【3747】都合よく記憶がなくなる病気なんてありますか

Q: いろいろなサイトを見てみましたが、症状と書かれていることが漠然としていて良くわからず、こちらのサイトでご相談出来ることを知りメールさせていただいております。

当方、53歳、女性です。
知人の奥様、40代半ばの女性についての相談です。

2年ほど前に同級で学生時代にお付き合いのあった方に30年振りに同窓会で再会し、メールのやりとりや、数回お会いすることがありました。

「メールを見ました、不貞は犯罪です、すぐに電話を下さい」と、真夜中に彼の奥様からメールをいただいたのが一年半ほど前になります。その時は名前も書いてありましたし、ご主人の方に確認したところアドレスも本人にものでした。こちらから返信はしていません。

その後度々嫌がらせを受けています。

ご主人から本人に止めるよう伝えてもらいましたが、本人は覚えがないそうです。逆に「あんた私のことを疑っているのか」と言われたそうです。

はじめは彼女が嘘をついているのだと思っていましたが、先日、逆に自分が嫌がらせをされているのだと警察に被害届を出したと聞き、何か異常なのではないかと思い始めました。ご主人の話では、実際に彼女を装った卑劣な嫌がらせのメールが彼らの知り合いに来ていたそうです。

私に来るメールの内容からして、無関係な第三者は考えられません。いつも私が彼に送ったメールを盗み見していないとわからないような内容です。(娘の宗教についての相談などをしていましたが、他には誰にも話していないことなので) 最初の数度のメール以外は、フリーメールから来ているため、断言は出来ないのですが、奥様に頼まれたという人に会ったこともありますので、奥様がやっているのは確かだと思います。(私が地元に戻った時にあとをつけられ、「奥様からの伝言です。二度と会わないようしてください」と言われました。あとをつけたりして申し訳ないが、自分は彼女の後輩で、以前から弱みを握られていて頼まれたら断れないと言っていました) 彼女が嫌がらせされたというのもご自身の演技ではないかと思っています。

「愛していても秘密はある」というドラマで、過去に殺人を犯した二重人格の主人公が、別人格が自分に嫌がらせをするが自分だと気がつかないという話がありましたが、そのようなことは現実に起こり得る話でしょうか?またそのような精神に変調をきたしている方が、家族にばれずに、人を使ったり、たくさんのアドレスを使ったり、色々と手の込んだことをするなど、知能が高くないとできないようなことができるものでしょうか?

奥様は以前よりカウンセリングを受けているとは聞いています。
彼とは3度目の結婚で、それぞれの結婚からの連れ子の、三つ違いの思春期の娘さんが二人います。結婚直後より束縛が尋常でなくなったとのことです。保護者会の飲み会でもご主人と話すお母さんを睨みつけてくるそうです。(お二人で小学生のクラブチームでボランティアをされています)

彼は2度目の結婚ですが、再婚後に人が変わってしまったと周囲の人は言っています。以前はいつも友達に囲まれた明るい人気者でしたが、奥様への愚痴ばかりのようです。ですがその割には奥様との暮らしを大事にしているようで、奥様の望む通りに暮らしているようです。私は奥様には会ったこともなく、噂を聞くだけなのですが、よく知る人達は結婚前から反対で、今も皆さん早く離婚したらいいと思っているそうですが、本人はそうは思わないようです。俗に言う依存関係なのではないかとも思います。

近くにいる人たちは、奥様が公衆の面前でご主人に対して暴力を振るったり、泣き叫んでいるのを何度も目撃しているそうです。警察沙汰になったこともあるそうで、かなり攻撃的な一面があるようです。攻撃的な一面とは対照的に、クラブの子供の卒業試合では、大勢の人がいる中、涙をボロボロ流したり、頑張った子どもがいると感動して泣いたり、いい年をした大人のすることとは思えないこともするそうです。

仕事は臨時採用で私立の先生をしていると聞いていますが、クビにならないところを見ると、仕事はふつうにこなしているのだと思います。ご主人絡みのこと以外はまともに暮らしているようですが、私だけでなく、ご主人の交友関係については執着していて、会社の携帯もいつも監視していて、知らない女性の名前があると、毎回彼の同級生に電話をかけて、知っているかと尋ねているそうです。私のことを尋ねたり、中傷したりもしていて、心配して連絡をくれた人も数人います。

ご主人のご実家にも相談しましたが、奥様とは再婚前から全くうまくいかなかったそうで、ほぼ絶縁しているのこと。孫(彼の前妻との実子)に父親と合わせなかったり、お金を盗まれたりしたこともあり、関わるとさらに嫌がらせをしてくるから、無視して欲しいと泣かれました。また、ご実家の話では、警察沙汰になった時に初めて彼女の父親と顔を合わせたけど、この親にしてこの子ありと思ったとのことで、奥様の父親も世間的にはおかしな人なのかもしれません。奥様の母親は早くに亡くなっていて、死別か離婚かわかりませんが、父親は再婚して一人っ子の彼女を差し置いて、再婚相手の連れ子に家を渡している、そんな状況なので実の娘である奥様とは全く上手くいっていないとのことでした。

