【3572】減薬を始めて4日目あたりから幻覚が始まりました。認知症だろうと言われました
Q: 母(60代前半)が抗うつ薬、抗不安薬の減薬をするために入院しました。入院当初は薬を飲みたいと薬のことばかり言ってましたが、減薬を始めて4日目あたりから幻覚、幻聴が始まりました。
昨日は隣のおばあさんが突き落とされた。次に殺されるのは自分だ。あの3人がそう話してた。や、毒ガスが部屋に撒かれた。や、火炙りに今夜されるなど、でしたが、最近は言わなくなってきたかと思うとそわそわ落ち着かない様子で一日中歩き回り、表情も乏しくあまり喋らなくなりました。
初め、CTでは異常なく鬱でもありません。とりあえず薬を抜いてからもう一度検査 をと言われ入院しましたが、幻覚等が始まったり、長谷川式などで、点数が18や、 21点と低かったため認知症だろうと言われ、他の病院でスペクトという検査や、ドパミンの検査をして結果待ちです。家族としては、薬の離脱症状や、急な入院でのストレスからのせん妄ではないか、と思うのですが、やはり認知症なのでしょう か…。
今までたくさんの種類の薬を試し、少しでも合わないと変えてもらっていて、最終 的には1日に頓服としてソラナックス0.8.をMAX6錠.デパスを4錠、朝昼晩、寝る前に レキソタン5ミリ、寝る前に睡眠薬とリフレックス37.5飲んでいました。
あまりにも依存して、恐ろしくなったので病院をかえ、朝昼晩レキソタン2ミリと アルプラゼラムを頓服として5〜6時間空けてのむようにし、寝る前はリフレックス 30と、睡眠薬とセロクエルを飲んでいました。 また、ここ4ヶ月ほどまともに食事も取れず、栄養剤も処方され飲んでいました。
入院当初は、朝昼晩レキソタン2ミリ、寝る前にクエチアピンと睡眠薬をのんでいましたが、1ヶ月経った今、いつのまにか胃腸薬のみになっていました。
ソラナックス等をMAX飲んでいた時期は2カ月程度で、その後転院して1ヶ月ほどが アルプラゼラム等で、その期間は1ヶ月程度で今に至ります。発症時期は今から9ヶ月程前で、3.4ヶ月前に一旦良くなってまたぶり返しました。まとまりのない文章ですが、今わかる範囲で書かせていただきました。
急な断薬のせいではなく、認知症なのか、認知症だとしても、治るタイプなのか、 以前の母に戻れるのか大変気になります。よろしくお願いします。
林:
母(60代前半)が抗うつ薬、抗不安薬の減薬をするために入院しました。
というふうに書き出されていますが、このような場合、そもそもなぜそれらの薬を飲んでいたのか、これまでどのような症状があったのか、など、これ以前の状態についての情報が、回答のためには必要です。しかしここでは一応これ以前には認知症の症状がなかったと仮定しますと(ご家族からみて認知症の症状がなかったとしても、医学的にみて認知症の症状があったということはしばしばあります。したがってここでの仮定は、ご家族からみて認知症の症状がなかったという意味ではなく、医学的にみて認知症の症状がなかったという意味です)、
幻覚等が始まったり、長谷川式などで、点数が18や、 21点と低かったため認知症だろうと言われ、
この判断は不適切です。長谷川式の低得点や、幻覚等の症状は、認知症でなくても十分に出現します。その代表が意識障害で、「減薬したら認知機能が急に低下した」というこの【3572】のケースの認知機能低下からは、第一に考えられるのは離脱によるせん妄です(せん妄は意識障害の一種です)。そして幻覚や妄想も急性に出現していますから、離脱によるせん妄という可能性が最も高いと言えます。認知症の発症であると考えるのは医学的に非常識です。
但し、「認知症だろうと言われ」というのは、ご家族である質問者が医師の言葉をそう受け取ったということにすぎませんので、医師は決して認知症であるなどと思っているわけではなく、せん妄が最も考えられると診断したうえで、念のため認知症の可能性も考慮に入れているというのが真実かもしれません。このとき、冒頭の仮定に話は戻ることになります。すなわち、今回の入院以前から認知症の症状があれば、今の症状も認知症によると考えることは合理的です。
しかしこのメールに書かれている内容だけからすれば、これを認知症と考えるのは不適切で、離脱によるせん妄の可能性のほうがはるかに高いでしょう。そうだとすれば、
以前の母に戻れるのか
戻れると思います。
(2017.11.5.)