拡大自殺としてのドイツ機墜落事件

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2015年3月24日、ジャーマンウィングス9525便が仏南東部のアルプス山中に墜落し、乗客乗員150名が亡くなられた。

事故後まもなく、この飛行機の副操縦士アンドレアス・ルビッツが、故意に墜落させたこと、そしてルビッツ副操縦士は精神疾患で治療を受けていたことが相次いで明らかになった。その精神疾患とは何であったか、様々な病名が報道されている。

本稿「拡大自殺としてのドイツ機墜落事件」は2015.4.8.に書いている。まだ情報の一部しか明らかにされていない。だがその一部の情報だけからも、ルビッツ副操縦士が内因性の精神障害に罹患していたことは明らかである。現代の診断基準にある病名をつけるとすれば、双極性障害、統合失調症、統合失調感情障害、精神病症状を伴ううつ病 のいずれかである(注1)

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本稿のタイトルにある「拡大自殺」とは、自殺に際して、他の人を巻き込むことを指し、形としては「心中」と同義である。但し「拡大自殺」という場合は、あくまでも自殺という目的が第一義的にある。拡大自殺の多くは、本人がうつ病に罹患している。典型的には、母親がうつ病で、母子心中の形を取るケースである。(注2)

自殺の真の理由を知ることは大部分の場合難しい。本人が亡くなっている以上、理由は推定するしかないからだ。だが母子心中の拡大自殺では、子を殺したものの本人は死に切れずに生き残ることがしばしばある。するとこれは殺人事件ということになり、母は被疑者または被告人になる。このとき新聞に並ぶ見出しは「子育てに悩んで」「病気の子の将来に悲観して」等々、母親の心理を描写したものになるのが常である。もちろんそういう理由(このような理由は「心因」という)による母子心中もあるが、そういう理由では到底説明しきれない母子心中も多い。拡大自殺が疑われる殺人事件では精神鑑定が行われるので、かなり詳細な精神医学的診察がなされ、その結果、母は重度のうつ病に罹患していたことが判明することがよくある(注3)。妄想を伴ううつ病である。現代の診断基準にあてはめれば、「精神病症状を伴ううつ病」ということになる。

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ドイツ機を墜落させたルビッツ副操縦士の行為も、形としては拡大自殺である。そして彼は精神疾患で治療を受けていた。拡大自殺の多くはうつ病が原因である。

これらを合わせれば、ルビッツ副操縦士はうつ病だったという推定が正しいように思える。だが彼のうつ病は、母子心中でしばしば見られるうつ病とは明らかに異なる。

うつ病の母親による子殺しの背景には、「自分が死んだ後、この子が残されては可哀そう」「不治の病にかかったこの子は生きる望みがない(このとき、「不治の病にかかった」は妄想である)」という心理がある。そういう心理があって初めて、うつ病の人も殺人という最大級の他害行為に出る。

これに対し、ルビッツ副操縦士の拡大自殺は、自分とは何のかかわりもない人、それも150人もの多数の人々を巻き添えにしている。うつ病の人なら、いくら病気が重くなっても、通常は決してしない行為である。
いま「何のかかわりもない人」と言ったが、これは正確でない。犠牲者は乗客である。ルビッツはパイロットである。パイロットにとって乗客とは、何のかかわりもない人ではない。最も大切にしなければならない人である。
医師が自殺に際して入院患者を巻き添えにする。あり得ない。
俳優が自殺に際して劇場内の観客を巻き添えにする。あり得ない。
通常の心理では理解できない。あり得ない。そういう行為は「了解不能」の行為ともいう。「了解不能」は、内因性精神障害の特性の一つである。

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だが内因という概念に、人はなかなか納得しないのが常である。
心が動いたとき、そこには何らかの心理的な原因が考えるのが自然だし、当然だ。それが心因である。人はまず心因を考える。内因を考えるのは最後である。
心因と内因の間に、器質因を考えることもよくある。薬のせいではないかと考えるのが最も多い。つまり、通常の心理では考えられない行為が見られ、その人が薬を飲んでいたことがわかったとき、その行為は薬のせいに違いないと考えるのである。
人は内因という概念にたどり着かないことも多い。たどり着いても半信半疑のことが多い。医師から説明されても、まだ信じないことも多い。
このように、心の動きの原因について、(1) 心因 (2) 器質因 (3) 内因 の順に考えるのは、人の考え方の法則とも言える。順序だけにとどまらない。内因の可能性が圧倒的に高い場合でも、心因の可能性にこだわり続けるのだ。

ルビッツ副操縦士についてのこれまで報道にも、このことが如実に現れている。それが、本稿をいま(2015.4.8.)書こうと思った理由である。

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事故から4日後の2015.3.29.、読売新聞の電子版は、

