【2686】不眠の恐怖にとりつかれている母

Q: 私の64歳になる母の相談なのですが、母は30年以上前からアルコール依存症です。
初めは、不眠症がキッカケで、睡眠薬を常用するならば、寝酒でもした方が健康的という内科医のアドバイスに従って、酒を飲むようになったのがキッカケだそうです。
母は、かなりの不眠症なので、当然寝酒くらいでは寝れるはずがなく、それが晩酌へと繋がり、アルコール依存へ転化されていったようです。
しかし、元来お酒が好きな方ではなく、アルコール依存になってからも、焼酎などをジュースなどで割り、それでも味を感知しないように一気飲みの状況に近いのです。
アルコール依存になった原因は、幼い頃の生活や、結婚生活の破綻などの心の鬱積が考えられます。
私自身も、母にどうしたらアルコールから立ち直ってもらえるかと、ACのカウンセリングへ通うようになり、カウンセラーなども勧めもあり、母の精神的自立と回復、私の共依存からの回復のためにも6年前に家を出ました。
母子家庭なものですから、母も一人になり当初はとても荒れ、色々と辛い時期もありましたが、母は50代後半くらいから体力が衰えたせいか、毎日の晩酌がなくなり、いわゆる「山型」というものになりました。
心の鬱積がピークに達した時や、状況的に飲酒をせざるをえない場合を発端として連続飲酒になります。(大抵10日くらいで酷い二日酔い状況でやめる)
そして、その連続飲酒により3年前に今まで体験したことがない酷い状態(酷い嘔吐、胃痙攣、全身の痙攣、しびれ、悪寒、下痢など。しかし肝臓には異常がなく、医師に驚かれました)に2、3度なり、そこで母は「底つき」を体験したようです。
そこから初めて精神科とAAに繋がり、お酒のない3年間を過ごし、やっと安心していたのですが、1年前に母の転職をキッカケに状況が思わぬところへいきました。
仕事がキツく人数もいないのに仕事をサボる同僚への不満が噴出し毎日イライラしていました。そして常に時間に追われている強迫観念に更にイライラし、若い頃からの慢性的な不眠症に強迫的な恐怖をおぼえ、食欲はなく、休みの日は動きたくないようで、しきりに体の痛み、だるさを訴えました。
仕事を辞めたらと提案もしてみましたが、働かずしては食べられない生活状況もあり、また家に一人でいても、余計に心が沈み仕事のことが気になり気分が焦るそうで、イライラしながらでも職場にいる方が楽だと言っていましたが、精神科で「うつ病」と診断され、仕事の方は半年前から休職しています。
治療開始時の1ヶ月くらいは調子も快方への期待感もある状況だったのですが、日を追うごとにどんどん悪くなっていきます。
生活は娘である私が支えていることから、早く働きたいという焦りがあり、イライラを募らせるようですが、それ以上に倦怠感がひどく、特にこの1ヶ月くらいは、一日中ほとんど寝ているようになりました。起き上がっても足がもつれ、すぐに転倒します。満足な歩行が難しいので、通常10分で行ける場所へも30分以上かかかります。それでも、朝早く起きてフラフラしながら炊事洗濯をしたりします。いくらやめるように言っても、母の中の義務感からやめません。言葉も明瞭ではなく呂律が回らず、酔っ払いが喋っているような状態です。
日付の感覚も薄く、もの忘れもひどく、物事を混同させ混乱します。
一日中布団の中にいるものですから、ウツラウツラと睡眠を取っているのですが、昼寝は寝ていることにカウントされず、夜にグッスリ眠れないと苦しいといいます。
うつ状態よりも、本人の不眠症への恐怖感が募っているので、「眠れない」ということを始終言います。
睡眠薬を飲むことにより、不眠症は完璧に解消されるべきと思い込んでいるので、薬を服用してから1時間も睡眠に落ちるまでに時間を要すると「眠れない」という結果論になります。そして睡眠薬を服用しているにも関わらず、夜中に目が覚めると「眠れない」という結果論に繋がります。
母は、今までの人生の中で、グッスリ寝る感覚を味わったことがないとのことで、睡眠薬を服用することにより、深い眠りが長時間続くと思い込んでいます。
そんな状態なので、医師へ睡眠薬の要望ばかりが強くなり、鬱病の薬よりも睡眠薬を多量に摂取しているような状態です。
私は医学の知識はありませんが、母の歩行困難な状況や、言語が明瞭では点から考えて、多量に摂取している睡眠薬が体内から切れない状況、俗に言う「ラリっている」のに近いような気がします。
医師は、なぜ回復しないのか?なぜこういう状態になるのか首を傾げています。
転院や入院なども考えるのですが、母は新しい病院で自分の症状が理解されなかった場合の不安があり、現状に不満がありながらでも転院は気が進まないようです。
そして入院も、鬱病以外の精神疾病患者と同じ場所にいたら、自分はもっと状態が悪くなりそうだと入院は拒否しています。
私の要望もあり、睡眠薬を徐々に減らしてもらうように医師に伝えましたけれど、母は眠れなくなったらと不安を抱えています。
私は家族として、これから母に何をすればいいいでしょうか?

現在母が服用している薬です。
<先週の薬>               <今週(変更後)の薬>
トレドミン25mg     朝夕各3錠    トレドミン25mg     朝夕各3錠
レキソタン2mg      朝夕各1錠    レキソタン2mg    朝夕各1錠

寝前2錠
寝前2錠
寝前2錠        寝前2錠
ベゲタミン-A      寝前2錠      ベゲタミン-A      寝前1錠

 

 

林: 入院治療が最善です。

母の歩行困難な状況や、言語が明瞭では点から考えて、多量に摂取している睡眠薬が体内から切れない状況、俗に言う「ラリっている」のに近いような気がします。

おそらくその通りでしょう。睡眠薬の依存といっていい状態です。ご家族が思っている以上に、隠れて睡眠薬を飲んでいる可能性もかなりあります。

このような状態では、入院して薬の管理をし、徐々に減らすなどの対応をする必要があります。入院治療が最善です。というより、入院以外に方法はないでしょう。

そして入院も、鬱病以外の精神疾病患者と同じ場所にいたら、自分はもっと状態が悪くなりそうだと入院は拒否しています。

これは本心かもしれませんが、入院により睡眠薬を自分の思い通りに飲めなくなることをおそれているのかもしれません。薬物依存の人は、あらゆる方法を駆使して薬物を入手しようとします。そして、薬物が摂取できなくなる状態は、あらゆる方法を駆使して避けようとするものです。

(2014.6.5.)

05. 6月 2014 by Hayashi
カテゴリー: うつ病, アルコール依存症, 精神科Q&A