【3574】華美で、仕事もできる人にみえていた女性  

Q: 私は20代後半の女性です。
私の現在の職場に、理解に苦しむ挙動をする20代前半の女性Mがいます。
私たちは、介護職なのですが、その女性は5年前から現在の施設で勤務していました。私は家庭の事情もあり3年前に他の施設から今の施設に移りました。今までのキャリアや資格を考慮され、私は彼女とはセクションが違うので週に2,3回しかかかわることがないのですがその施設の管理職として勤務し、Mの上の立場として働いてきました。
その当時は偶然年齢層の近い女性があまりいなかったので、仲良くできたらいいな、と思い、話をするようになりました。
Mは、化粧映えのするいわゆる美人で、言動や態度を見ていると、非常にしっかりしており、自信に満ち溢れており仕事のできるかっこいい女性という印象で、結婚を控えた彼氏も職場内におり、何一つ不自由がないように見えました。
ところが、彼女と時々話をしたりするうちに、話し終わった後にものすごく 疲れた気分になっていることが多いことに気づきました。二人で話しているときのみ、「私のほうが上よ」「私だったらもっとスマートに出来るけど」「こんなことさえしらないの」というような私を挑発するような、こき下ろすような言動が繰り返され、それを適当にかわしていました。あまり真面目に相手をしないようにしていたのですが、相手が私に負けたと思うような流れになると、機嫌が悪くなります。連日その状態で相手をするのに疲れてしまい、私はいつの間にか少しづつ距離を置くようにし、仕事の話しかしないようにしました。見ていると、Mはほかの人には一切そのような挑発的な態度をとりませんので、仲の良いほかの同僚にそのようなことを言われたことがあるか聞いてみたのですが、「まさか、考えすぎじゃないの」と言われる状態でした。
また、理由はわかりませんが、Mは施設長に非常に気に入られており、何をやっても許されるような雰囲気がありました。例えば、朝のミーティングなどでも彼女が誤ったことを意見しても反論することが許されないような雰囲気になります。研究会のプレゼンテーションで練習でも、彼女のスライドがボロボロで見られたものではなかったのですが、施設長が「さすがですね」と言って驚いたことがありました。
そのためか、施設内では女王様のように振る舞い、本来なら自分でやるべき仕事をずっと年配のスタッフに押し付けてお礼も一言も言わなかったり、上司が仕事のことで指導しても「不当に注意された」と言って怒るばかりなので、誰も何も言わなくなっていました。
ある日、私の仕事の中で施設の業績やスタッフの資格などを資料にまとめる必要があったため、調べていたところ、Mには業績が一つもなく、資格も最低限のものしかないことを知り、驚きました。実は、いままで施設長や本人から介護関係の論文や文章をたくさん書いており多忙で、様々な資格を持っているという話を聞かされていたからです。化けの皮がはがれていくというはこういうことで、Mと直接かかわらない人からは、彼女の態度や周りの扱いから優秀な女性に見えているということだとわかりましたが、気にしないようにしていました。
そうこうしているうちに彼女が突然、連絡なしにシフトに来なくなりました。話を聞くと、うつ状態になっているとのことで、精神科医から1か月の休職の診断書が出ました。うつ病の原因について彼女が言うには、「自分の考えがあったのに、不当に注意され、やり方を変えさせられた」「施設の勤務のシステムが気に入らない」「若いスタッフが言うことを聞かないのがいる」など、どれをとっても日常業務の中で生じうる摩擦で、通常であればうつ状態になるとは考えにくいもので、決定的なものがありませんでした。そして、原因の一つが私になっていて、実は一度Mはだれにも相談せず、自己判断で抱え込んでいた案件があり、それに私が手遅れになって大被害がでる一歩手前で気づき、彼女に指摘し、事なきを得たことがありました。それがものすごく腹が立ったとのことで、実は彼氏が私のところに「Mをいじめている」といって怒鳴り込んできたことがありました。
結局1か月の休職中、私が出ない職場の飲み会にだけ参加していました。休職終了後、条件付けで少しずつ勤務を戻すと言い出しました。「夜勤と土日の勤務はしない」「うつ状態で静かに過ごしたいから個室を与えてほしい」「仕事中にPHSは持たない」「午前は10時からの勤務にしてほしい」などでした。その条件の下で、調子が良いときだけ来たりしながら過ごし始めて半年経過しました。いつまでたっても夜勤もしないし、10時勤務開始で、調子悪いと言って16時ごろに帰っていきます。Mの勤務のフォローのためにスタッフに負担がかかっているのに、「あなたたちのせいでこうなったんだから当然でしょ」という態度で、あいさつの一言もありません。
半年経過し、複合要因で鬱になったと言っていたはずがいつの間にか話がすり替わり、Mとその彼氏は施設長や上司に、私がMを不当に叱責して鬱になったと言いはじめており悪者のようにされております。私が彼女に注意したのは例の1件のみで、不当に彼女だけ繰り返し責めているということはありませんでした。そのことに関し、施設長や上司にヒアリングをされましたが、不当に叱責した事実はないことを説明し、ほかのスタッフ達も証明してくれたため、誤解が解けました。また、私を、Mと関わることのないセクションに異動させてほしいと言っているということも聞きました。何のためにやっているのかわかりませんが、特に彼氏は最近ノイローゼのようになり、私を付け回してほかの職員に私と何を話したかきいたり、私の交友関係やスケジュールを調べたりしていることも耳にしました。
先生の本を拝読させていただきましたが、これはやはり擬態うつ病なのでしょうか。それとも単に私を排除したいがために施設全体を巻き込んで騒ぎを起こしているのでしょうか?
施設としても彼女の言いなりになっており、施設長も腫れ物を扱うように彼女に接しており、一向に解決に向かわず、スタッフにも彼女に対する不満が鬱積し始めております。

 

林: この女性Mさんは、自己愛性パーソナリティ障害でしょう。かなり典型的と言っていいと思います。虚言も伴っているとみていいでしょう。

これはやはり擬態うつ病なのでしょうか。

Mさんが自分をうつ病であると言っているのであれば、それは擬態うつ病です。
パーソナリティ障害の人は、しばしば自分をうつ病であると主張し、うつ病としての対応を求めることがあります。医師からうつ病と診断されることもあります。この【3574】はその一つの典型的なケースです。

それとも単に私を排除したいがために施設全体を巻き込んで騒ぎを起こしているのでしょうか?

擬態うつ病であることと「私を排除したいがために施設全体を巻き込んで騒ぎを起こしている」ことは両立しますので、「それとも」という形の質問は成り立ちません。

(2017.11.5.)

05. 11月 2017 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 擬態うつ病, 精神科Q&A, 虚言