【4470】妻の主治医が治療に消極的で悪化が進むばかりです

Q: 私は60代男性です。妻は、過去に抑うつ症と診断されてから現在まで心療内科に通院していますが、嫉妬妄想が激しく被害妄想もありますので、妻が私に対して行う行為や頻繁なメールの内容を主治医に話し、妻の症状にどう対応したら良いか相談する際、あまりに様子がおかしいので妻の主治医に診断内容を尋ねましたら、「法律の制約があり、たとえ配偶者といえども患者の同意がなければ診断内容をお話することはできません。場合によっては告訴されることもあります。しかし、私の独り言として妄想性人格障害という病名についてお調べになってはいかがでしょう。」といわれましたので、調べてみたらほぼそっくりの症状でしたので、医師に妄想がなくなるようにできませんかとお願いしたところ、「ご本人が投薬を拒否しているので無理に飲ませることはできません。お気持ちは解りますが、対応を間違えるとこちらが告訴されることもあります。」という回答でした。そんなわけで、妻の主治医は本人の希望する抗不安薬(ソラナックス)しか処方していないので、症状は全く改善されていません。特に被害妄想と嫉妬妄想は段々ひどくなるばかりです。一度抗精神病薬を処方されたことがありますが、薬物辞典で調べて統合失調症の薬と判り全部捨ててしまいました。最近は嫉妬妄想で私が愛人をつくっていると言って殴りかかり、はずみで自分の手を傷めたことを私に暴力を振るわれたと公的機関に相談に行き、別居しないと訴えると言い張りますので仕方なく別居することになりました。ところが、今度は私が勝手に家を出て妻に多大な被害を与えているといい、なんと私のことを「あなたは境界性人格障害だ。入院しなければいけない。」と言うのです。いずれの発言にも反論すると激しく興奮し手がつけられなくなります。仕方なく私は妻の要求に応じて専門病院で検査を受けましたが、全く正常と診断されましたので、そのことを妻に診断書で説明しましたら、インチキ医師だと激しく興奮して収まりませんでした。

その後、症状は段々と悪くなり、私をDV夫だ、隠れて女をつくっている家のお金を密かに持ち出しているなどと毎日のように責め立てます。妻には全く病識がありませんので、おかしい言動を指摘しますと激怒して手がつけられなくなりますが、他人がいるところでは全くそのような素振りはみせませんので困ります。むしろ私が精神的におかしいという始末です。現在、主治医にどう対応したら良いのでしょうかと尋ねても、仕方がありませんねと言われるばかりです。最近では「警察を呼ばなければならない状況になればなんとかできますが。」というしり込みを思わせる発言まで聞かれました。どうすれば状況を好転できるでしょうか。毎日が地獄です。

 

林: 奥様は妄想性人格障害ではなく、妄想性障害だと思います。しかし診断名が何であるかはともかく、妄想のために質問者が大変お困りであることはよく理解できるところです。このような場合の対応法は、いくら考えても二つに一つしかありません。本人の意思に反してでも治療をするか、問題を先送りにするかです。(もちろんその前に本人の説得を試みることが必要ですが、十分に説得の努力をしてもなお、全く前に進まない場合には二つに一つしかないということです)
この「二つに一つしかない」ことは、ご家族(ここでは質問者)にとってもそうですが、主治医にとってもそうです。この主治医の先生は後者、すなわち問題を先送りにすることを堅持するという方針のようです。その方針が常に悪いとは言えません。もしその方針に質問者として同意できないのであれば、主治医をかえる以外にありません。しかしご本人がそれには同意されないでしょう。そうなりますと、質問者としては、主治医と定期的に相談しつつ、どこかのタイミングで思い切った手段に出る以外にないでしょう。それは主治医がおっしゃるように、警察の介入があった時ということになるかもしれません。質問者はそれを「しり込み」とおっしゃっていますが、他に方法がない以上は、現実を直視しなければなりません。むしろ本当に警察の介入があったときに、その機会をとらえて真の治療を開始できるかどうかが大きな分岐点になるでしょう。

(2022.3.5.)

05. 3月 2022 by Hayashi
カテゴリー: パーソナリティ障害, 妄想性障害, 精神科Q&A