上、

薬を変えて多少は改善されるのであれば、それは選択肢にはなるとはおもう

という考え方は理論的には正しいといえます。薬物療法の本には、このような場合に、薬を変えるという選択肢があることは明記されています。
しかし、この【2356】のケースはまだその時期ではないでしょう。
せっかく合っている薬を変えることのリスク(しかも少量で落ち着いていますから、かなり合っている薬であるといえます)、不十分とはいえまがりなりにも出勤はできていること、もしこの量でこれだけの副作用が出ているのだとしたら、他の薬に変えることによる改善はあまり期待できないことなどがその理由です。
ですから、

とりあえずはもうしばらく様子をみる

という主治医の先生の方針は、曖昧なようですが、現時点では最も適切であるといえます。

(2013.10.5.)

05. 10月 2013 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 薬の副作用