【3390】常連さんが悪化していました (【3378】のその後)
Q:【3378】チャットレディなのですが、常連さんが被害妄想をしていますの質問をした30代女性です。
まず、回答ありがとうございました。
そして、本題ですが、私は先生に謝らなければなりません。
あれから、この精神科Q&Aの記事をさらにいくつか拝読させていただき、もしも統合失調症だった場合、早期に治療しなければならないことを痛感しました。
私は、彼が何か精神的な病気であると察していながらも、彼の妄想を当初から肯定し、時には「組織」の人たちの悪口を彼と一緒になって言うなど、彼に「これは現実に起こっていることだ」と確信させてしまうに十分な態度をとっていました。悪化する病気だとは思っていなかったのです。同じテンションの妄想がずっと続くものと思っていました。
接客上のマナーとしてやっていたことですが、もしかしたら大変間違った対応をしていたかもしれません。
奇しくも今月の初め(先生からの回答が掲載される前)に、二度と来ないと思われた彼が久しぶりにチャットにやってきました。私への誤解が解けたかどうかは不明です。その時の様子を記載します。
「AさんとKさんの、フェイスブックでいつもログインしている時間帯が逆転した。二人はアカウントを交換しあったに違いない」
と言っていました。彼はその二人と全く別のルートで知り合ったと聞いていたので、
「え、なんで?なんのために?そもそもAさんとKさんは知り合いなの?」
と尋ねると
「わからない。彼女たちはフェイスブックでチャットをしていたから(これは彼の妄想だと思います)、それでそこまでの信頼関係を築いた可能性がある。」
と言っていました。
悪化している、と思いました。
それまでの彼の妄想は、「俺を監視するために」「俺を仲間外れにするために」何かが起こった、という類のものでしたが、アカウントを交換したところで何がどうなるわけでもないし、フェイスブックという、自分の趣味趣向や過去の投稿、さらには自分の友達関係までもがわかってしまうサイトのアカウントを交換するなど、ハイリスク・ノーリターンでしかないからです。
彼は、「俺は冷静だ。だからこういうことをされても怒らずに暮らしていけているんだよね。」とユーモラスな口調で言っていました。全然冷静じゃないと思います。また、
「普通の人間なら、いつキレて大暴れしてもおかしくないだろうね。事件ってこうやって起こるんだな〜、はっはっは」
とも言っており、実際は彼自身、我慢の限界なのではないかと危惧しています。
このままいくと、彼だけでなく、彼の身の回りの人が不幸になる可能性が高いと思いました。
私が話を合わせてしまった結果だと思います。社会に向けて謝罪いたします。申し訳ございませんでした。先生がどのような思いで前回の質問に回答くださったかと思うと、身を切られる思いです。
病気について詳しく知ろうと、先生に提示していただいた、病気の自覚のない人たちの書いたQ&Aを読みましたが、この人たちは、多かれ少なかれ、病気の自覚があると思います。でなければ、ここに質問するはずがありません。
しかし、彼は全くの無自覚なのです。多くの患者がそうであるように、治療が困難以前に、病院に行かせること自体がまず困難です。
私が思うに、治療のエキスパート(医者)は多くいても、「治療に行かせるエキスパート」がいないのは、無視することのできない大問題であるように思います。患者だけでなく、周りの人に甚大な迷惑がかかるからです。
質問です
1. 彼に、「精神科や診療内科に通えば、美人女医とお付き合いできるかもよ」と嘘をついてもよろしいでしょうか。
(稚拙な発想で申し訳ありません。精神科医にとって、生理的に嫌悪すべき内容であることは承知しています。しかし彼は、この類のウソに簡単に引っかかります。受診させるに有効な方便であるように思えるのです。盗撮物のAVを、本当に盗撮されていると信じて疑わないような人です。まあこれは、チャットをやっている他の男性全般にもあてはまりますが。)
