【2715】ゼミの先生に恋愛感情を告白されてから、色々なことが起こるようになった

Q: 30代女性です。先日ネット検索をしていて林先生の精神科Q&Aを見つけました。いろいろな質問と先生の回答がとても参考になり、このサイトの存在をとてもありがたく思っています。私もぜひ質問したく、こうしてメールをしています。どうぞよろしくお願いいたします。 精神科に通うようになったきかっけは高校2年生の時からはじまった不登校です。母が精神科に行き、私のことを相談したことから始まります。 中学のころから対人関係でなかなかうまく立ち回ることができませんでした。対人関係に苦悩する日々でした。この苦悩の日々は大学を卒業するまで続きました。 思春期によくある悩みの時期だったのか、私の病的な社会性のなさだったのかわからないのですが、具体的に書くと、周りの「普通」が理解できず、女子同士でグループで行動すること、悪口を言い合ったり、先生の悪口を言うことに違和感を感じていていつも苦しかったです。勉強がとても楽しくて、でもそれを発言すると嫌味と思われたこともつらかったです。成績はよかったのですが、優越感をもってはいけないと思い、心を律していました。 いまでは優越感を持ったっていいでしょうと思えるのですが、勉強ができて対人関係がうまくいっていないのは人間としてだめだと強く思い込んでいました。 学生時代、ゼミの先生から恋愛を持ち掛けられます。私の父親ほどの年齢の先生で、もともとそのゼミに入ったぐらいですから憧れはありましたが私には恋愛感情はありませんでした。その先生はHPを持っておられるのですが、私がゼミに入ったころから、急に恋愛や不倫に関する映画の評論が増えていきます。 まさか私のことではないだろうと思っていましたが、私が話した内容をほのめかして書いているように感じられることが多くみられました。 この話を誰にしても、あなたの被害妄想、自意識過剰と言われます。そうなのかもしれません。でもそう思うと余計に頭がおかしくなりそうなんですね。その先生のHPに私の個人名は出てきませんし、先生のいろんな日々の経験から文章を書かれていたのだとは思うのですが、私が卒論のテーマを決めるとそのテーマのこと、私が探してきた本に関してHPで先生は語るようになります。 すごくしんどくてやめてほしかったのですが、先生にメールで「私のことですか?」と聞くとはっきりと「あなたのことではありません。」と言っていました。ということは私の妄想なのでしょうか? その先生のHPの掲示板に私が映画評論の感想を投稿した際、その投稿をみて「馬鹿にされた」と感じたと思われる女性からその女性にのHP上、また彼女の友人のHP上でほのめかして批判を受けました。 これも「被害妄想」と皆に言われます。HPを見ていない精神科医からもです。 名前が出ていないから、と。 ただ、名前を出さなくても、ほのめかして批判することはあることだと思います。特定の名前を出さないからたちが悪いだけだったのではないかと私は思っています。

そして少し話は違いますが、私は小泉純一郎さんが首相だった時代、小泉さんにメールを送っています。政治に興味があり、小泉さんのHPからメールを送信できるようになっていたからです。 そして学生時代(小泉内閣時代)に小池百合子さん(当時環境大臣)の伊丹の事務所(今は練馬区の議員さんですが以前は兵庫県伊丹市の議員さんでした)で二か月インターンシップに行きました。 インターンシップに行ったこと、小泉さんにメールを送ったこと(これは読まれているのか定かではありませんが返信が来ています。本人からかどうかわかりません。定型文でしたので。)から、政治を身近に感じるようになります。

そして、話は戻りますが、ネット上で批判されたり、先生にほのめかされていたので、だんだんテレビの評論家まで私を批判してるのかと錯覚する時期がありました。私を批判しているように思われた女性にマスコミ関係の知り合いが多かったためそういう思考回路になりました。 みのもんたさんがいつもテレビで不機嫌なのは、私のことが気に食わないからだと。 その当時から、自分で自分がおかしいと思っていました。これはさすがにおかしい、テレビに出ている人に私が見えるはずがないだろうと。自意識過剰だと。そう言い聞かせてもそう思えてしまい、苦しくなり家族に訴え、自分から、「私はおかしいかもしれないから新しい病院へ行く」といい、診察を受けた先生から統合失調症と診断されました。