副操縦士「待遇語ると別人のよう」…元交際相手

という見出しの下、元交際相手の女性がルビッツ副操縦士について、「ふだんは穏やかなのに、待遇や将来など仕事のことを語る彼は興奮して別人のようだった」と述べたことを、ドイツの大衆紙ビルトが伝えたと報道した。

さらに2015.3.30.にもビルトを引用して

独機墜落 副操縦士 網膜剥離か 現地報道 6月に身体検査の予定

という見出しの下、この眼疾患のためパイロット不適格と判断されると判断されるのではないかと悩んでいた可能性があると報じている。

どちらも事実なのであろう。しかしどこまで重要な事実であるかは疑問である。特に前者、「待遇語ると別人のよう」は、見出しにして読者の注意を喚起するほどの内容とはとても思えない。このような見出しを掲げるからには、待遇についての不満が自殺(乗客乗員を巻き添えにしての自殺)につながったのではないかという推定を示唆しているように思えるが、いかにも無理な心因説の見本と言える。
後者、網膜剥離についても、やはり心因説を支持する内容と判断できる。パイロットが目の病気に罹患。来る身体検査では職を休めという命令が出されるか、もしかすると職を失うかもしれない。その悩みによって自殺した。表面上はもっともらしい心因説だが、本稿3に記した通り、この事件は了解不能の行為であり、そんなありきたりの心因説で説明できるような性質のものではない。

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上記5の記事で読売新聞が引用しているビルトBildは、ドイツの代表的な大衆紙である。ホームページを開くと、いかにも毒々しい見出しが並んでいる。デザインも、内容も、取り上げる記事も、到底信頼性が高いとは思えない。もっとも、Bildのような大衆紙と呼ばれるものは、話題性のある記事を提供するのが社会的使命であると理解すべきであろう。正確さを求めるのは筋違いとみるべきであろう。

読売新聞は日本の新聞の中では相対的にかなり信用できると私は思っている。しかしルビッツ副操縦士をめぐる記事の書き方を見ると、一体どうしちゃったのだろうという気持ちがぬぐえない。まず、他の新聞の記事を引用して記事にするという報道姿勢がいただけない。自分で取材したのではない内容を記事にするのは、一流新聞社としては恥なのではないか。もっとも、情報のスピードが加速している現代ではそんなことは言っていられないのかもしれない。他の新聞からの記事を引用して記事にすること自体は現代においては容認されるかもしれない。だが、なぜビルトなのか。しかも心因説を恣意的に選んで伝えているとしか思えない。これでは読者は、ルビッツ副操縦士の精神疾患の本質から逸れた、したがって事故の真相から逸れた方向に誘導されていく。内因性の精神障害というものの存在から意図的に目を逸らそうとしているかのようである。

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ドイツにはシュピーゲルSpiegelという、ビルトよりははるかに信頼できると思われる新聞がある。そのシュピーゲルは、2015.4.3.に次のように伝えている。(日本語訳は林による)

Bei der Durchsuchung von Lubitz’ Dusseldorfer Wohnung hatten Beamte zahlreiche medizinische Dokumente sichergestellt, aus denen sich eine Krankengeschichte rekonstruieren lasst.

ルビッツ副操縦士のデュッセルドルフの家から、当局は膨大な医療記録を押収した。

Ein Psychiater hatte Lubitz zuletzt fur fast zwei Wochen krankgeschrieben – wohl wegen einer bipolaren Storung, der 27-Jahrige war offenbar manisch-depressiv.

精神科医はルビッツ副操縦士に、2週間の休務を指示していた。双極性障害(躁うつ病)によると見られる。

Nach Angaben der Ermittler zerriss der junge Pilot das Attest und trat seinen letzten Flug an.

ルビッツ副操縦士はその診断書を破り捨て、今回の事故機に搭乗したという。

上記の通り、シュピーゲルには双極性障害(躁うつ病)という病名が特定して書かれている。
ルビッツ副操縦士が罹患していたのは、本稿冒頭に記した通り、内因性の精神障害であることにほぼ間違いない。
双極性障害は内因性の精神障害に含まれるから、一つの候補である。しかしこれまで開示されている情報からは、内因性精神障害の中のどれであるかまでは特定できない。双極性障害かもしれないが、統合失調症かもしれないし、統合失調感情障害かもしれないし、精神病症状を伴ううつ病かもしれない。
だが心因性の精神疾患でないことは確実であり、「副操縦士「待遇語ると別人のよう」…元交際相手」「独機墜落 副操縦士 網膜剥離か」などの報道は、事実から遠ざかる情報を殊更に強調しているという感を免れない。内因性精神障害というものの殊更の否認。【1900】某大手新聞社の掲示板から精神病関連の投稿がカットされるようになったなどと同じ平面上にある姿勢である。

