【3333】母がうつ病であったというのは嘘だと父から聞かされました

Q: 20歳女性です。統合失調症で治療中です。
先生のホームページを拝見させていただいてから「もし、病気なら治療すればいいんだ。」と思うようになって、気持ちが大変楽になりました。以前に「ビューティフルマインド」という映画を観て、「病気の本人も大変だろうけど、ずっと支え続けた奥さんは本当に苦労の連続だったろうな」と思いました。実際、身近には心の病を患っている人は居ても、入院するような重い心の病の人には接することはありません。
私が、学生の時に母がうつ病ということで、入退院を何度か繰り返していました。家出をしたり「煙草に毒が入っている。ワープロに盗聴器が仕掛けてある、窓が怖い」などと言っていました。当時は、高校生でしたし悩む事といえばお小遣いの事や、ボーイフレンドの事くらいでしたので、「うつ」ということすらピンとこなかった時代でした。母は何度か病院を変えて完治しましたが、去年父から、母が心の病ではなく、私が、学校が終わってから帰宅せずに遊び歩いていたので懲らしめるために父と母で申し合わせて私に嘘をついて入院したという話を聞きました。父も母も特別「悪いことをした」という気持ちはないようで、むしろ当たり前のことだ。」といった様子でした。私は、正直大変ショックを受けましたし、「酷い両親だ」と思いましたが、夫婦間の揉め事が昔からあって、子供の立場で見ると、身勝手に思えましたが教育の面でも金銭の面でも不自由なく育ててはくれたので仕方がないことなのかもしれないとあまり深く考えないようにしていました。ですが、先生に寄せられている相談を読んでいるうちに、悲しくなってしまいました。こんなにたくさんの人達が心の病を抱えて、悩んで病院に行くことすら判断がつかなかったり、不安で仕方がなかったりしているのに、私の両親は何を考えていたのだろうと思ってしまいます。実際、大きな病院でしたが本人が嘘だと分かっていて受診し、入院して治療をしたいといういしを伝えれば簡単に「うつ」という病名がついてくるということにとても不安を感じます。ストレスの多い時代ですし、情報も氾濫し、いつでもどこでもしたいことが出来る世の中です。日本という国に生まれ、何不自由なく育って、きちんとした教育を受け、お金さえあれば何でも出来る世の中です。私も、さんざん好きなように暮らし、たくさんの人達に迷惑をかけたり、金銭面でも両親には大変迷惑をかけました。薬物中毒にもなりました。いずれも、誰かに強要されたわけではなく、自分の意思でしてきました。その結果現在のような精神状態になってしまっています。ですが、生活に困ることはなく、この年齢になっても何かを学ぼうという私の気持ちを両親は理解してくれて、口では文句も言われますが、協力してくれています。本当に自分は恵まれていると感じます。過去に起きた悲しい出来事や、嫌な思い出、数えあげたら本当にキリがありません。かといって忘れることも出来ませんし、楽しい場面でもふと思い出してしまったりもします。でも、楽しかったこともたくさんあるし、心も体も健康で悩むことなんてなかった時もあります。子供の頃は朝起きて学校に行って元気良く遊んで疲れれば自然と眠ってまた朝を迎えていました。どうして、人間として自然に備わった力が無くなってしまったんだろうと今日何となく考えてしまっています。その力が無くなったのではなく、「心の病なら、治療すれば元気になれるんだ」と、先生の相談室を見ていて前向きな気持ちが持てるようになりました。ありがとうございます。被害妄想や、倦怠感、不安感といった気持ちはまだありますし、心の病なのか薬物による後遺症なのか自分でも判断がつきません。血液検査をしても体はとても健康だということですし問題ないんだと思います。人と接したり、目的を持って何かに取り組んだり、しなければいけないことを後回しにせずに片付けていくことで、自分を責める材料が少しずつ減って、自分の存在を認めていく事が今の自分にとても必要なのだと感じています。いつも、人を疑っているより、ほんの少し勇気を出して信じてみる力をだしてみることも大切なんだと思います。今日、このように前向きな考えを持っても明日には同じ気持ちでいられるかは分かりません。何とか持続できるようにしていきたいです。先生のホームページは薬物の後遺症を調べている時に偶然知ったのですが、相談室があって本当にうれしく思います。

林: 今の前向きの気持ちをお持ちになって治療を続けることで、病気はもっと良くなっていくことと思います。是非この調子で続けてください。

それとは別に、次のことは事実としてお伝えしておきたいと思います。

私が、学生の時に母がうつ病ということで、入退院を何度か繰り返していました。家出をしたり「煙草に毒が入っている。ワープロに盗聴器が仕掛けてある、窓が怖い」などと言っていました。当時は、高校生でしたし悩む事といえばお小遣いの事や、ボーイフレンドの事くらいでしたので、「うつ」ということすらピンとこなかった時代でした。母は何度か病院を変えて完治しましたが、去年父から、母が心の病ではなく、私が、学校が終わってから帰宅せずに遊び歩いていたので懲らしめるために父と母で申し合わせて私に嘘をついて入院したという話を聞きました。

お父様のこの話は確実に嘘だと思います。私が、学校が終わってから帰宅せずに遊び歩いていたので懲らしめるために、お母様が何回も精神科病院に入院するなどということはあり得ません。親や親戚が精神病に罹患していることを、子に隠すのはよくあることですので、そのごく平凡なパターンとも言えますが、それにしてもあまりに見え透いた嘘だと言えます。

実際、大きな病院でしたが本人が嘘だと分かっていて受診し、入院して治療をしたいといういしを伝えれば簡単に「うつ」という病名がついてくるということにとても不安を感じます。

確かに、本人の嘘の訴えを真に受けて治療がなされていることがあるのは事実です。【2738】元気で狡猾な精神科入院患者たち 、【2800】精神科医が騙されるなんて思わなかったのですが 、 【2882】簡単に騙される精神科医は悪意を持った者に利用されるのでは?  などをご参照ください。けれどもこの【3333】のケースはそうではなく、嘘をついたということ自体が嘘であることは確実だと思います。

(2016.12.5.)

05. 12月 2016 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症