2. チャットにやってくる多くの男性が「女はこいういうプレイが好きなんだ」 (実際はその男性自身が好きなプレイ)や、「アダルトのチャットレディは、他の客には演技で感じているフリをしているけど、俺には本気。なぜなら俺はテクニシャンだから。俺は演技ならすぐに見抜ける。」という、ありえない妄想をしています。後者に至っては、ほとんど全員がしています。私は、この人たちも病気なんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
3.【1302】私は近日中に殺されるかもしれない。小鳥を飼ったほうがいいでしょうか。を拝読いたしました。
実は私も、右足でマンホールを踏んだら次は左足でマンホールを踏まなければ気がすみません。この質問者様と同様、白線も影も同じであり、影の場合に達成感が薄いのも同じです。子供のころからそうです。
また、何を書いても、どんなテーマであっても、このように長文になってしまいます。
これだけでは判断しかねることと思いますが、【1302】の続きである【1470】において、先生は 「まずメール全体から、漠然とした不気味な感じ、あるいは奇妙にまとまりのない感じが読み取れるかと思います。」
とおっしゃっていたので、あえてお聞きします。私の文章は大丈夫でしょうか。
お手数とは思いますが、よろしくお願いいたします。長文失礼致しました。
林:
私は先生に謝らなければなりません。
いいえ、その必要はありません。理由は以下の回答内容の通りです。
彼の妄想を当初から肯定し、時には「組織」の人たちの悪口を彼と一緒になって言うなど、彼に「これは現実に起こっていることだ」と確信させてしまうに十分な態度をとっていました。悪化する病気だとは思っていなかったのです。同じテンションの妄想がずっと続くものと思っていました。
接客上のマナーとしてやっていたことですが、もしかしたら大変間違った対応をしていたかもしれません。
「大変間違った対応をしていた」は事実です。しかしではどうすればよかったかとなると、質問者とこの「彼」との関係性からみて、大変難しかったと思います。また、仮に質問者が彼の妄想を肯定も否定もしなかったり、あるいは否定したとしても、彼の状態を好転に向かわせることは困難だったでしょう。
悪化している、と思いました。
その通り、悪化しています。
それまでの彼の妄想は、「俺を監視するために」「俺を仲間外れにするために」何かが起こった、という類のものでしたが、アカウントを交換したところで何がどうなるわけでもないし、フェイスブックという、自分の趣味趣向や過去の投稿、さらには自分の友達関係までもがわかってしまうサイトのアカウントを交換するなど、ハイリスク・ノーリターンでしかないからです。
質問者は彼の状態を正確に把握し十分に洞察していることが読み取れます。
このままいくと、彼だけでなく、彼の身の回りの人が不幸になる可能性が高いと思いました。
その通りです。
しかし
私が話を合わせてしまった結果だと思います。
質問者が「話を合わせ」たことと、彼の悪化には因果関係があるとは言えません。合わせても合わせなくても、彼が治療を受けない限り早晩悪化していたでしょう。
社会に向けて謝罪いたします。申し訳ございませんでした。
その必要はありません。
先生がどのような思いで前回の質問に回答くださったかと思うと、身を切られる思いです。
私は事実を回答したまでであり、それ以上でもそれ以下でもありません。質問者が想像しているような「思い」はありません。
病気について詳しく知ろうと、先生に提示していただいた、病気の自覚のない人たちの書いたQ&Aを読みましたが、この人たちは、多かれ少なかれ、病気の自覚があると思います。でなければ、ここに質問するはずがありません。
その通りです。【1541】皆と同じようにipodの手術を受けたいもご参照ください。
しかし、彼は全くの無自覚なのです。多くの患者がそうであるように、治療が困難以前に、病院に行かせること自体がまず困難です。
私が思うに、治療のエキスパート(医者)は多くいても、「治療に行かせるエキスパート」がいないのは、無視することのできない大問題であるように思います。患者だけでなく、周りの人に甚大な迷惑がかかるからです。
