【2652】たとえそれが解離であっても、嘘は嘘なんですか

Q:  【2122】記憶に空白があり混乱しています で「解離性障害です」と回答をいただいた10代(今は20代)男性です。回答でご指導いただいたとおり、主治医に全部話しました(ちょうど主治医が替わったので、その折に)。 まえは、適応障害とか、発達障害とか診断されていました。あとあと何回か受診して、口頭で解離性障害と言われました。のに、会計から、診察窓口に持っていく資料の中をみてみると、いろいろな病名がついていて、治療歴とともに病名らしきものが、不眠症、消化不良症、A0001、F20とかかいてありました。F20がきになり、後でネットで調べてみると統合失調症を表す記号です。驚きました。
・ 告知した病名と、記載された病名が違うのってどうしてですか?  治療を始めてから、母親に解離してなぐりかかってしまい、入院しました。入院中、八歳の子供が出現し始めました。自分でもうっすら記憶があり、どちらかというと制御不能で、子供返りした感じ、と思います。遠くから自分を眺めていたようです。「せんせいたすけて、おちつかない」とひらがなでメモして先生にメモを渡したようです。先生のことを「にゃんにゃん」と呼んだりしました。いろいろな問題を起こしました。 八歳の子供は以前、私の前髪を、夢の中で切っていました。そしたらそれは夢ではなく現実だったのでした。 看護師さんから記憶がないことで言われたことは・「女子トイレにいってたってほかの患者さんがいってた」・「夜裸で、寝ていたよ」まったくピンとさえこない記憶です。本当に自分がした行動か、今も信じられません。女子トイレに関しては、ぜったいだれかの妄想です。トイレが近くならまだしも、距離離れているし。それとか、とにかく入院中問題をおこしまくって、その記憶が飛んでいったり、戻ってきたりの繰り返しでした。記憶を取り付くろって、うそをつく人格があるみたいで、そいつが前回の入院のときも、うそをつきました。記憶のつなぎ合わせをします。口が達者で、その場で考えた言い訳で、記憶を張り合わせるのです。自分は「強いストレスが掛かると、無意識にうそをついているの」といったら、看護師さんからも、「うそをいっているのは自分自身の頭だからね」といってきました。 あるときは、おぼえている。あるときはおぼえていない。先生はぼくがうそつきだとおもっているのでしょうか?たしか、先生は病気じゃないと、親に言ったそうです。
・ ぼくは嘘つきなんでしようか?すくなくとも、その時々では本当のことを言っている、はずです。書道が好きで、「誠実と素直」とかかげていて、ウソはつくはずがないです。言われたそのときは、本当に覚えていなくて、ピンとさえこない。しばらくたつとその行動がフラッシュバックして思い出されることもあります。
・ たとえそれが解離であっても、嘘は嘘なんですか?
いままでつよがって自分の気持ちには、嘘ばかりついてきました。他人には嘘をついたことがほとんどありません。むしろ、発達障害傾向にあるらしくて、正直すぎるくらいで、面と向かうと嘘がつけない。「口を合わせろ」といわれたことがあります。「人のちょっとした嘘を訂正するな」といわれたこともあります。 
・ そもそもここが疑問です。みなさん完全に物事記憶しているなんてないでしよう。ぼくはその程度がすこし重いだけです。みんなだって、記憶が飛ぶでしょう。ぼくを嘘つき呼ばわりしているようで、主治医が信じられません。たしかに、嘘ついていると、疑われるような行動は客観的に見て、おおかったです。だって、女子トイレに行っておぼえていないなんて、嘘としかいいきれません。ぼくだって自分が本当にそんなことしていたらと思うと怖いです。
・ 今退院して、ネットしています。ネットで調べて解離性同一障害をうたがったのですが、境界性人格障害もぼくはうたがいました。入院中開放病棟で、自傷の衝動が目立ちましたので。
・ 人格障害にちかい解離性障害ってあるんですか? それとも併発しているのですか?

 
林: あなたは解離性障害です。今の治療を続けてください。

・ 告知した病名と、記載された病名が違うのってどうしてですか? 

記載されているのは保険病名と呼ばれる病名でしょう。たとえばある薬について、それを処方できる病名は保険で決められています。しかし実際にはその薬は他の病気によく効く場合があります。このようなとき、保険病名として、実際とは違う病名が記載されることがあります。これは明らかにおかしい慣習ですので、廃止される方向にありますが、現実には非常によくあることです。

・ ぼくは嘘つきなんでしようか?

それは「嘘つき」の定義によります。
 
・ たとえそれが解離であっても、嘘は嘘なんですか?

それは「嘘」の定義によります。事実と違うことを言うことを「嘘」と定義すれば、解離であろうとなかろうと嘘は嘘です。
【2656】私の症状は全部嘘なんです もご参照ください。

・ そもそもここが疑問です。みなさん完全に物事記憶しているなんてないでしよう。ぼくはその程度がすこし重いだけです。

それはあなた個人の見解にすぎません。

・ 今退院して、ネットしています。ネットで調べて解離性同一障害をうたがったのですが、境界性人格障害もぼくはうたがいました。入院中開放病棟で、自傷の衝動が目立ちましたので。

病気のことをネットで調べるのはやめたほうがいいです。混乱するばかりです。

・人格障害にちかい解離性障害ってあるんですか? それとも併発しているのですか?

あります。境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)で解離の症状が出るのは比較的よくあることです。このとき、解離の症状が最も目立つような場合、解離性障害という診断名がつくというのが、現代の公式の診断法です。将来これは変わるかもしれません。

(2014.5.5.)

05. 5月 2014 by Hayashi
カテゴリー: 精神科Q&A, 虚言, 解離性障害