【3426】病気がよくなってきたのに、新興宗教の強引な勧誘でまた悪化しそうです
Q: 統合失調症で1年前より療養中の母親(現在61歳)について、私、長女(36歳)から相談させていだたいてもよろしいでしょうか。 母は、私の憶測でしかありませんが、3年前の離婚が原因で発病、1年前に初めて精神科で診察を受け、現在は定期的な診察と、1日1回の薬を習慣として飲めるようになっています。以前の、夜眠ることもなく、食事もままならないまま、妄想・幻覚に振り回されていた日々がうそのように、今は、話すのも行動もスローでハキはないものの、よく眠り、よく食べてくれて少し回復の方向へ進めてるかなぁとほっとしているところです。
相談させていただきたいのは、母の姉と妹(私のおば達)との付き合い方についてです。おば二人は熱心な新興宗教の信者であり、母が発病する前から母を宗教の集会に誘ったりして、母もたまには行ってみたりしていました。母自身は熱心な信者ではなく、姉妹が執拗に勧めるのでお付き合いでたまに顔を出したり、神棚も買ってみたりしていたようです。 おば達は、母が急性期の時はまったく連絡してきませんでした(母が尋ねて行っても居留守、電話してもまったくでない、病気の母との接触をさけていました)。
ところがここにきて、母の病気がよくなる兆しが見えてきたこの時期に、おば達がとても執拗に「本格的な宗教への勧誘」をしてくるので、対処の仕方に大変悩んでいます。 母自身は、知らない人(信者)が家にくるのは恐いし、集会にいくのもいやだと言います。今母は、自分の意見を言葉にしていうのがすごく苦手なので、先日、母の代わりに私が おばに電話してお願いをしました。 「いつも心配してくれてありがとう。母は今、病気の療養中で、病院にも行ってるし、 薬も飲んでます。今は、毎日を安心して静かに過ごすことが一番大事ってお医者さんにも言われてるし、本人にとっては知らない人と接するのがとてもストレスです。だから、今はそっとしておいてもらえないですか?」 こうお願いしたところ、おばに、 「(母に)声が聞こえてたのは、悪霊がついてるからよ。ご先祖様にお祈りするのが悪霊をとることになるし、すごい大事なのに、それをしないとは、お母さんがどうなってもいいのか? 娘のくせに心がないのか?」 とすごい勢いでまくし立てられ、大変驚きました。私は、 「母に声が聞こえてたり、いないはずの人を待っていたりしたのは、この病気の典型的な特徴で、悪霊がとりついてるからではありません。いまは静かに見守ってください」 と言っても、益々興奮し、私の悪口を言い続け、取り付く島がないので電話をこちらから切ってその場は終わりました。
そしたら翌日、なんとおばは母の住むアパートへやってきて、同じ内容(宗教への強烈な勧誘、その宗教を信じないなら恐ろしいことが起きるよといった脅迫まがいの内容、私と弟への悪口)を玄関口で大声でし、無理やり部屋へ入ろうとしましたが、弟が食い止め、さんざんやりとりしましたがまたしても相手の話をまったく聞かないので、扉を強引にしめてそのまま帰ってもらいました。 おばとの激しいやりとりを目の当たりに見た母は、テキメンに不安定になり、よく眠れていた夜も、以来ちょくちょく起きたり、不安そうな症状をしているので心配です。母の数少ない近しい肉親ということもあり、私も、母も、大変後味が悪いのですが、 林先生に伺いたいのは、
1.私は、病気の症状を「悪霊のせい」と決め付け、母を新興宗教へ勧誘しようとするおば達との付き合いが続けば、母の病気が良くならないと考え、おば達とは今後極力接点を持たないようにしようと思っています。先生は、どうお考えでしょうか?
2.母の症状が落ち着いている今、「お母さんの病気は、幻聴が特徴で、声がずっと聴こえてたのは病気が原因なんだよ。今はゆっくり休むのが大事な時期だから、あせらずにね」と私から直接説明したいと思いますが(パートで働きにでようとしたりするので)、病気の説明は、専門家である主治医に相談してからのほうがいいでしょうか?