深いご指摘だと思います。ご指摘のような状況があることは事実です。そしてこの状況が続いていることの背景には深く複雑な問題があります。具体例の一つとして【1852】統合失調症と思われる人に被害を受けており、警察に相談したところ、「完全には狂っていないから措置入院は無理」と言われました がありますが、それは「本人の意思」と「周囲(そして将来の本人)の苦悩」のバランスの問題です。端的に言えば、「症状悪化がどこまで進んだとき、本人の意思に反してでも治療を開始することが許容されるか」という問題です。そしてこの問題の解決のためには、第一歩として、重い精神障害の症状の実態が人々に広く知られることが必要で、現代ではそれさえ全く達成されていないと言えます。【1900】某大手新聞社の掲示板から精神病関連の投稿がカットされるようになった のように、精神障害の存在そのものを極力隠蔽しようというのがいまだに日本社会の現状であることがその大きな原因です。重い精神障害の症状とは如何なるもので、それによって本人や周囲がどれだけダメージを受けているかについて知らなければ、「いかなる場合も本人の意思に反する治療は許容されない」という意見が大多数になるでしょう。【1171】母親にナイフで切り付け殺人未遂で有罪になった息子や【1861】隣人にナイフで切り付けた知人は統合失調症でしょうかのような生々しいケースも精神科Q&Aで積極的に公開している理由はそこにあります。実態が広く知られなければ、「本人の意思」と「周囲(そして将来の本人)の苦悩」の適正なバランスにたどりつくことはできないと考えられるからです。
1. 彼に、「精神科や心療内科に通えば、美人女医とお付き合いできるかもよ」と嘘をついてもよろしいでしょうか。
【0427】殺人を依頼されました。引き受けると答えましたなどをご参照のうえ、ご自身でお決めください。
(稚拙な発想で申し訳ありません。精神科医にとって、生理的に嫌悪すべき内容であることは承知しています。
「稚拙な発想」でもなければ、「生理的に嫌悪すべき内容」でもありません。(現実の重いケースをあまり診ていない精神科医であれば嫌悪するかもしれませんが。)
しかし彼は、この類のウソに簡単に引っかかります。受診させるに有効な方便であるように思えるのです。盗撮物のAVを、本当に盗撮されていると信じて疑わないような人です。まあこれは、チャットをやっている他の男性全般にもあてはまりますが。)
2. チャットにやってくる多くの男性が「女はこいういうプレイが好きなんだ」 (実際はその男性自身が好きなプレイ)や、「アダルトのチャットレディは、他の客には演技で感じているフリをしているけど、俺には本気。なぜなら俺はテクニシャンだから。俺は演技ならすぐに見抜ける。」という、ありえない妄想をしています。後者に至っては、ほとんど全員がしています。私は、この人たちも病気なんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
統合失調症(や妄想性障害)の精神病症状としての妄想と、健常者が持つ誤った確信との違いは、精神医学的には非常に興味深いテーマです。言葉だけで抽象的に追究していくと、両者に違いはほとんどない(または、全くない)という結論に達するかもしれません。実際はそうではないと思いますが、かと言って説得力ある説明をすることは困難で、現実にはその人の全体像も考慮したうえで判断するということになるでしょう。(このとき、妄想が唯一の症状である妄想性障害のケース、特にパラノイアと呼ばれる一群をどう考えるかというさらに困難な問題が浮上しますが、この【3390】からは話が逸れるのでこのテーマはここまでとします)
3.【1302】私は近日中に殺されるかもしれない。小鳥を飼ったほうがいいでしょうか。を拝読いたしました。
実は私も、右足でマンホールを踏んだら次は左足でマンホールを踏まなければ気がすみません。この質問者様と同様、白線も影も同じであり、影の場合に達成感が薄いのも同じです。子供のころからそうです。
また、何を書いても、どんなテーマであっても、このように長文になってしまいます。
これだけでは判断しかねることと思いますが、【1302】の続きである【1470】において、先生は 「まずメール全体から、漠然とした不気味な感じ、あるいは奇妙にまとまりのない感じが読み取れるかと思います。」
とおっしゃっていたので、あえてお聞きします。私の文章は大丈夫でしょうか。
大丈夫です。心配ありません。
(2017.3.5.)