【2621】人の名前が覚えられない、極度の方向音痴、身内に統合失調症
Q: 30代男、妻子ありです。 「相貌失認」という項目を見つけ、自分に思い当たることが多く、メールいたします。以下、幼少から現在までの私の状態ですが、相貌失認なのか、あるいは別の何かでしょうか。 補足ですが、姉が15年前に統合失調症を発病しております。私も、何か兆候があれば事前に知っておきたいと思っています。
●人の顔を覚えにくい 一日一緒に過ごした人だと、再会してもわからないことが多い。 付き合いの長い人は、きちんと区別できる。 全く一度も会ったことの無いはずの人でも、知り合いだったような気がすることがしばしばある。これまで、知らない人に「久しぶり!」と声をかけたことが二度あり、一緒にいた友人は「顔云々の前に年代が違うので、お前の同級生ではないことはすぐにわかった」 ドラマや映画を見ていると、同性で同年代の登場人物の区別はつきにくい。死んだと思った人が生きていたり、登場人物は五人だと思ったら三人だったり。 足音やしぐさで誰なのか判別できる。100メートル離れて顔が見えない相手でも動きで誰なのか判別できる。
●名前を覚えることが苦手 20人程度の開発現場で、1年間同じ職場で仕事をして何度も会話している人の約半数の名前が覚えられない。 頻繁に会話したり、名前が頻繁に文面で挙がったりする人の名前は一ヶ月もあれば覚える。 「苗字の文字数」や「か行で終わる名前」などは覚えている。 出会って日が浅い人は、頭の中で大雑把な分類枠に属して記憶されている。例えば「初日に出会った」「妹がいる」「色が白い」「気が強い」という分類枠が存在し、同一分類枠内の誰かの名前で思い出される。その環境には存在しない人の名前で思い出されることも多い。
●方向音痴がひどい 小学校以前は、自宅から50メートルも離れれば独力で家に帰ることは不可能、または困難。 小学生の頃、通学路以外の道を一本でも外れれば、あっという間に迷子。 3年通った高校からの帰り道で迷子になって、高校まで戻って帰りなおす。 かつて通った高校へ行こうと思っても道が思い出せない。 通いなれたあの場所は北(東)にあるとずっと思っていたのに、実は南(西)にあった。 同じ目的地を持つ人と、一回~数回程度しか入ったことがない建物から一緒に出ると、大抵その人とぶつかる。お互い反対方向へ進もうとするため。 以上が、私の過去から現在までの状態です。 どうやら、自分が見た世界の地図が180度に反転して、鏡に写したように逆の記憶がされているのではないかと思っています。なので、道がわからなくなるというのではなく、常に反対方向へ進んで迷子になるのだと、今は考えています。 幼い頃、駅から帰るときに姉とこんな話をしたことが印象深く残っています。私「何でそっちにいくの?来た方向と反対だよ」姉「そうそう、建物から出ると道が反対になる気がするんだよ。だから家があると思う方向と逆に帰らないと迷子になるよ」 どうやら姉も同じ感覚を持っていたようです。
林: 発達性相貌失認(先天性相貌失認)です。
顔(と名前)を覚えられないことに加え、顔以外の特徴を認知することで、実生活では人を見分けているという点も、発達性相貌失認として、かなり典型的です。すなわち、
足音やしぐさで誰なのか判別できる。100メートル離れて顔が見えない相手でも動きで誰なのか判別できる。
頭の中で大雑把な分類枠に属して記憶されている。例えば「初日に出会った」「妹がいる」「色が白い」「気が強い」という分類枠が存在し、同一分類枠内の誰かの名前で思い出される。
などのように、健常な人(発達性相貌失認ではない人、という意味です)とは異質の認知方法を用いるのは、発達性相貌失認ではしばしばあることです。これを意識的に行っていることも、無意識的に行っていることもあります。このような方法を用いた結果、たとえば【2620】相貌失認と記憶力が悪いだけの人の違いについての方も、周囲の人々の区別はできているのです。
さらに、
方向音痴がひどい 小学校以前は、自宅から50メートルも離れれば独力で家に帰ることは不可能、または困難。・・・
このような障害をしばしば伴うケースがあることも特徴で、 【0782】顔がわからない・方向音痴・不器用なのですが、 【1763】顔が覚えられない。時間の認識力に乏しい。方向音痴。 などもご参照ください。
但し、
どうやら、自分が見た世界の地図が180度に反転して、鏡に写したように逆の記憶がされているのではないかと思っています。
この解釈はおそらく誤りです。それを証明するには精密な検査が必要ですが。
また、
姉も同じ感覚を持っていたようです。
このように、遺伝的な要因があると考えられるケースもよくあります。 【0683】人の顔がなかなか覚えられない
などをご参照ください。
(2014.4.5.)