最近になって母は、「あのときは声が、ああしろ、こうしろって言っててね。恐かった。でも今は聴こえない」と言うので、少し病識が出てきたように思っています。
母自身は、今だに自分が病気なのか(だったのか)も良く分かっていないようです。
私は、家族だけでなく、本人の自覚としても、「声が聞こえていたのは、悪霊のせいではなくて、病気のせい。今はその病気の治療中で、安静にしているのが大事だ」と思って、自分を大事にして欲しいなと心から思っています。
主治医から本人に「どういう病気か?」といった説明はこれまでなく、通院に同伴している 私達家族も統合失調症という病名を最初の診察時に聞いただけ。病気の特徴や家族としての 対処法は、先生のサイト・著書から情報を得ている状態です。(当時は初めての精神科で、なにも分からずすごく不安でした。病気について書かれた簡単な冊子でももらえたならば、どんなにか気持ちが違ったかと今思っています)。
以下に、これまでの経過がもしもご参考になればと思い、書かせていただきました。 林先生のサイト・著書から得た知識、そして患者を抱える家族の体験記など、本当に私達家族を助けていただきました。もし何も知らないまま、ただ日々、どうしようと悩みつづけるだけだったら、きっといまだに母に診察を受けさせられていないのではと思います。そしてとんでもなく悲しいことになっていたのではないかと。。大変な長文になってしまい、申し訳ございません。ご多忙のなか、読んでいただいてありがとうございました。
母のこれまでの経過
背景を説明させていただきますと、娘から見た判断で、母の発病の一番のきっかけは、離婚したことにあると思っています。私の両親は、私が幼少のころから大変不仲でした。それでも長年生活をともにし(完全な家庭内別居状態ですが)、子供(私と弟)も成人し手を離れ、ついに今から3年前に離婚。その後、母は長年生活してきた家を出て、賃貸アパートを借りて私の弟との二人暮しを現在まで営んでいます。 私自身は、大学進学のため高校卒業と同時に自宅から離れているので、離婚前後の両親の様子を見たことはないのですが、自宅に残っていた弟から聞くと、酔った父から母が暴力を振るわれたり、相当な暴言を吐かれたりというのが日常の、かなりすさんだ状況だったそうです。(母は今、この頃の記憶「夫から殴られた等」がすっぽり抜け落ちていて覚えていません)。当時、弟がこれは本格的に危ないというのを察知し、それでも離婚の決断をしぶっていた母を説得・援助して、なんとか離婚にこぎつけたそうです。 そして、離婚してアパートに住み始めた辺りから、私から母へ電話しても全然応答しない、母からも電話がまったくない状況が始まりました。しかも、たまに電話してきたと思ったら、「アパートの1Fに住んでる人から、執拗な嫌がらせを受けている。恐くてしかたがない」という内容の電話。嫌がらせの内容は、
1.母の名を大声で叫び続け中傷する
2.自分の部屋での行動がすべて監視・盗聴されている(なので娘の私に危害が加わるといけないので、なかなか電話できないと言ってました)
3.朝起きて洗面所に立ったとたん、死んだ猫の死体を窓に向かって投げてくる、 などです。
「でも、K(弟)は鈍感なせいか、何も感じてないみたい。自分が感じてることが本当のことなのか、気のせいなのか、分からない」といった内容のことも言っていました。警察にも助けを求めて何度か来てもらったそうです。今思えば、この頃に発病し、若干の病識があったのでしょうが、私がこの病気の知識がまったくなかったことと、実際に母の様子を見ず、電話の話だけ母から聞いていたので、「なにかあったらいけないから、やっぱり警察に相談したほうがいいよ」といった誤ったアドバイスを私がしてしまったりしていた時期でした。 その後、当時のアパートでうまくいかないとのことで、別のアパートへ引越し、母から電話もないし落ち着いた生活を送ってるのかと思っていたら、ある日突然、母が泣きながら電話をしてきて、「Y(私)が死んだっていうから電話してみたの。Yが生きてるんだね。よかったぁ」と言ったり、「お父さん(別れた夫)が死んだって電話、そっちにもかかってきた?」という、かなり演技でもない内容の電話をかけてくるようになりました。不審に思い、私が帰省すると電話すると、必ず帰省の期日の直前になって電話をしてきて「迷惑だし帰ってくるな!」と私に罵声を浴びせたり、逆に、「Yが帰ってくると、Yの命が危ない。だから来なくていい」と心配されたり、とにかく帰省を断られ、仕事をしている私は仕事の都合をつけて心配だから帰省すると言ってるのに、それを断る母に腹を立ててしまって、しばらく母に逢うこともありませんでした。