内因性の精神障害というものの存在に目をつぶろうとしても、目をつぶり続けることはできない。目をあけたときには、取り返しのつかない悲劇が眼前に開けていることにもなりかねない。

 

注1  双極性障害、統合失調症、統合失調感情障害、精神病症状を伴ううつ病; これらの境界は実は曖昧である。たとえば【2912】順調だった統合失調症の妻が急に塞ぎこむようになったのは再発でしょうか、それともうつ病でしょうかのような例を指摘することができる。【2337】「精神病レベルのうつ病」と言われていますが、統合失調症ではないでしょうか。のような例もある。もちろん逆に、はっきりと区別できるケースも多々あるが、診断基準にあてはめようとすると、見方によってどれにもあてはまると言えるケースもまた少なくない。

注2 【2753】産後うつ病や育児ノイローゼではないと思うのですがで、直ちに精神科を受診することを勧める回答をしたのは、その可能性を危惧してのことである。 【2212】産後うつ病なのですが、薬を続けるべきでしょうかで服薬継続を勧めた理由も同様である。

注3 たとえば、千葉地方裁判所平成元年(わ)第四一五号 平成2年10月15日刑事第一部判決(殺人被告事件)、さいたま地方裁判所平成21年(わ)第1785号 平成22年9月6日第2刑事部判決 (殺人被告事件)などの実例がある。いずれもうつ病の母による子殺しである。

 

 

追記 (2015.4.10.)

ルビッツ副操縦士の病名について、2015.3.31.のCNNは次のように伝えている。

Lubitz suffered from “generalized anxiety disorder,” with severe depression symptoms dating back to 2009, according to French newspaper Le Parisien.

フランスの新聞 Le Parisienによれば、「全般性不安障害」で、「重篤なうつを伴っていた」

Die Welt, a German newspaper, over the weekend cited an unidentified senior investigator, who said Lubitz suffered from “severe subjective burnout syndrome” and severe depression.

ドイツの新聞 Die Weltによば、「燃え尽き症候群と、重篤なうつを自覚していた」

こうした情報は、病名推定のための価値としてはあまり高くない。重いうつ状態であったという点は、他の報道とも共通している。だが「重いうつ状態」は、様々な精神疾患に伴い現れる症状なので、病名そのものを特定する情報としては弱い。

CNN嘱託の医師のコメントが上記に続いて紹介されている。

“Someone who has a significant depressive episode or depressive disorder will oftentimes get an antidepressant alone, and many times will have a good resolution of those symptoms,” CNN Chief Medical Correspondent Dr. Sanjay Gupta told Poppy Harlow Sunday on “CNN Newsroom.” “People who relapse or develop more of what is called a psychotic depression in addition may have symptoms of psychosis. Maybe they could be having delusions or hallucinations, but the idea is having breaks with reality.”

はっきりしたうつ病エピソードやうつ病性障害の人は、抗うつ薬の服用だけで良くなることが多い。再発したり、「psychotic depression 精神病性うつ病」にまで発展した人では、うつに加えて精神病性の症状が出ることがある。それは妄想だったり幻覚だったりするが、現実との断絶というべきものである。

適切なコメントである。キーワードはpsychotic(精神病性)である。Psychotic depression精神病性うつ病は、現代の診断基準では「精神病症状を伴ううつ病」だ。本稿冒頭で内因性精神障害の一つとして指摘した診断名である。また、psychoticとは、(覚醒剤などによるものを除けば)、内因性の疾患であることを示唆しているといえる。精神病性うつ病の例としては 【1572】うつ病と診断されている母の頑固な妄想がある。

ルビッツ副操縦士が受けていた治療内容も報道されている。

One of the medications Lubitz was prescribed is said to be Agomelatine (an antidepressant medication), according to Le Perisien.

フランスのLe Perisienによれば、ルビッツ副操縦士にはAgomelatineが処方されていた。

AgomelatineアゴメラチンはNDDI (Noradrenalin Dopamine Disinhibitor; 「ノルアドレナリン・ドパミン脱抑制薬」と訳されている)に分類される抗うつ薬である。日本では発売されていない。

 
Antidepressants can sometimes make people suicidal, especially those suffering from schizophrenia and bipolar disorder. Other times, they can make patients manic or psychotic.

