【3190】現実感と自己を喪失しているような感覚が続いています

Q: 10代の男子学生です。
数年前から離人症のような症状があるのですが、正常な範囲なのか解離性障害なのかが判らず、メールさせていただきます。

いつ始まったかは定かではないのですが、時たま自分の意識が二重化したような錯覚に陥り、現実で行動している自分と実際に思考している自分とが乖離するような印象を受けます。その際の自分の意識は全体が透明な被膜で覆われている、とも表現できます。それは現実感の激しい喪失と若干の不快感を伴い、自分の関心がない人間と会話している時、課題などに追われている時、または時折不定期に波のように訪れます。
この現象が起こった時、まるで外界で起きている一切のことが他人事であるかのように、それらに対しての関心と感覚が消えます。人と会話しているときにそれが起こると、自分とその人の間にもう1人の自分を代役として立て、彼に代わりに会話をさせているような感じがします。それと同時に、相手の声がまるでもう1人の自分から出ているような、形容し難い感覚もあります。
これが始まってから、学業など生活の一部に支障を来すようになりました。様々なことについて同じ失敗などが多く見られるように思います。

また、上記のことから普段の記憶が曖昧なことが多いのですが、ある瞬間以前(恐らく3,4年前)の記憶が特に不明瞭で、まるで今の自分はそれまでの自分のいた肉体を乗っ取って存在しているような奇妙な感覚を覚えます。実際に、久しぶりに会った人達に「別人のよう」と言われるほどに自分の所作が他人に与える印象が変わっているようです。
年末に写真の整理をしていた時、以前の自分を見てえも言われぬ不快感を伴い、乗り物酔いの様な感覚を抱き気分を害したため作業を中断せざるを得なかったことも意識の変化を証拠づけるような気がします。

加えて、幼少の頃から想像力が豊かなのもあり、暗がりや音に過敏です。今でも夜中の窓の外から女性が覗いている様な映像が見えてはすぐ消える、窓の外で揺れる木の影が人が手を振っているように感じ不安になる、というような事が多々あります。
これに影響されてなのか、頻繁に見る悪夢や不可解な夢は異様なほどに現実感を伴い、起きた後しばらくはそれが夢であること自体に気付かないこともあります。夢と現実における「現実感」は同等か、もしくは夢の方が鮮明な場合も多いかもしれません。

以上がよく訪れる症状なのですが、解離が起こるほどの激しいストレスを受けた経験(事故、虐待など)が一切ないこと、自分が人に注意されている時などにも現実感の喪失が起こることなどから、「病気のせいにしているだけで、自分はただやる気がないだけではないのか」「他人に対する関心の薄さも、単に性格の悪さから来るものではないのか」など、自分に対する嫌悪感ばかりが募っていきます。
片親で育ち、自分を育ててくれた母親があまり好ましくない相手と結婚した事実があったりや他人からストレスを受けやすいタイプではあるのですが、調べていて離人症の症状と一致する点が多いのに疑問を持ちました。本人にとってもめぼしい原因がないにも関わらず、解離性障害を患うことはあるのでしょうか?
激しい自己嫌悪と、それすらも現実感の喪失により薄れていくことから鬱屈とした精神状態にあります。精神科を受診すべきでしょうか。

 

林: 症状は解離性障害として矛盾はありません。

解離が起こるほどの激しいストレスを受けた経験(事故、虐待など)が一切ないこと、自分が人に注意されている時などにも現実感の喪失が起こる

それらはいずれも、解離性障害を否定する根拠にはなりません。激しいストレスを受けた経験がなくても解離性障害になることは十分にありますし、そもそもその経験の記憶が失われていることもしばしばあります。また、「自分が人に注意されている時」というようなストレスがかかったときに解離状態になることも、解離性障害ではしばしばあります。

激しい自己嫌悪と、それすらも現実感の喪失により薄れていくことから鬱屈とした精神状態にあります。精神科を受診すべきでしょうか。

受診すべきです。

(2016.4.5.)

05. 4月 2016 by Hayashi
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