そして、今から約1年前になりますが、母と同居している弟から電話がかかってきて、 母が興奮して自分ひとりではどうにもできない状態になっているから助けて欲しいとの電話がありました。久しぶりにあった母は、いわゆる気が狂った人のような状況になっていました。具体的には、
1.常に興奮状態。夜眠ることもなく、一人で会話したり、幻覚・幻聴にふりまわされている
2.自分は前のアパートの隣人からレーザー光線でずっと身体を打たれている、それが原因で身体が溶け始めている、だから今すぐ病院に連れて行ってくれと主張する(必ず早朝4時頃に主張してました)
3.自分の行動は逐一監視・盗聴されている、命を狙われているのでどうしようと極度におびえる(外出時はカマを持って歩いていた、スタンガンも購入) 母を病院に連れて行く必要があるのは、ひと目で分かりました。が、本人は恐ろしい力と言葉で完全拒否。私も弟も、いつ母親に切りかかられてもおかしくないという状況の中で、どうしたらいいかまったく分からないときに、林先生のサイトにたどり着き、そういう症状の病気があるんだということを知り、また対処の方向性が見えてどんなに心強かったことか分かりません。
それでもどうやって病院に本人を連れていくか、兄弟で毎日もがいていたところ、たまたま本人が、「自分は大病で死ぬので大病院で診てもらわなければならない」という妄想から、受付の終了した大病院の窓口で、自分の症状(レーザーで打たれて、という内容)を切々と訴えたところ対応してくださった看護士さんが母を精神科へうまいこと誘導してくれて初めての診察となりました。 その後は順調には治療を続けることはできず、母を診察に連れていけなくて兄弟だけで医師に相談したり、薬を飲ませようにも薬と分かって飲ませると胃からはいてしまうので、1・2ヶ月飲み物に混ぜて薬を飲ませ、症状が少しだけ落ち着いてきたくらいから、「夜にお母さんが安心して眠れるようになるよう、先生に相談に行ってみよう」となんとか説得して、診察を2回3回と続けられるようになり、今では1ヶ月1回の通院、毎日リスパダール2mgを1回を自分から服用出来るようになりました。母と弟が同居、私は他府県に住んでいるので、月1回ペースで帰省して逢いに行っています。
林: 経過を詳しく記していただきありがとうございました。お母様は確実に統合失調症だと思います。
ご質問への回答は以下の通りです。
1.私は、病気の症状を「悪霊のせい」と決め付け、母を新興宗教へ勧誘しようとするおば達との付き合いが続けば、母の病気が良くならないと考え、おば達とは今後極力接点を持たないようにしようと思っています。先生は、どうお考えでしょうか?
質問者のおっしゃる通りです。全く異論はありません。
2.母の症状が落ち着いている今、「お母さんの病気は、幻聴が特徴で、声がずっと聴こえてたのは病気が原因なんだよ。今はゆっくり休むのが大事な時期だから、あせらずにね」と私から直接説明したいと思いますが(パートで働きにでようとしたりするので)、病気の説明は、専門家である主治医に相談してからのほうがいいでしょうか?
そのほうがいいでしょう。統合失調症の人にいつ病名を告知するかということは、それ自体が重要な治療の一つで、病状によってはむしろ告知しないほうがいい場合も十分にあり得ます。この【3426】のケースは、メールの記載から読み取れる限りにおいては、病名告知することが適切な時期であるように見えますが、その前に主治医に相談することをお勧めします。病名の告知は、いったんしてしまうと撤回するのが困難ですから、慎重の上にも慎重な姿勢が望まれます。
(2017.5.5.)