【3571】外出時にブレーカーをおとす同僚

Q: 私は50代女性です。同僚の40歳、独身の女性についてご相談いたします。もともと冗談が通じにくい人ですが、仕事は手早く、人の悪口も言わず、感じのいい女性です。 彼女は一人暮らしです。1年ほど前、「自分が音をたてると、上の階の人が床をふみならすため、部屋ではテレビを消し、本を読んだりして音を立てずに暮らしている」と言いました。私は、彼女の気のせいというよりも統合失調症の前兆かもしれないと気になっていました。

1ヶ月ほど前、彼女は「外出するときはブレーカーを落としている。コンセントにカーテンがかかっていると火事になりそうで怖いから、使用時以外は抜いて、冷蔵庫も冬は使わずコンセントを抜いているからブレーカーをおとしても大丈夫だ。友達は火事にはならないと言うけど、コンセントを抜かないと安心できない。自分は強迫神経症かもしれない。」と言いました。

同時期、上司が保険屋さんからメモ帳をもらった時に、上司に食って掛かったことがあります。上司がもらったものを総務の彼女の机の上に置いたら彼女が「もらっても使わない物はもらわないで断ってくれと何度も言っているのに、またもらってきた」と怒り出し、怒りが収まらないので私のところに愚痴りに来ました。総務ですから、もらい物の整理は彼女の仕事です。私が「メモ帳がたくさんたまったら私が社員さんに使ってもらうよう配るからもっておいで」と言うとうなづいていましたが、「保険屋さんに断るわけにもいかないしね」と言うと、また真っ赤になって怒り出しました。私は彼女のこだわりが強くなっていると感じました。

通勤の途中で、「鍵をかけたか気になるから戻る」ということも年に数度あります。 タバコの臭いに非常に敏感で、喫煙室で吸っていた人が部屋に入ってくると、喉が腫れて息ができないと言って辛そうです。別の部屋に逃げたり窓をあけて外の空気を吸ったりしてしのいでいます。
薬は漢方薬は飲みますが、一般的な薬はいっさい飲みません。利き過ぎると言います。  会社では回りに迷惑をかけることも少なく、タバコとメモ帳の件以外では穏やかに過ごしています。また、薬を飲まない人なので精神科の薬も飲まないと思います。

彼女は心の病気でしょうか?こだわりが強いだけでしょうか?統合失調症の前兆という私の見方は間違っていますか? 今よりこだわりがひどくならないか心配しつつ、精神科をすすめることもできず、ただ見守っています。

 

林:
1年ほど前、「自分が音をたてると、上の階の人が床をふみならすため、部屋ではテレビを消し、本を読んだりして音を立てずに暮らしている」と言いました。

これは、現実にもあり得ることではありますが、

私は、彼女の気のせいというよりも統合失調症の前兆かもしれないと気になっていました。 

統合失調症という病気がとても多いこと、統合失調症は悪化すると治療開始そのものが難しくなることなどを考えれば、そのように気にされることはご本人のためにも正しい姿勢であると言えます。

1ヶ月ほど前、彼女は「外出するときはブレーカーを落としている。コンセントにカーテンがかかっていると火事になりそうで怖いから、使用時以外は抜いて、冷蔵庫も冬は使わずコンセントを抜いているからブレーカーをおとしても大丈夫だ。友達は火事にはならないと言うけど、コンセントを抜かないと安心できない。自分は強迫神経症かもしれない。」

このブレーカーをめぐる話は、これだけを切り取ってみれば、心配性のやや程度の強いものと解釈できないこともないですが、上記の階上の音のこととあわせれば、統合失調症の症状とみるほうが適切です。つまり、どちらも単独では何とも言えませんが、両方をあわせて統一的に説明するには、統合失調症の発症と考えることが最も合理的ということです。

同時期、上司が保険屋さんからメモ帳をもらった時に、上司に食って掛かったことがあります。上司がもらったものを総務の彼女の机の上に置いたら彼女が「もらっても使わない物はもらわないで断ってくれと何度も言っているのに、またもらってきた」と怒り出し、怒りが収まらないので私のところに愚痴りに来ました。総務ですから、もらい物の整理は彼女の仕事です。私が「メモ帳がたくさんたまったら私が社員さんに使ってもらうよう配るからもっておいで」と言うとうなづいていましたが、「保険屋さんに断るわけにもいかないしね」と言うと、また真っ赤になって怒り出しました。私は彼女のこだわりが強くなっていると感じました。

この三つ目のエピソードが加わり、統合失調症の可能性はさらに高まります。

タバコの臭いに非常に敏感で、喫煙室で吸っていた人が部屋に入ってくると、喉が腫れて息ができないと言って辛そうです。別の部屋に逃げたり窓をあけて外の空気を吸ったりしてしのいでいます。

これもかなり極端な反応であり、病的と言えます。
以上4つのエビソードは、どれも単独では様々な解釈の余地がありますが、すべてあわせれば統合失調症という診断が見えて来ます。

また、薬を飲まない人なので精神科の薬も飲まないと思います。

統合失調症は薬を飲まなければよくなりません。

彼女は心の病気でしょうか?こだわりが強いだけでしょうか?統合失調症の前兆という私の見方は間違っていますか?

間違っていません。彼女には治療が必要です。

今よりこだわりがひどくならないか心配しつつ、精神科をすすめることもできず、ただ見守っています。

今すぐストレートに精神科をすすめてもおそらくうまくいかないでしょう。どこかのタイミングで受診を促すというのが現実的な方策です。

(2017.11.5.)

05. 11月 2017 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A