【3065】甘えから脱却する方法を教えてください‏

Q: 30代半ばの女性です。
林先生の著書、「擬態うつ病/新型うつ病—実例からみる対応法」拝読しました。本物のうつ病とそうでないものを区別することの重要性がわかりました。自分がいつまでたっても回復しないこと、薬を飲んでも症状が改善しないことの理由が分かった気がします。

自分が精神的に不調を感じだしたのは、もう15年以上前の学生時代の頃です。なんとなくやる気が出ない、大学に行けない等の問題そのものと、それに対する自責感に苦しみ、心療内科に受診しました。当時は「うつ状態」とされました。今思えば、「喜びの喪失」等はなかったため、やはり当時からうつ病ではなかったのでしょう。
私は現在便宜上双極性障害(II型)と病名がつけられていますが、実際のところ適応障害と、甘えと、半々な状態なのではないかと思われます。薬は、一つ一つは些細なのに多方面に出る症状を抑えていくため、かなりの多剤処方(気分安定化薬、少量の抗精神病薬、ごく少量の抗うつ薬、眠剤など)になっています。
主訴としては現在は倦怠感(特に朝にひどい)や易疲労性と、気持ちの浮き沈み、という事になります。症状の強い時は、不安や音に対する恐怖感が出ます。希死念慮は、ゼロではありませんが、余程調子の悪い時しか出ません。
診断未満ではありますが、ややADHDの傾向があるようです(WAIS受検済)。
重くはありませんが、相貌失認もあります(相貌失認で仕事に支障が出ることがストレスの一つになり、仕事を辞めたこともあります)。

苦手な仕事をしていると追いつめられた気分になり、気を付けていてもミスが増えたり、記憶力が低下したり、身体的にも発熱や吐き気・嘔吐などといった症状が出たりします。自分の至らなさにボロボロ泣いたこともあります。一方で仕事ができないことを、「ちゃんと教えてくれないから」と他人のせいにしがちな傾向はあるような気がします。

家では家事などほぼせず、母に甘えたきりです。自室など、ゴミの山です。

苦手な仕事がひと段落したのちは、それほど苦痛なく仕事ができます。休日などは、アクティブにとはいきませんが、友人から誘われれば遊びに行くことができます。病院も、近隣に少ないため休日に遠方に出かけています。
余程不調でない限り、自分で自動車を運転していきます。そのついでに買い物をしたり、遊んで来たりもします。
食事も日々おいしいと思います。
趣味は昔に比べて減ったし、映画や、長時間のドラマは疲れてしまうので見られません。しかし、インターネットをしているのは学生時代にネットを始めて以来ずっと面白いと思います。症状が重い時でも、インターネットはできるし、むしろ救いを求めている感じになります。

楽しいことは複数あるので、明確にうつ病とは違うと思います。だからと言って、苦痛が無い訳ではないのです。苦痛を軽くしたい、弱い自分を克服したい。そう思います。しかし、自分を律するにしても、どう自分を仕向けていけばよいのかわかりません。

長々と書きましたが、Q&Aに投稿したのは、先生に、「甘え」を「甘え」で切って捨てるだけではなく、「こういう本を読んでは」「こう考えてみては」等の甘えから脱却するための指針の見つけ方も、教えていただければ幸いだと思ったからです。何か、教えていただければと思います。
もう一つ、伺いたいことがあります。私には、これからも精神科における投薬治療が必要だと思われますか?

 

林: 発達障害の傾向があり、その二次障害としての抑うつ症状の可能性が高いと思います。しかし他の病気でないというだけの根拠はありません。

自分が精神的に不調を感じだしたのは、もう15年以上前の学生時代の頃です。なんとなくやる気が出ない、大学に行けない等の問題そのものと、それに対する自責感に苦しみ、心療内科に受診しました。当時は「うつ状態」とされました。今思えば、「喜びの喪失」等はなかったため、やはり当時からうつ病ではなかったのでしょう。

「喜びの喪失」等がないだけで、うつ病を否定することはできません。
(本来は「等」では何もわかりません。「等」の具体的内容についての情報がなければ判断できません)

 私は現在便宜上双極性障害(II型)と病名がつけられていますが、

「便宜上」の意味が不明です。

実際のところ適応障害と、甘えと、半々な状態なのではないかと思われます。

そう思われる根拠が不明です。

薬は、一つ一つは些細なのに多方面に出る症状を抑えていくため、かなりの多剤処方(気分安定化薬、少量の抗精神病薬、ごく少量の抗うつ薬、眠剤など)になっています。

多剤処方は、本来は望ましくない薬物療法ですが、やむを得ない場合もしばしばあります。この【3065】のケースがどうであるかはわかりません。

 診断未満ではありますが、ややADHDの傾向があるようです(WAIS受検済)。
重くはありませんが、相貌失認もあります(相貌失認で仕事に支障が出ることがストレスの一つになり、仕事を辞めたこともあります)。

ややADHDの傾向があるようです(WAIS受検済) だけでは何とも言えませんが、相貌失認は発達障害に合併しやすい症状ですので(ADHDと発達障害は近縁関係にある病態です)、質問者は発達障害か、少なくともその傾向があると強く推認できます。
なお

重くはありませんが、相貌失認もあります(相貌失認で仕事に支障が出ることがストレスの一つになり、仕事を辞めたこともあります)

とのことですが、質問者の相貌失認が重いか軽いかはこれだけの記載からはわかりません。相貌失認と関連して仕事を辞めたことがあるということは、少なくとも非常に軽いものでないとは言えるでしょう。

 楽しいことは複数あるので、明確にうつ病とは違うと思います。

その判断は間違っています。診断はうつ病で、しかし治療を受けているためにある程度よくなっていて、その結果として楽しいことが複数あるということも十分に考えられます。

長々と書きましたが、Q&Aに投稿したのは、先生に、「甘え」を「甘え」で切って捨てるだけではなく、「こういう本を読んでは」「こう考えてみては」等の甘えから脱却するための指針の見つけ方も、教えていただければ幸いだと思ったからです。

質問者の状態が甘えかどうかはわかりません。うつ病の可能性も否定できません。最も考えられるのは、冒頭に記した通り、質問者には発達障害の傾向があり、その二次障害としての抑うつ症状が現れているというものです。

 もう一つ、伺いたいことがあります。私には、これからも精神科における投薬治療が必要だと思われますか?

わかりません。薬を飲んでいないときの状態が不明だからです。
少なくとも通院は必要だと思います。

(2015.10.5.)

05. 10月 2015 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 発達障害, 精神科Q&A