抗うつ薬は時に自殺を促進する副作用がある。特に統合失調症や双極性障害の人が服用した場合、その率が高い。抗うつ薬によって躁状態になったり、精神病症状が出ることもある。

 

抗うつ薬についてのこの記載自体は正しい。【0581】ハイジャック殺人は抗うつ薬が原因だったのですか【1709】愛犬を殴り殺してしまいました。SSRIのせいでしょうか。がその実例である。だがこの副作用は非常に稀なものであり、少なくとも第一に考えるべき性質のものではない(双極性障害の人が抗うつ薬で躁転することは除く。これは比較的よくあることである)。
しかしCNNの論調は、今回のドイツ機墜落事件が、副操縦士がのんでいた抗うつ薬の副作用の可能性を示唆するものとなっている。本稿に記した、「人の考え方の法則」、すなわち、心の動きの原因としての(1) 心因 (2) 器質因 (3) 内因 のうち、心理的な原因では説明がつかないとき、次に人が考えるのは(2)器質因、特に薬の影響であることが、ここにも見られる。

 

The drug’s list of warnings and precautions include metabolic changes — such as weight gain — and the potential for cognitive and motor impairment. “Has potential to impair judgment, thinking and motor skills; use caution when operating machinery.”

このように、薬の影響ではないかという推定は必ず出て来る。内因というものを無視すれば、薬が原因というのはいかにも納得しやすい説明になる。「内因というものを無視すれば」という条件つきである。実際には内因性の精神障害の患者数は人々の想像以上に多い。薬による稀な副作用とは比べ物にならないくらい多い。

 

ルビッツ副操縦士の病名推定という観点から重要なのは次の情報である。

In 2010, Lubitz received Olanzpine injections (an antipsychotic medication) “to treat OCD,” according to Le Perisien. Doctors advised Lubitz to be more active, practice a new sport and regain self-confidence.

ルビッツ副操縦士はオランザピンの注射を受けていた。これは診断を推定するうえでかなり重要な情報である。オランザピンは抗精神病薬である。抗精神病薬が最もよく使われるのは統合失調症に対してである。うつ病や双極性障害にも使われるが、注射で使われることはまずない。統合失調症であっても、内服と比べると、注射はそれほど高率で使われるものではない。かなり症状が重かった場合に使われるのが通例である。
だからルビッツ副操縦士は統合失調症の可能性が高いとまではまだ言えない。高い確率で言えるのは、精神病症状があったということである。先のpychotic精神病性という指摘に一致する。やはり内因性の精神障害であったことは確実とみるべきであろう。

 

“This is a powerful medication,” said Gupta. “If this is true, it sort of reads into the severity of just how bad the psychosis was, at least at one point in his life.”

「オランザピンの注射を受けていたというのが本当なら、ルビッツの精神病はかなり悪かったことになる。少なくとも、そういう一時期があったということだ」 とCNNの嘱託医はコメントしている。

適切なコメントである。

 

There are other things besides psychosis for which the drug may be administered, but that’s the most common use. One of the side effects is blurred vision.

オランザピンは精神病以外にも用いられるが、最もよく用いられるのは精神病に対してである。そして副作用の一つの目のかすみがある。

第一文は、ルビッツ副操縦士が精神病(精神病症状を伴う精神疾患。その大部分は内因性の精神障害である)であったことを示唆するものである。第二文でまた副作用の話が出てきている。

 

Citing two officials with knowledge of the investigation, The New York Times Saturday reported that Lubitz sought treatment for vision problems that might have put his career at risk.

ルビッツ副操縦士が目の治療を受けていたというニューヨークタイムズからの引用である。そして、目の障害はパイロットとしての職を失わせる可能性があったことを指摘している。CNNも、どうしても薬の副作用と事件との結びつきを前に出したいという意図があるとも読み取れる。

 

If he was prescribed this medication as an injectable five years ago, was now taking it as an oral antipsychotic and wasn’t taking it because of it was causing these detrimental side effects, “that could be very concerning, as well,” said Gupta.

オランザピンが処方されていたが、目の副作用をおそれて服用してなかったとすれば、「それも、かなりまずい」とCNN嘱託医はコメントしている。

上記は、どこからどこまでが医師の意見であるかが曖昧な書き方になっている。薬を服用していなかったのがまずいと言っているのか、それともまずいということには目の副作用が含まれているのか。文章そのものを読めば前者ととるのが正しいと思われるが、雰囲気としては目の副作用も含むかのような書き方になっている。

 

Authorities have not ruled out that Lubitz’s vision problem could have been psychosomatic.

ルビッツ副操縦士の目の症状が心身症的なものかどうかはまだ明らかでない。

これがこの記事の結びである。含みを残した結び方で、記事全体を通しても、明確な結論を述べることは慎重に避けていることが読み取れる。CNNは、心因、器質因、内因の、どの可能性も否定していないことは確かである。そのように言えば、後で間違いを指摘されるおそれはない。可能性のすべてを述べているからである。だがそれは逆に言えば何も述べていないのと同じである。
ルビッツ副操縦士が目のことで悩んでいたのは事実かもしれない。しかしそれがあれだけの事件の主因となることはあり得ない。彼が内因性の精神障害に罹患していたことは間違いない。

 

08. 4月 2015 by Hayashi
カテゴリー: コラム