【3189】母が五年前、1週間ほどおかしくなったことについて
Q: 現在50代の母について質問です。娘の私は30代です。
5年ほど前、母は突然おかしくなりました。
お酒を飲んだわけでもないのに呂律が回らず、そのくせ早口で支離滅裂なことをしゃべる、異常なハイテンション。
それを諌めると、「私なんか死んでもいいって思ってるんだろ!」「私はおかしくなんかない!」と言い張って暴れます。
何度も同じ文章を繰り返した不気味なメールを送ってきたりもしました。
そんな状態の中、母が友達とランチにでかけ、そのお友達さんから「お母さんの様子がおかしいから迎えに来て」と電話がかかってきたこともありました。
迎えに行くと、やはりお酒は飲んでいないのに酔っ払いのようなテンションで、ニヤニヤしながら母が私に崩れ落ちるようにして、寄りかかってきました。
その頃母は、一ヶ月ほど前から、叔父(母の弟)の家に泊まり込みで手伝いにいっていました。
2~3日泊まっては自分の家に帰り、また翌日に叔父の家に行くサイクルです。
叔母が不倫して家を出ていき、その間家を守る為だったのですが、
「(叔母が)いきなり家に帰ってきたらどうしよう」
と不安で、叔父の家にいる間はぜんぜん眠れなかったそうです(と、本人が言っていました)。
また、母自身も父(母の夫)の不倫で修羅場になり離婚し、そのトラウマを思い出して神経質になっていたそうです。
そしてある時3日ぶりに家に帰ってきた母の様子がなんとなくおかしく、その時は疲れているのかな?と思ったのですが、 翌日以降も上記のような状態で、おかしくなってから4日目くらいに、心療内科に連れていきました。
「私はおかしくない」と言い張っていたのですが、 「お母さん疲れてるし、私も寝つきが悪いから、一緒に病院にいってお薬もらおう」と、半ば強制的に。
医師は病名は言いませんでしたが、処方されたのは、デパス、マイスリー、セルシン、コンスタンでした。
薬を服用した母はぐっすり眠り、3日くらいでいつもの母に戻りました。
「お母さんおかしくなってたね、ぜんぜん眠れてなかったからかな、ごめんね。」と言っていました。
5年たった今もその心療内科に通い、デパスとマイスリーは服用を続けています。
母はあれ以来おかしくなることはありません。
(母自身も、私も、母に過度のストレスがかからないよう気をつけています。)
あの時以外、あんなおかしな母を見たことはありません。
あれは一体なんだったのでしょうか?
躁状態になってしまい、不眠になり、おかしくなったのでしょうか?
再発する可能性はあるのでしょうか?
当時はいっぱいいっぱいで、病気なのかなんなのか考える余裕もありませんでしたが、ふと思い出して、気になって仕方ありません。
どうぞご回答よろしくお願いします。
林: 約1週間という短期間だけ精神病症状があり、その後は全く症状がない。この【3189】のケースはこのように要約することができます。これには急性一過性精神病性障害または短期精神病性障害という診断名があてはまります。急性一過性精神病性障害はICD-10 (WHO作成の診断基準)、短期精神病性障害はDSM-5 (アメリカ精神医学会作成の診断基準)に収載されている診断名です。どちらもほぼ同じものを指しています。
そして、急性一過性精神病性障害にせよ、短期精神病性障害にせよ、その病気について言えることは結局「短期間だけ精神病症状があり、その後は全く症状がない」だけに帰着します。実際にはこの診断名にあたるケースには、複数の原因によるものが含まれていると考えられます。統合失調症に類縁の脳の病気ということもあれば、何らかの脳器質的な病気ということもあるでしょう。それ以上のことは言えません。というより、それ以上のことを言うのは現代の医学からすればあまりに推定のし過ぎなので、単に「短期間だけ精神病症状があり、その後は全く症状がない」という表面的な症状だけに基づいて診断名を定義しているという言い方が正しいということになります。
したがいまして、
再発する可能性はあるのでしょうか?
それは何とも言えません。病気の本質が不明だからです。が、あるかないかと二者択一の問いに答えるとすれば、再発の可能性はあると考えるべきです。
但し、
5年たった今もその心療内科に通い、デパスとマイスリーは服用を続けています。
薬を飲み続ける必要はないでしょう。少なくとも、デパスとマイスリーを飲むことによって再発が防止されると考える根拠はありません。
(2016.4.5.)