【2581】うつ病は原因によっては治療しても無駄な場合があるのではないでしょうか

Q: 私は20代男です。 私は3ヶ月前からうつ病と診断され、今でも通院を続けています。ふと疑問に思ったのですが、うつ病は原因によっては治療しても無駄な場合があるのではないでしょうか。 例えば、今の職場が嫌でしかたがなく、ストレスが溜まってしまいうつ病になってしまった、などの場合はうつ病の治療が有効なのが理解できます。うつ病の原因が現在の環境にあるのだから、環境を変え、疲れた心を薬で治療していけば直に良くなるのでしょう。
しかし、こういう場合はどうですか? 私は自分のことが死ぬほど嫌いです。当たり前のことですが、人は他人や今いる環境から逃げることはできても、自分自身からは一生逃れることはできません。私はこれから先の人生も、自分という生きる価値の無いゴミクズと付き合っていかなければいけないと思うと吐き気が止まりません。憂鬱でしかたないです。 私が仮にうつ病の状態から一時的に回復したとしても、自分自身がストレスの原因であるため、いつ、どんな場所に行こうとも常にうつ病の原因が付きまとっているようなものです。いくら治療しても無駄でしょう。私のような人間はもう死ぬしかありません。 ちなみに私はうつ病と診断されましたが、うつ病ではないと思っています。私は最近何かつらい事があったわけではありません。ただ、自分という存在を殺したくてしかたないだけです。自分を殺すために飛び降りる場所を探したりしているのですが、なかなか良い場所が見つかりません。私は私を殺したくてしかたがないのに、殺すのに失敗すると私が痛い思いをして嫌なのです。自分で書いてて混乱してきましたが、とにかく自分がうつ病であろうとなかろうと、私に自分という存在が常につきまとう限り、これからもつらい人生が待ち受けています。 こんなクズみたいな人間はうつ病であろうとなかろうと治療しても無意味なのではないでしょうか。一生苦しみ続けるとわかっているのだから治療などしても無意味です。こんな人間は今すぐ死ぬべきだと思うのですがどうでしょう。 私の拙い文章で書かれたくだらない質問など読むに堪えないと思いますが、もし気が向いたら回答していただけると嬉しいです。

 
林: うつ病についてのあなたの理解は、完全に間違っています。

例えば、今の職場が嫌でしかたがなく、ストレスが溜まってしまいうつ病になってしまった、などの場合はうつ病の治療が有効なのが理解できます。

いいえ、これがそもそも間違いです。「今の職場が嫌でしかたがなく、ストレスが溜まってしまい」、その結果、落ち込んだのであれば、それは人間としての正常な反応であって、病気ではありません。つまり、それはうつ病ではありません。

うつ病の原因が現在の環境にあるのだから、環境を変え、疲れた心を薬で治療していけば直に良くなるのでしょう。

上記、「うつ病の原因が」の部分は誤りで、「落ち込んだ原因が」とするなら正しいです。また、「疲れた心を薬で治療していけば」も半分は誤りで、心が疲れたのであれば、それは病気ではありませんから、薬で治療する必要はありません。いま「半分は誤り」と言ったのは、たとえ病気でなく心が疲れただけであっても、その程度によっては薬が必要になることもあるという意味です。つまり、通常はこのような場合は薬で治療をする必要はありません。

うつ病は、脳の病気です。つまり、「今の職場が嫌でしかたがなく、ストレスが溜まってしまい」、そういうことがなくても落ち込む、うつの状態になる、だからこそ病気といえるのです。だからこそ薬での治療が必要になるのです。逆に、ストレスがあって落ち込むのは、病気ではなく人間としての健康な反応です。それを病気と呼ぶのは根本的に間違っており、もしそれをうつ病と呼ぶのであれば、それは擬態うつ病です。

ということは、

私は最近何かつらい事があったわけではありません。ただ、自分という存在を殺したくてしかたないだけです。

それはまさに、病気らしいといえます。

私はうつ病と診断されましたが、うつ病ではないと思っています。

以上の説明の通り、うつ病についてのあなたの理解は完全に間違っています。したがって、ご自分がうつ病でないとしている根拠は、全く的外れです。治療を続けてください。

(2014.3.5.)

05. 3月 2014 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, 擬態うつ病, 精神科Q&A