いまその診断から8年がたち、その先生とだんだんうまくいかなくなり2か月前に同じ病院の違う先生に診ていただいています。 リスパダール、パロキセチン、デパス、ワイパックス、あと睡眠導入剤を飲んでいました。 8年前にこの診断があって薬を飲み始めてから、ものすごい日中の眠けと、肥満になりました。 今では薬を減らしてもらえ、リスパダールとパロキセチンだけで生活しておりだんだん減薬していく方向と先生がおっしゃっています。 テレビの人が不機嫌だと私のせいのような気がする、という気持ちは学生時代に終わりました。その後仕事につき、アルバイトで生活しています。週5日8時間勤務です。ただ対人関係で躓くことが多く、いまやっと落ちついて働けています。 薬が減り、眠けから解放され、前の精神科医から「どうせあんたの仕事はうまくいかない、すぐやめるって」という軽口から解放されてせいせいしています。

これまで書いてきた内容を読まれて、私は統合失調症なのかどうかわかりますか? 肥満さえなければリスパダールを飲み続けたいのですが、肥満がつらいので薬を減らし最終的にはなくしたいのですが。どうでしょうか?

 

林:
これまで書いてきた内容を読まれて、私は統合失調症なのかどうかわかりますか?

すでに精神科で治療を受けておられるわけですから、この質問は主治医の先生になさってください。直接の診察による診断のほうが、メールの文章に基づく診断よりもはるかに(ざっと10倍から100倍、またはそれ以上)正確です。

ですからここでは、質問者が統合失調症か否かではなく、このメールに書かれているような内容と、統合失調症の診断についての一般論をお答えします。

まず

私がゼミに入ったころから、急に恋愛や不倫に関する映画の評論が増えていきます。 まさか私のことではないだろうと思っていましたが、私が話した内容をほのめかして書いているように感じられることが多くみられました。

このような「ほのめかし」を感じる、というのは、統合失調症にはとても多い症状です。関係念慮、または関係妄想などと呼ばれる症状です。
そして、この【2715】では、このようなほのめかしを感じるより前の時点で、

学生時代、ゼミの先生から恋愛を持ち掛けられ

という事実があったとのこと、すると、質問者の感じているほのめかしは、関係念慮ゃ関係妄想ではなく、実際にこのゼミの先生がほのめかしを行っていたということも考えられますし、行っていなかったとしても、恋愛感情を告げられた相手からのブログなどの文章の中に、自分へのメッセージを感じ取ることは、統合失調症でない人にも十分にあり得ることです。
しかし他方、統合失調症の関係念慮や関係妄想が、そのように何がしかの背景事実があって生まれることもしばしばあります。そして統合失調症の人は、「これこれの事実があるのだから、私の感じているほのめかしは、決して妄想などではない、事実だ」と言い張るのが常です。
そして、その「事実だ」という主張の根拠の希薄さを人から指摘されると憤慨するのが定型的なパターンです。その意味で、

ただ、名前を出さなくても、ほのめかして批判することはあることだと思います。特定の名前を出さないからたちが悪いだけだったのではないかと私は思っています。

は、統合失調症の人に非常によく見られる憤慨のパターンといえます。

この【2715】では、その後、

だんだんテレビの評論家まで私を批判してるのかと錯覚する

テレビの人が不機嫌だと私のせいのような気がする

など、明らかに妄想と判断できる体験が出て来ています。したがって、当初において、ゼミの先生のHP内容に自分のほのめかしを感じ取ったのは、統合失調症の初期の症状であったとみるべきでしょう。そして、現在はこれら妄想がないとすれば、いま飲んでいるリスパダールの効果であると考えるのが最も合理的です。また遡って、高校時代の不登校は、統合失調症の前駆期にしばしば見られる漠然とした不調であったと判断できます。

したがって、リスパダールはやめるべきではないというのが一般論としての答えになります。但し最初に述べたとおり、薬のことを含め、すべて主治医の先生にご相談ください。

(2014.6.5.)

05. 6月 2014 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 統合失調症