【3357】認知症なのか、更年期障害なのか、薬の副作用なのか。  

Q: 30代女性です。
母(58歳)の症状について認知症の疑いがあるのか、更年期障害なのか(50歳頃に閉経)、 薬の副作用なのか、アルコール摂取と薬の飲み合わせによるものなのかアドバイスお願い致します。
母は30年以上1日1箱のペースの喫煙者でした。
しかし、インフルエンザにかかったことがきっかけで、禁煙をはじめました。
初めの3カ月は独りで禁煙し、4カ月目以降は、ある症状に耐え難くなり禁煙外来へ通いはじめました。
禁煙外来に通い、4カ月経っても、ある症状に悩まされると訴え、職場の人のすすめで精神科に行きました。母が申告するある症状は、「言葉では例えられない。お腹の中に悪魔が悪さをするような感じで、もやもやしている。タバコを吸いたい気持ちはないが、この気持ちが晴れるなら、吸ってしまいたい。そのもやもやが恐怖だ。自殺も考えた。」と言いました。「お腹の〜の場所が、●●のような痛みがする」というような具体的な表現ではなく、「悪魔が悪さをする」と言うことに普段、母が使わない言葉だったので違和感を感じました。
その後、処方された薬が、良く効いたことと、担当医の出身が母と同郷だったことで、担当医をよく信じているようです。
しかし、私は少し疑問を感じる点があります。母は毎晩お酒を飲みます(焼酎ロック2〜3杯+日本酒2合)。飲まない日を作ることはできないくらいお酒が好きです。そのことを担当医にも申告したと母は言いますが、「先生は少しならお酒と一緒でも大丈夫と言っていた。」と言います。しかし、処方された薬(5種類、薬名のメモを取り忘れました)には朝昼夜毎回飲む指示があり、また飲酒時、運転時の薬の摂取は避けることが書かれています。医師がそのような指示をするとも思えませんし、母の申告に虚偽があるのか判断できません。
薬を飲むようになってからは飲酒時の母の様子がおかしくなりました。口元が開いておらず、発音が聞き取れません。立ち上がると大きくフラつき、一人での歩行困難です。ひどく眠そうです。また、トイレにたどり着いても、使用後のティッシュを流せずに、放置している時もあります。飲酒なしで、昼間話しをしている時も相手に攻撃的になったかと思えば、急に悲観的なことを言います。また、同じ話し(職場のストレスについて)を10分後でも繰り返します。
私は現在両親とは、離れて住んでおり、2〜3カ月に一度のペースで帰省しています。
次に帰省する時には、一緒に担当医の話しを聞くつもりです。ですが、このまま担当医がいる精神科でみてもらうのがよいのか、更年期障害が疑われるなら婦人科が良いのか、認知症の可能性があるのか、悩んでいます。アドバイスを頂きたいです。よろしくお願い致します。

 

林:
母(58歳)の症状について認知症の疑いがあるのか、更年期障害なのか(50歳頃に閉経)、 薬の副作用なのか、アルコール摂取と薬の飲み合わせによるものなのかアドバイスお願い致します。

どれも考えられますが、

薬を飲むようになってからは飲酒時の母の様子がおかしくなりました。

ということであれば、まずは

アルコール摂取と薬の飲み合わせによるもの

の可能性を第一に考えるのが自然です。
お母様の

「先生は少しならお酒と一緒でも大丈夫と言っていた。」と言います。

このお話は虚偽でしょう。お母様はアルコール依存症であり、したがってアルコールを飲むためなら虚偽の話をするのはごく普通のことです。

けれども、

飲酒なしで、昼間話しをしている時も相手に攻撃的になったかと思えば、急に悲観的なことを言います。また、同じ話し(職場のストレスについて)を10分後でも繰り返します。

ということと、

飲まない日を作ることはできないくらいお酒が好きです。
を考え合わせれば、アルコールとの飲み合わせの考える以前に、単に

薬の副作用

ということも考えられます。

すると薬の具体的内容が知りたいところですが、お母様の精神変調の内容が、

口元が開いておらず、発音が聞き取れません。立ち上がると大きくフラつき、一人での歩行困難です。ひどく眠そうです。また、トイレにたどり着いても、使用後のティッシュを流せずに、放置している時もあります。飲酒なしで、昼間話しをしている時も相手に攻撃的になったかと思えば、急に悲観的なことを言います。また、同じ話し(職場のストレスについて)を10分後でも繰り返します。

ということは、軽いせん妄の可能性があり、このことと、そもそもその薬が処方された経緯からは薬は向精神薬であることはまず間違いありませんので、今のお母様の症状は軽いせん妄である可能性が最も高いということになります。
そうますと対応としては、まずは薬を中止するのが第一ということになります。

もっとも、今の症状が薬の副作用だとしても、薬は何か必要性があって処方されているわけですから、副作用が出たからといってそれだけで中止するのは不合理ですが、元々の症状が

「言葉では例えられない。お腹の中に悪魔が悪さをするような感じで、もやもやしている。タバコを吸いたい気持ちはないが、この気持ちが晴れるなら、吸ってしまいたい。そのもやもやが恐怖だ。自殺も考えた。」

であることと、今の症状を比べると、今の症状のほうが問題ありと言えますので(但し「自殺も考えた」という言葉の切迫性は再確認する必要があります。このメールの記載だけからは切迫性ありとは判断できませんが)、薬によるプラスとマイナスを考えた場合、マイナスのほうが大きいということなり、薬を中止するという結論が導かれます。

では元々の症状が何で、治療をどうすべきかということになりますが、それはまず薬を中止したうえであらためて検討すべきでしょう。(今の症状が薬の副作用であるかどうかは、薬を中止してみて初めて確定するからです)

(2017.1.5.)

05. 1月 2017 by Hayashi
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