【3243】体感幻覚の治療法

Q: 私は30代女性です。体感幻覚についての治療方法があれば教えてください。 私の知人の話なのですが、40代の統合失調症の方で20代より発症し何度か入退院を繰り返しています。 幻覚・妄想などは日常では見られることはありません。しかし、あごを動かす行為がずっと続いています。「顎がはずれている」「親知らずを抜いた時に体(背骨がずれて)がずれて顎にきている」などの訴えからレントゲンなどとるが異常なし。 それでも本人は納得いかず整体などにいくが「余計にずれた」と歯を全部抜いてしまいました。 不随意的なのか、本人がかまってほしいからなのかの判断が難しく対処方法に困難しています。 本人の興味があることであれば外出し調子もあがるのですが・・・ なにかアドバイスの方よろしくお願いします。

 

林: 統合失調症の症状として体感幻覚が出ている場合、治療はすなわち統合失調症の治療です。統合失調症の症状のひとつひとつに対する治療法というものがあるわけではなく、統合失調症を治療すれば、その症状もよくなっていきます。
もっとも、この【3243】の方の症状は体感幻覚かどうかわかりません。

あごを動かす行為がずっと続いています。

この通りなのであれば、現に顎が動いているわけですから、幻覚ではありません。
統合失調症の人に「顎を動かし続ける」という症状が見られた場合、最も考えられるのは抗精神病薬の副作用です。したがってこの【3243】のケースでもその可能性が高いと言えます。
但し、

「顎がはずれている」「親知らずを抜いた時に体(背骨がずれて)がずれて顎にきている」などの訴え

このように本人が解釈することは統合失調症の症状です。
そして、

本人は納得いかず整体などにいくが「余計にずれた」と歯を全部抜いてしまいました。

この行為からは、統合失調症としてまだまだ改善が不十分であることが窺われます。

そうなりますと、このメールに書かれている情報だけからも、次のように言えることになります:

この方には、統合失調症の治療薬の副作用が出ているが、統合失調症の症状そのものはまだ充分に改善していない。のみならず、副作用が症状にさらに拍車をかけている。

このような場合、今後どのように治療を進めて行くかは、単純に決めることはできません。質問者が友人としてこの方を心配される気持ちはよくわかりますが、結論としては、「余計な口を出さないほうがいい」ということになるでしょう。特に、顎が動くのは副作用であるというようなことをこの方に告げるのは禁物です。知人から副作用について聞き、薬をやめた結果、統合失調症が増悪するという例は枚挙に暇がありません。副作用の管理は治療とセットになってはじめて可能になる性質のものですから、すべて主治医にお任せすることです。

(2016.7.5.)

05. 7月 2016 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症, 薬の副作用