奥様の書かれているブログも見てみましたが、現実の彼女とは全く違い、読んでいてこちらが恥ずかしくなるほど、教育者としての熱意、友情の大切さ、ご主人への尊敬の念、家族愛などが、たくさんの絵文字を使って書かれています。正直、中年女性の書く文章ではありませんでした。周囲の人たちの反応も同じでした。

ヒステリーや嫉妬心だけでしたら、ご主人が女性関係にはもともと奔放な人なのでわかる気もするのですが、自分のしていることをやっていないと嘘をついているのではなく、本当に記憶にないのだとすると、どのような病気が考えられるでしょうか?嘘だとするにはあまりにも嘘が自然な気がします。(彼が信じたくないあまりに見抜けない、もしくは、疑っていてもこちらにはそうは言いたくないという可能性もありますが)

もし一定のことだけに記憶がなくなるということがあり得るのなら、ひたすら無視していた方が良いのでしょうか、それとも何か揺るぎない証拠を出して(と言っても何もないのですが)、治療を受けるようお勧めするべきでしょうか?

最近は頻度は減っていますが、だんだん嫌がらせの内容が意味不明なものになってきました。自分は本当はご主人本人だと書いて私を罵倒して来たり、逆に会いたいと書いて来たり、第三者として不当なイジメに耐えながら夫に尽くしている奥様が可哀想だ、奥様を大切にしろ、などと、私ではなくご主人に宛てた内容を書いて来たり、本人としてご主人の愛と可愛い娘に囲まれて、今の自分がいかに幸せなのかをとうとうと書いて来たりします。

私自身は当時大きな悩みを抱えていたこともあり、一時は自分がおかしくなってしまうほど悩みましたが、今は悩みも一応解決し、奥様のメールにも慣れてしまったのかあまり気にせずにいます。もう一年以上彼には会っていませんし、かなり遠くに住んでいるため特に直接何かされそうで怖いということもないので、全て無視しています。嫌がらせされた報告を以前は時々ご主人にしていましたが、彼を苦しませるだけのようで何の解決にもならないので、それもやめました。ただ、自分の知らないところで同級生に電話されたりするのは、やはり恥ずかしく、自分の人間関係にも支障をきたすので、やめてほしいとは思っています。

安易な素人考えですが、ドラマを見て、もしかしたら重大な精神疾患なのかもしれない、だとしたら、このまま無視していたら、病状も嫌がらせも更に酷くなってしまったりしないかと、心配になりご相談させて頂きました。

少しでも詳しく状況がわかった方が良いかと思いましたので、長々となってしまいましたが、専門家のご意見を伺えましたら幸いです。

よろしくお願いいたします。

 

林:
自分のしていることをやっていないと嘘をついているのではなく、本当に記憶にないのだとすると、

そうであれば、これは解離性健忘です。解離性健忘として、かなり典型的なケースです。

解離性健忘は、心理的な原因による健忘(記憶障害)です。解離性健忘とは、ごく大雑把に言えば、「思い出したくないことが思い出せなくなる」という症状です。
この【3747】のメールの件名は

都合よく記憶がなくなる病気なんてありますか?

ですが、その質問に端的に答えるとすれば、「あります。それは解離性健忘です」ということになります。
このようにお答えすると、解離性健忘とは、自分勝手なずるい症状という印象を持たれるかもしれませんが、「思い出したくないことが思い出せなくなる」ことの例としては、虐待などのトラウマを挙げることができます。というより、精神科で実際に治療や支援の対象になる解離性健忘はそうした例のほうが多いといえます。トラウマの記憶と、この【3747】のケースの記憶を同じ名前でくくることには違和感があると思われますが、メカニズムとしてはどちらも「思い出したくないことが思い出せなくなる」と共通しています。
ただし、虐待のようなトラウマの場合は、どんな人でも解離性健忘になりうると言えますが、この【3747】のケースのような解離性健忘は、性格が非常に未熟な人の場合がほとんどです。このメールに書かれている、

攻撃的な一面とは対照的に、クラブの子供の卒業試合では、大勢の人がいる中、涙をボロボロ流したり、頑張った子どもがいると感動して泣いたり、いい年をした大人のすることとは思えないこともするそうです。

奥様の書かれているブログも見てみましたが、現実の彼女とは全く違い、読んでいてこちらが恥ずかしくなるほど、教育者としての熱意、友情の大切さ、ご主人への尊敬の念、家族愛などが、たくさんの絵文字を使って書かれています。正直、中年女性の書く文章ではありませんでした。

のような特徴は、まさに解離性健忘を起こしやすい性格です。その意味でもこの【3747】はかなり典型的なケースと言えます。

(2018.11.5.)

05. 11月 2018 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 虚言, 解離性障害