【3492】妊娠中からのうつが1年半続いています

Q: 40歳主婦です。二人目妊娠中から、おかしな状態になりました。自分はどうしてしまったのだろうというほど、意味もなく経験したこともないイヤな気分、落ち込み、いたたまれない感覚、など、こうして書いてはいますが、どう表現したらよいか正直わからない感覚が、時々あり、鬱とはっきりはいわれませんでしたが、抗鬱剤を処方されました。効果はよくわかりません。月に半日だけ、とか5日とか気分がよくなり、体がさくさくと動き、絶対治ったと思ったと喜んでいたら、ガクっと起きられないほどの、嫌な気分にまた襲われたりして、を繰り返して、約1年半。医師は2人で、今3人目を捜してます。一度、躁鬱を疑い、そちらの薬も試しましたが、嘔吐してしまい、また抗鬱剤に戻りました。約1年半、二週間単位で、薬の変更、増量を繰り返し、なんらかわりなく、もう死ぬまでこれの繰り返しなのか?と思うと、絶望感でいっぱいです。楽しくない、家事がものすごく負担で面倒くさい、これをどうにかしたいです。二歳前の子供にグズられると、どうしてよいかわからなくなり、投げ出したくなります。ちなみに、悩みは鬱だけで、子供も可愛いし、主人との関係も良好。うつになる理由がありません。今の主治医からは、内因性のものだといわれてます。治すためなら、死んでもいいくらい、治したく、運動もうつにはいいらしいので、やる気はあるのですが、体がうごかず困りはててます。さいきんは、呪われてるのか?とか、霊媒師にでも見てもらったほうがいいのかとか考えてますが、主人に叱られそうだし、インチキにはまるのも嫌なので、それはないと思いますが。このまま、抗鬱剤を手当り次第ダラダラ変更してくのか、別の医師にかかったほうがいいのか、脳の検査でもしたほうがいいのか、運動など、自分の努力で治すべきか、悩んでます、迷ってます。とにかく、子供にしわ寄せしたくないのでどうにかしないと、と焦ってます。嬉しい、楽しい、悲しい、など普通の感情が戻るなら、薬の副作用にも負けずに頑張りたいのです。支離滅裂ですみません。ご助言いただけたら、ありがたいです。

 

林: うつ病です。主治医の先生の説明の通り、内因性うつ病でしょう。現代では「うつ病」という病名は、とても広い範囲にわたって使われていますが、真の病気と言えるのは内因性うつ病です。1997年の開設以来このサイトで私が「うつ病は治ります」と言っているのは、真のうつ病すなわち内因性うつ病を指しています。

うつ病は治ります。しかしこの【3492】は、抗うつ薬で治療を受けているにもかかわらず、全くといっていいほど症状が改善していません。このような場合、理由は大きく分けて2つ考えられます。

(1) 治療が不適切だった
(真の)うつ病は、抗うつ薬を中心とした治療で治ります。但しそれは、「とにかく抗うつ薬を飲めば治る」というものではありません。十分な量の抗うつ薬を、十分な期間飲み続けることが必要です。そうしなければ、抗うつ薬による治療をしているとは言えません。
その観点からこの【3492】のケースを見ますと、

約1年半、二週間単位で、薬の変更、増量を繰り返し、なんらかわりなく、

とのこと、ここには具体的な薬の名前や量の記載がないので、はたして適切な処方の変更・増量であったか否かが判断できません。ただ一般論としては、「抗うつ薬をちょっと飲んで効かないからといって別の抗うつ薬に変える」ことを繰り返すことのため、いつまでたってもうつ病が治らないということはよくあります。

(2) 難治性うつ病である
(真の)うつ病は、抗うつ薬を中心とした治療で治ります。但し、どんな病気にも言えることですが、適切な治療をしてもよくならないケースが存在します。うつ病の場合、どのような条件を満たせば「難治性」と呼ぶかは必ずしも統一されていませんが、「十分な量の抗うつ薬を、十分な期間飲み続け」ても目立った改善がなければ、一般臨床的には難治性と呼んで差し支えないでしょう。
この【3492】のケースがそれにあたるかどうかは、上記(1)の可能性が残る以上不明ですが、仮にこれまで「十分な量の抗うつ薬を、十分な期間飲み続け」てきたとすれば、電気けいれん療法を施行することが適切と言えます。

運動もうつにはいいらしいので、やる気はあるのですが、

運動は、ある程度改善した時期ならともかく、今の状態で積極的に運動することは勧められません。

霊媒師にでも見てもらったほうがいいのかとか考えてますが、

論外です。しかしそれほどまでにお悩みであることは理解できます。
その責は、少なくとも一部は主治医にあると言わざるを得ないでしょう。

今の主治医からは、内因性のものだといわれてます。

内因性うつ病と診断しておきながら、1年半にもわたって抗うつ薬の変更のみで対処するのは、うつ病の治療として適切でないことは明らかです。(但し抗うつ薬の変更が、質問者のおっしゃるように「手当り次第ダラダラ変更」されてきたかどうかは不詳です。計画的に変更されてきているのかもしれません)

嬉しい、楽しい、悲しい、など普通の感情が戻るなら、薬の副作用にも負けずに頑張りたいのです。

この【3492】のケースのうつ病は治るはずです。これまでの治療を見直すとともに(これまでの治療が適切であったかどうかの判断はご本人には難しいでしょう。信頼できる別の医師にかかることをお勧めします)、電気けいれん療法の施行を考える時期です。(そのためにも別医師にかかることが必要でしょう)

(2017.8.5.)

05. 8月 2017 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 病院を変えたい・変えるべきか, 精神科Q&A, 電気けいれん療法