【3000】生物学的マーカーと診断基準(【2900】のその後)

Q: 【2900】うつ病の聖杯としての生物学的マーカーについて で回答いただいた内科医です。詳細でわかりやすい回答いただきありがとうございました。
林先生の回答の最後のほうの、

もしかすると内科の病気の中には、特異的な生物学的マーカーが存在しても、臨床の実務的な理由のため、DSMスタイルの診断基準が存在する病気があるのでしょうか。

についてですが、たとえば抗ds‐DNA抗体や抗Sm抗体はSLEに、抗Scl-70抗体は強皮症に、いちおう特異的なマーカーとされていますが、診断基準は存在します。
その理由を改めて考えてみたのですが、特異的とされる生物学的マーカーが存在するのに診断基準が存在する理由は、たぶんですが、特異度が完全な100%ではないということと、あとは陽性率の問題、たとえば抗Sm抗体は陽性率は10〜30%と低めですので、陽性率の問題も関係してるのかな、と思ったりしています。

林: ご教示ありがとうございました。
確かに、特異的な生物学的マーカーといっても、万能なマーカーはなかなかないということなのでしょうね。うつ病の聖杯 に記した内容とそのことをあわせて考えると、うつ病をはじめとする精神疾患の実用に耐える生物学的マーカーが見出されるのはまだまだ先ということになるのでしょう。現在あるNIRSなどは、それなりに期待は持てるものですが、明らかに過剰な信頼性ありという誤解が蔓延しており、残念なことだと思います。

(2015.7.5.)

05. 7月 2015 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 精神科Q&A