【2629】私を・棄てた・彼女の・幻覚

Q: 私は21歳の男です。1年半ほど前、彼女に振られました。最初は事実を受け入れられず、復縁を懇願したりしましたが、もう彼女にも迷惑ですし諦めようと決め、その後できるだけ連絡もしないようにしています。しかし、別れたその日からずっと彼女を思わない日はありません。どうしても忘れることはできません。環境を変えてみたり、新しい女性とお付き合いしてみたりもしましたが、それでも前の彼女を考えずにはいられず、自分から別れてしまいました。普通はよく「時が癒してくれる」などとよく言いますが、そんな気配がありません。どちらかと言うと日に日に思いは強くなっていっています。本当に時は解決してくれるのでしょうか。毎日会いたいと考えているうちに、最近、彼女が見えるようになってしまいました。もちろんこれは妄想の産物で実際には存在しないことも分かっています。妄想の彼女は、私が一人になると何処にでも現れ、いつでも私の都合の良いように笑って話しかけてくれます。車に乗れば、「ドライブだ!」と喜んでくれます。これは妄想だ、と念じれば消えるかもしれませんが、私にはそれができません。情けないですが、たとえ妄想でも一緒にいたいと思ってしまいます。これがそのうち現実と区別がつかなくなり、妄想に取り込まれてしまうかも、若しくはもう取り込まれているかもしれないとも思います。そうなってしまった方が楽なのかもしれません。どうすれば、楽になれるでしょうか。またどのような状態が楽だといえるのでしょうか。先生の見解をお聞かせください。

 

林: おそらく質問者自身がそう自覚されていると思われますが、彼女に振られたことをどうしても受け容れられない気持ち(事実を否認する気持ち)から生まれた幻覚(幻視)であると考えられます。

もちろんこれは妄想の産物で実際には存在しないことも分かっています。

というように、今は現実と非現実の区別がついていますが、幻覚として体験されているというのは危険な徴候で、

これがそのうち現実と区別がつかなくなり、妄想に取り込まれてしまうかも、若しくはもう取り込まれているかもしれないとも思います。

その危惧はもっともです。

そうなってしまった方が楽なのかもしれません。

それもまたその通りですが、そうなれば文字通り現実逃避であり、現実の解決にはならないどころか、現実の生活に支障をきたすおそれが濃厚です。

しかしだからといって、「そのうち現実と区別がつかなくなり、妄想に取り込まれてしまう」となるかならないかは、今の段階ではわかりません。自力回復の可能性がないとは言えません。けれども楽観は禁物ですので、精神科を受診し、これからの経過をみていただくのが適切だと思います。

(2014.4.5.)

05. 4月 2014 by Hayashi
カテゴリー: 性に関する問題, 精神科Q&A