【2440】精神病は心の弱い人がなるものなのでしょうか

Q: 20代後半の男性です。中学の終わりから不登校になり、普通高校へ進学はするも、2、3回行った程度で結局行かなくなり、その後通信制高校へ編入しました。しかし通信制高校はほぼ学校に行く機会がなく、編入後は自室に引きこもっていました。 通信制高校在学中に、両親が私の日常の行動がおかしい(大声を出す、暴れる、突然泣き出す等)であることから精神科へ連れていかれ、何度か診察を受けた後、医療保護入院となりました。 それから入院中に、統合失調症と診断されました。投薬治療を受けて症状が安定してきたため、1ヵ月後に退院をしました。 通信制高校卒業後は一年間浪人して、県外の某大学へ進学し、民営の寮に入って生活することになりました。 しかし、私が一年生の11月にその寮で他の寮生とトラブルがあり、その寮に居ることがとても苦痛になってしまいました。そこで寮を出たいと寮長に相談したところ、「そんな理由あるか」と言われて取り合ってもらえませんでした。 それから何度か相談したのですが、ある日寮長がキレて私に暴力をふるい、どうやら親が寮長に私が精神病の薬を飲んでいることを伝えていたらしく、「心が弱いからそんな薬飲んでるんじゃないのか?」「薬に逃げるのか?」「具合悪くなってみろ。俺がぶっ殺してやる」などの暴言を浴びせられました。 それ以降のその寮での生活と私の精神状態は最悪なものでした。毎日、トラブルになった寮生や寮長を殺すことを考えていました。また、すべての寮生が怖くなって自室からは極力出ないように、出るときは深夜帯を選んで他の寮生の気配をうかがいながら出て、即行で用事を済ませてすぐに部屋に戻っていました。寮で出される食事も食堂で人と遭遇するのが怖く、食べませんでした。 それらの事から、日に日に具合が悪くなり、また妄想が激しくなって幻聴も酷くなり、自分がまた完全におかしくなり、もしかしたらとんでもないことを犯すような気がしてきたため、大学を中退して地元へ戻るという寮から出るための最終手段をとりました。 先生にお聞きしたいです。 精神病は心の弱い人がなるものなのでしょうか? 私は、今でもその言葉が頭にはりついていて死にたくなります。

 
林:
先生にお聞きしたいです。 精神病は心の弱い人がなるものなのでしょうか?

いいえ違います。
精神病になるということと、心が強い・弱いということは、全く別の問題です。
(そもそも心が弱いとか強いとかはどのような意味にも解釈できますので、その表現自体に意味がないとも言えるでしょう)

そこで寮を出たいと寮長に相談したところ、「そんな理由あるか」と言われて取り合ってもらえませんでした。 それから何度か相談したのですが、ある日寮長がキレて私に暴力をふるい、どうやら親が寮長に私が精神病の薬を飲んでいることを伝えていたらしく、「心が弱いからそんな薬飲んでるんじゃないのか?」「薬に逃げるのか?」「具合悪くなってみろ。俺がぶっ殺してやる」などの暴言を浴びせられました。

これはあまりといえばあまりにひどい暴言であり、質問者の病状がこれを機に悪化したのは自然です。この事態は明らかに寮長のほうに非があり、それに対して質問者が寮を出なければならなかった、さらにはそのために大学を中退しなければならなかったというのは実に不合理ですが、現実の状況からみてやむを得ない選択肢であったと考えざるを得ません。あらためて治療を立て直して回復を目指してください。おそらくこの【2440】の質問者は、薬への反応性が良好な(つまり、症状に薬がよく効く)タイプの統合失調症と思われますので、あとは周囲の方の理解にさえ恵まれれば、かなり良好な経過が期待できます。今回は残念な事態になってしまいましたが、それは環境に原因があったのであって(つまり、非は寮長にあったのであって)、質問者自身の問題ではありません。気を取り直し希望を持って治療を続けてください。

(2013.9.5.)

05. 9月 2013 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症